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中国潜水艦をみすみす逃した安倍官邸「防衛無能」事件
http://ameblo.jp/heiwabokenosanbutsu/entry-11554036675.html
週刊ポスト2013/06/28号 :大友涼介です。
5月に発覚した中国潜水艦による日本の接続水域への潜行航行、その対応の杜撰さで安倍官邸は「防衛無能」の馬脚を現した。その姿は、海保巡視船と中国漁船の衝突事件で慌てふためいた民主党政権の体たらくを思い起こさせる。誰がこの国の防衛の足を引っ張るのか。
◇謎の潜水艦が現れた
5月12日深夜、沖縄本島から西に100キロ以上離れた久米島沖。生暖かい風に揺れる漆黒の水面の下を、微妙なスクリュー音とともに、巨大な潜水艦が悠然と進んでいた。
そこは日本の領海のすぐ外側の接続水域(幅22キロ)である。領海のように浮上して航行しなければならないという国際条約の規制はないが、領海をかすめる潜行航行は安全保障上の脅威だ。
はるか遠くの海の上には、潜水艦に勘付かれぬよう慎重に追尾を開始した2隻の艦艇の姿があった。海上自衛隊の「ひびき」と米軍の「インペッカブル」。四角い奇妙な形をしたこの2隻は、潜水艦のデータ収集を専門とする音響測定艦である。
船内は異様な緊張感に包まれていた。ヘッドフォンを装着し、刻一刻と拾い上げられる音に集中する自衛官たち。日中関係の緊迫が火花を散らす。文字通り水面下の最前線だった。
四月上旬、謎の潜水艦を発見した哨戒機「P3C」の報告に、海自幹部たちは色めき立った。
防衛省関係者が明かす。「その海域を航行する可能性が高いのが、中国海軍の潜水艦であることは専門家なら誰にでもわかります。いざ有事の時に潜水艦を捕捉するためには、その潜水艦が発する音紋(固有の音)のパターンを、できるだけ多く把握しておく必要がある。そこで、今回はその音紋を収集する絶好のチャンスだと考えたわけです。
実は、直前の5月2日にも中国の潜水艦が奄美大島付近を潜航していたのですが、そちらにはたいした関心はなかった。なぜなら、2日に潜行していたのは『宋級潜水艦』だったからです」
中国軍の潜水艦には歴代王朝の名が付けられている。奄美を通過した「宋級」や、二〇〇四年に石垣島周辺の領海に侵入した「漢級」は旧式の潜水艦の部類入にり、すでに海上自衛隊は十分な量の音紋データを把握しているという。
「しかし、今回発見した潜水艦の音紋は今までに収集したデータとは違った。そこで、二〇〇六年に第一号艦が就役した最新の『元級潜水艦』ではないかと睨みました。そのため、この機会にできるだけ慎重に情報収集を進めたかったのです」(同前)「元級」は、ロシアの「キロ級636型」をモデルにした中国軍の最新鋭の潜水艦だ。通常動力での潜水艦の連続潜航時間が3日間であるのに対し、最長で10日間もの潜行が可能。また、発見されないための条件である静粛性も高い。
元級に関しては、米軍でさえも十分なデータを保持していないとみられている。海自としても、喉から手が出るほど情報が欲しい中国の最新兵器なのだ。
冒頭の通り、海自は米軍と連携の上、大規模な追尾オペレーションを展開。幸いなことに、追尾されている潜水艦側にはオペレーションに気付いた気配がなかった。
12日に接続水域に侵入し、13日未明に水域を抜けた潜水艦の目的は、2日後に九州西方の東シナ海上で実施された日米韓の合同軍事演習の情報収集だったと推測されている。実は、海自は当該潜水艦が接続水域を抜けた後も、潜水艦の追尾を続けていた。
◇潜水艦にソナーを当てた!!
その貴重な追尾オペレーションの最中、思わぬところから横槍が入った。中国の潜水艦が接続水域を抜けた当日のことだった。
「追尾を続けていた13日の朝、海自幹部に対し、首相官邸から小野寺五典・防衛相を通じて耳を疑うような指示が出た。”潜水艦が接続水域を潜航していた事実をただちに公表せよ”というものでした。
オペレーションを終えた後の公表ならばまだしも、まだ音紋を収集している最中に、それを中国に教えてやる必要がどこにあるのでしょうか?」
忸怩たる表情で語ったのは、防衛省幹部のひとりだ。
それが小野寺防衛相の独断ではなく、官邸からの指示であったことは、翌14日の安倍総理の得意気な発言も窺える。
「あえて(潜水艦の)国籍は言わないが、必要な分析、評価はすでに行っている。こうした行為は二度と行わないよう、当該国には認識してもらわなければならない」(参院予算委員会)
たしかに国民向けには”中国に対して強硬な姿勢を示した”というタカ派首相の面目躍如のパフォーマンスになったに違いない。しかし、その安倍官邸の政治的判断は安全保障上、妥当だったのかは大いに疑問が残る。
そもそも他国の潜水艦の動向を把握しても、軍事上の機密保持のため、探知した側はすべてを公表するわけではない。ましてや今回は貴重なオペレーションの最中なので異例の公表といえる。
前出の防衛省幹部は指摘する。
「当該の元級潜水艦は12、13日に接続水域に侵入した後、沖縄周辺で活動を続け、19日に再び接続水域を通過し、中国側の海域に戻っていった。2度目の侵入は本国への帰還のためだったと推測されます。結局は、1週間にも満たない作戦でした。しかし、元級の能力からいえば、出航から1ヵ月半は活動可能。日本側が追尾を公表したことで、中国軍が作戦期間を短縮したことが考えられます。ならば、千載一遇の情報収集の機会を狭めてしまったことになります」
また、中国海軍は日本政府の発表を受けて、水上艦「ヤンナン」級を派遣。潜水艦を追う音響測定艦「ひびき」を追い回し、音紋の収集の妨害を試みている。安倍官邸の”威嚇パフォーマンス”は中国軍に釘を刺したどころか、さらなる傍若無人な振る舞いを誘う結果になってしまったのだ。
そうした中国軍の行為に逆上したのか、今度はやり返す形で19日、海自の哨戒機が元級潜水艦に対してソナー(音響探知機)の音波を当てた。
「音波を当てるには、高度な政治的判断が必要になる。首相官邸や大臣の意向とみて間違いない」(前出・防衛省関係者)
最悪、中国が過剰反応を示して何らかの軍事行動をとってもおかしくない状況だったといえる。
◇米軍に対する重大な背信
さらに、5月26日付の産経新聞によるスクープ記事に、海上自衛隊幹部は目を疑った。それまで伏せていたはずの潜水艦の正体が「中国軍の元級」だと断定され、さらに記事には米軍の音響測定艦「インペッカブル」の存在やオペレーションの具体的内容まで詳細にリークされている。
それは国防上、どれほど重大な問題なのか。
「自衛隊にとって最も望ましい状況は、中国軍がこちらの哨戒能力を過小評価して、対策らしい対策を取らずに大きな音を立てて潜水艦を航行し続けてくれることだった。しかし、この記事によってこちらがどれだけの対潜哨戒能力を持っているかを相手に伝えることになった。今後、中国軍は日本の哨戒能力への警戒を強め、ますます捕捉することが困難になるでしょう。また、アメリカの音響測定艦インペッカブルの出動のリークも大変まずい。米軍からの抗議は今のところないが、ただ呆れられて、もう日本には機密情報は渡せないと判断されてしまったとしたら・・・」(前出・防衛省幹部)
日中関係が緊迫する中、国防機密はなぜ、どういうルートでリークされたのか。判明したのはあまりにもお粗末な真相だった。
大手紙政治部記者が言う。
「スクープ情報を得たのが官邸番記者だったことからわかるように、主な情報源は官邸スタッフです。しかも、情報の出元は安倍総理お気に入りの議員たちだと目されています」
しかし、彼らだけを責めるわけにもいくまい。子は親に似るという諺の通り、彼らは総理のパフォーマンスを真似ただけだろう。
いまや、”影の首相”とも言われる菅義偉・官房長官もまた、官邸の間抜け振りを露呈した大物の一人だった。
他ならぬ身内が重大機密を”お漏らし”したとは露知らず、記事を読んだ菅義偉・官房長官は激怒。リークした情報源は自衛隊制服組に違いないと決め付けたのだ。
前出の防衛省幹部は呆れ顔だ。
「菅義偉・官房長官から今回の追尾オペレーションに関係した幹部の名前を一覧にして提出しろというお達しがあった。”どうせ官邸が情報を流したくせに、名簿をよこせとはなんだ”と、省内には憤懣どころか、しらけた気分が広がっています。それでも、長官のご指示なので名簿は提出しましたが」
これが国防軍創設を目指すタカ派総理とその周辺の国防リテラシーである。誰がこの国の防衛の足を引っ張っているのか、今回の件ではっきりしただろう。
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