02. 2013年6月18日 07:17:09
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JBpress>海外>USA [USA] 米国で大問題になっている軍隊内レイプ 女性兵士も男性兵士も被害者に 2013年06月18日(Tue) 石 紀美子 橋下徹大阪市長が、在日米軍の司令官に風俗業の活用を勧めたという発言は、最悪のタイミングだった。米国防省がこれまでにないほど兵士たちの性的問題にピリピリしている最中に起こったのだ。 一連の問題発言で頑な態度を貫いていた橋下市長は、なぜか米軍に関する発言のみ素直に撤回、謝罪した。また、その後に計画されていた訪米は中止された。 その理由は、ちょうど発言と同時期に米国議会で進行していた、米軍内部の驚くべき性的犯罪の実態報告と関係している。 国防省と軍部があらわにした激烈な不快感は、発言の内容だけでなく、そのタイミングだった。そのため、橋本市長は今後、米国との関係修復が不可能とも思われるほどワシントン界隈で顰蹙(ひんしゅく)を買ってしまったのだ。 以下が、今回明らかにされた軍隊のタブー中のタブー、兵士間の性的犯罪の現実だ。 女性兵士の3割はレイプされた経験がある 軍の歴史と同じ長さで性的犯罪は続いてきたのであろうが、最近まで公になることはなかった。アフガニスタン侵攻とイラク戦争で、これまで以上に女性兵士が前線に送られたことと、2つの戦争が長引いていることが、さらなる軍内部の性的犯罪を増加させていると言われ、女性兵士の3割は性的犯罪の被害に遭ったことがあるという(American Journal of Industrial Medicine)。 国防省によると、2012年には2万6000件の性的犯罪が軍隊内であったと推定されるが、実際に被害者が被害届を出すのはまれだと言う。これまで、被害届を出せばほぼ例外なく昇進に響くことに加え、最終的に軍隊にとどまるのが難しくなるのが通例だったからだ。 2万6000件のうち、実際に被害届が出されたのは3374件。そのうち受理され、軍法廷に持ち込まれたのは238件のみだ。 最も多いのは兵士間のレイプ事件だ。キャリアに響くのを恐れて届け出ないため、その後も再び被害に遭うケースも珍しくないという。 あまりの数の多さに、国防省は現状を「軍内部に蔓延するレイプの疫病」とまで形容した。 この数年で、数多くの被害者がメディアに登場し、軍内部の性的犯罪を告発してきた。メデイアに登場したのは退役した軍人たちで、いずれも軍に所属している間に被害届を出したが、その後、いじめや嫌がらせ、不当な移動や懲罰的人事によって退役している。 上司によって「精神的に異常がある」「麻薬をやっていた」などの事実無根の理由をでっち上げられ除隊になった被害者も多くいると告発者らは語っている。 タブー視されてきた男性兵士の被害 予防や対応策を難しくしている理由の1つに、性的暴行を受けた兵士の男女の比率が半々だということがある。半分の被害者は女性兵士だが、残りは男性兵士なのだ。 男性兵士でしかも同性愛主義でない場合、暴行を受けたことを告発することはほぼないという。しかし退役軍人協会は、PTSDに苦しむ退役軍人の中に、かなりの割合で性的暴行を受けた元男性兵士がいると報告している。 国防省が2004年に設置した「性的暴行予防対策課」は女性を主眼にしている。オバマ政権の下で、同性愛主義者でも軍隊に入隊することが可能になった。以前のように、同性愛主義者であることが除隊につながったり、ゲイだと思われることに深い恐怖を抱くような状況から変わってきている。 そのため、元女性兵士ほどの数ではないが、何人かの元男性兵士も公の場で自分たちの辛い過去の話を公表している。単に性的欲望のはけ口としてレイプされた男性ももちろんいるが、いじめの一貫として多数の同僚兵士に強姦され、そのような文化は昔からあったというような証言もあった。 パンドラの箱が開いてから、目を背けたくなるようなひどい話が、とどまることを知らぬ様相で出てきている。 おまけに、議会と軍が共同で対応策を練っている最中に、軍の性的暴行予防担当者が女性への暴行容疑で相次いで訴えられるというスキャンダルがあった。それが先月のことだ。 現在の米国民の印象としては、この問題に関して軍はどこまで腐っているのかというネガティブな見方が大方だ。 国防省が運営するものからNGOやクライシスセンターなどまで、現役、退役軍人で性的暴行を受けた人たちを助ける団体はいくつかある。しかし、具体的な予防策となると難しいのが現実だ。 橋下市長発言が軽卒だった理由 米軍兵士の性的犯罪の根は深く、規模も大きい。国防省と軍隊の苦悩ぶりを見れば、先行きは決して明るくないことが分かる。犯罪が軍の内部でも外部でも、対策の難しさは変わらない。風俗店を利用したからといって、とても抜本的に状況が改善されるとは思えない。 橋下市長がもう1つ理解していなかったことがある。 米国人は、性的なことに関しては保守的な国民だ。親しい間柄の仲間うちならまだあるが、公の場で性的なことを話題にしたり、冗談にしたりすることはよしとされない。また、「男の甲斐性」のような概念は認めない。風俗産業を利用するのは恥ずかしいことだとされ、そのことを面白おかしく話題にするようなこともまずないと考えた方がよい。 橋下市長の発言は、国防省が「レイプ疫病」の対応に右往左往している最中だっただけでなく、米国民の気質を知らずに、彼らが好まない話題に踏み込んでしまったという二重の要素で禍根を残す結果となったということだ。 |