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[FT]イラク戦争との類似が誤解を招くシリア問題
2013/8/29 14:00
(2013年8月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
現在のシリア危機は、2003年のイラク戦争前夜の状況と不気味なほど似ている。我々の記憶に残る多くの要素がそこにある。だが、似ているからこそ誤解を招く恐れがある。
03年当時、イラクによる化学兵器や生物兵器の保有を決定的に証明できた者はおらず、国連の武器査察団は結局何も見つけられなかった。一方、シリアに化学兵器が存在することは疑う余地がなく、実際につい最近使用された。
■類似点と相違点
しかし、誰がそれを使用したかという疑問が生じ、情報という厄介な問題が浮上する。イラク戦争以降、うがった見方をするようになった多くの人々は、シリアのアサド政権が化学兵器を使った確実な情報があると主張されても、素直には受け入れられなくなっている。これは米中央情報局(CIA)と英情報局秘密情報部(MI6)がイラクのフセイン大統領について断定した態度と同じではないだろうか。しかし、現状はかなり違っている。
当時のブッシュ米大統領とブレア英首相は、明らかに対イラク開戦の理由を探すのに必死だった。そのため、情報機関が「正しい」判断を下すよう強い圧力を受けていたとの懸念が浮上した。これに対し、現在のオバマ大統領は同じくらい明らかにシリアへの軍事介入を避けたいと切望している。
軍事力行使を可能にする国連安全保障理事会の決議が採択されない見通しであることもイラク戦争の不幸な記憶と重なる。実際には、対シリア攻撃に国連のお墨付きを得ることはイラク戦争時より困難かもしれない。当時、戦争の法的根拠を与える国連決議は採択されたが、はっきりと武力行使の権利を認める新たな決議案は通らなかった。シリアの場合、これを踏まえたロシアと中国が、当初から対シリア決議案に反対を唱える公算が大きい。
しかし、シリアを巡る国際社会の政治状況はイラクとは大きく異なる。03年当時は国連決議がないことよりも、欧米各国の思惑の違いが憂慮されていた。
だが今回、フランスは当時のように軍事行動に反対するどころか、率先して武力行使を訴えており、ドイツもこれを支持する構えだ。イラクで協力を拒んだ重要な同盟国の一つであるトルコも、シリア問題では味方についている。確かに、ロシアは軍事行動に断固反対しているものの、他に公然とロシアを支持する国はいない。
軍事行動の結果に対し、思慮が足りなかった点はどうか。ある意味ではシリアの方がリスクが大きいと思われる。03年は軍事侵攻に至るまでの期間が何カ月もあり、侵攻後のきめ細かい計画を練ることができた。しかし今回は軍事行動の決定から最初の巡航ミサイル攻撃まで、わずか数週間となりそうだ。さらに、すでに内戦が2年続くシリアは、開戦前のイラクよりはるかにひどい混乱状態にあり、軍事介入によって予測もつかない悪影響が生じかねない。
■介入は限定的になる見通し
とはいえ、現在のシリアにおいては、当時のイラク情勢に比べてより安心感が得られるという点で、もう一つ大きな相違点が存在する。軍事介入があっても、その規模や目的は今回ははるかに控えめになる見通しだからだ。イラク戦争は本格的な領土侵攻であり、政権転覆と国家の再建という明白な目標があった。シリアの場合、最も積極的な介入主義者でさえ、「地上軍投入」は考えていないと主張するだろう。
今回の軍事行動はアサド政権の軍事施設に的を絞った空爆になることが確実視されている。すべての軍事介入は失敗する可能性があり、必ずと言っていいほど予期せぬ結果をもたらすものだ。しかし、シリアに対する軍事作戦は03年のイラク侵攻よりはるかに限定的であり、米国やその同盟国が引き受けることになるリスクも同様に、限られたものになるだろう。
By Gideon Rachman
(c) The Financial Times Limited 2013. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
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