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フランスの動きはともかく、米国の対シリア武力行使が国際的な大問題になっている。
米国メディアの報道などから、来週中には採決されると思われる米国連邦議会は、上院で「期間(60日〜90日)及び方法(地上軍なし)の条件付き容認」、下院で「武力行使反対]の決議がなされる可能性が高いと考えている。
定数435の下院は、ABCニュースによると、昨日の時点で過半数の225名が反対の意思表示をしているという。前日時点では217名が反対だったということなので、反対派の勢いが増していることがわかる。
連邦議会がこのような決議を行ったあとのオバマ政権の選択肢だが、巡航ミサイルなどをできるだけ多く消費したいという思惑を別にすれば、振り上げた拳を何もしないまま降ろしてしまうのは政治的にみっともないと考え、“象徴的な空爆”が行われる可能性がもっとも高いと思っている。1日からせいぜい3日間程度で軍事施設を標的にした空爆である。
(“誤爆”とされるだろうが、反政府勢力の拠点に爆弾が落とされる可能性もある)
まっとうな人から見れば狂気の国家とも言える米国支配層の動きを止めることはできないが、狂気の裏にある“冷静な戦略”を理解することはできる。
まず、米国支配層とロシアのプーチン大統領そしてシリアのアサド大統領とは敵対関係ではなく、それぞれの役回りに従ったパートナーシップを維持している。
米ロ関係悪化の契機とされているスノーデン事件も、オバマ政権がロシア政府に正式に身柄の引き渡し要求をしたことすらないのだから、言葉の応酬はともかく関係悪化云々にはつながる話ではない。
今回の対シリア軍事介入問題では英国の議会がすでに反対の決議を行ったが、その動きは、03年の対イラク戦争でフランスが反対の論陣を張ったことを思い出させる。
対イラク戦争にフランスやドイツが反対したのは、国際法や倫理に従ったわけではなく、米国主導の国際政治の論理に従った動きだと考えている。
一つは、イラク処理にUN(国連)やNATOなどが関与しない状況をつくることであり、もう一つは、欧米先進国の“勢力範囲”を明らかにすることである。イラクは、英国と米国の勢力範囲であり、フランスの勢力範囲ではない。そして、シリアは、フランスと米国の勢力範囲であり、英国の勢力範囲ではない。まさに、第一次世界大戦後の「中東分割支配」の構図が今なお生きているのである。(リビアは、WW2後の経緯から米英仏の勢力範囲)
英国議会の反対も、キャメロン政権(英国支配層)が“意図した否決”であり、英国議会に“正義”や“倫理”が回復したわけではない。
同じように、米国議会がどのような議決をしようとも、それはオバマ政権(米国支配層)も承知の“意図した決議”である。
必要もない議会の同意を求める動きそのものに“作為”があるのである。
今回の「シリア毒ガス事件」についても、オバマ個人はともかく、米国の対外政策を立案している組織やフランス当局は、当然のように、“化学兵器使用の実態”を知っている。
「シリア毒ガス事件」は、プーチン大統領が言うように、シリアの反政府勢力が米英仏の武力介入や武器支援に動くための“言い訳”として使えるよう仕組んだ謀略と考えている。
推測の域だが、サリンなど少量の神経系化学兵器が散布された事実はあるだろうが、散布された化学物質のほとんどは催涙ガスなど致命性が低いものだと考えている。そのようなことから、「シリア毒ガス事件」で死んだ人がいたとしてもごくわずか(数名)だとも考えている。
米英仏及びイスラエルの支配層はアサド政権と“パートナー”の関係であり、反アサド勢力の一部を担っているアルカイダグループも彼らの重要な“アセット”である。
米英仏は、“パートナー”であったリビアのカダフィ大佐やエジプトのムバラク大統領を放逐したが、シリアのアサド大統領を放逐することはないだろう。
シリアは、スンニ派アラブ人を多数派としながらも、アラウィ派・クルド人・キリスト教(シリア正教会系が多い)・ユダヤ人といった複雑な宗教集団で構成されているモザイク国家であり、それをフランスや米国の後ろ盾を得ながら統治してきたのがアラウィ派を中核とする世俗派政治勢力バース党だからである。
米英仏の当局は、シリア国民の“過半数”(クルド人もアサド支持に転向したので60%以上)が、反政府勢力ではなくアサド政権を支持していることも知っている。スンニ派でも、世俗的価値観を持つ人々やシリア統合を維持したいと思っている人々はアサド政権を支持している。
このようなことから、シリアの政治勢力で最も深くドツボに嵌められているのは、スンニ派武装勢力と言えるだろう。
米英仏支配層は、アサド政権の崩壊を願っているかのような言動をしながら、カタールやサウジアラビアそしてヨルダンを利用しながら武器やその他の支援を続けているが、ムスリム同士の殺し合いを続けさせるとともに(シリア内戦ですでに11万人が死んだとされる)、スンニ派武装勢力をじりじりと弱体化させていると言えるだろう。
シリアの内戦はムスリムの智恵で解決を図って欲しいと願っているが、諸外国がシリア内戦に武力で介入したり武器の供与を行ったりするのは重大な国際法違反であることを再認識すべきである。
革命や反政府活動を否定するものではないが、武器を手に反政府活動を行うものに政権がどう対処するかを外国がとやかく言うことはともかく、武器の供与や攻撃で関与するのは国際法に反する罪であり、内戦をさらに激化させる悪質な行為でもある。
そのような介入の異常さは、先進諸国が自国の問題を顧みればわかることである。
英国は長期にわたってIRAに対する“武力弾圧”を行ってきたし、スペインもETA(バスク祖国と自由)に対する“武力弾圧“を行ってきた。
そのような主権行為に対し、外国政府が、そのような鎮圧・掃討をとやかく言うだけでなく、反政府勢力に対して武器供与を行ったり政府の軍事施設などに爆撃を加えたとき、英国やスペインなどの政府がどうように反応するか考えてみればわかることである。
欧米諸国に引きずり回される時代から抜け出すため、世界中のムスリムが覚醒することを願うばかりである。
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