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英エコノミスト誌が、テロ容疑者を収容する米グアンタナモ基地について取り上げた。
記事は、人権を無視する行為が行われている可能性を懸念し、同収容所を閉鎖するよう強い調子で訴える。だが、実現にはかなりの時間がかかると予想される。
かねて、オバマ大統領も、同収容所の閉鎖を主張していた。しかし、議会の反対に遭い、頓挫した経緯がある。
ボストンマラソンを舞台とする事件が発生し、テロの危機が再びクローズアップされている。
キューバにある米海軍グアンタナモ基地の担当者は、同基地内の収容所内で行われている「経管栄養」の処置について、被収容者は選ぶ権利があると言う。彼らは自分で食べることもできる。これを拒む場合に、鼻からチューブを挿入され、喉から胃まで通して流動食を与えられる。この処置は、従順な患者ですら、吐いたり出血したりすることがあるもの。ましてや、本人の意思に反して行われる場合にはかなりひどいことになる。
処置には2時間ほどかかる。その間、非協力的な被収容者は、チューブを抜かないように拘束される。経管栄養を施された23人余りの被収容者の代理人を務める弁護士らによると、この措置は、消毒していないかなり太いチューブを使って故意に手荒に行われたという。ただし、当局はこれを否定している。
彼らの訴えが事実と違っているとしても、この行為は明らかに個人の権利を侵害している。米国医師会会長はこれを「医療従事者の最も大切な倫理意識」に反していると言う。
■裁判もなく、釈放の見込みもない
グアンタナモに今も収容されている166人の被収容者のうち約100人が現在、ハンガーストライキを行っている。先日、「強制摂食」(と呼ぶことを当局が拒否している処置)を補助するためにさらに医師が呼び寄せられた。彼らが何をしているにしろ、これは間違っている。
本誌(英エコノミスト誌)は10年前から、グアンタナモ収容所のことを、不当かつ愚かしい、非アメリカ的なものだとして非難してきた。正当な裁判を受けることも許されず、釈放の可能性もない被収容者が抱く不安は、ジョージ・オーウェルが描く作品の世界のようだ。現代社会において、これほど米国のイメージを傷つけているものはない。グアンタナモの被収容者は、他の文明国すべてにおけるテロ容疑者と同様に、裁判にかけられるか、釈放されるかすべきだ。
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4年3カ月前、バラク・オバマ氏は大統領として初めて行った職務の1つとして、グアンタナモ収容所の閉鎖を命じる大統領令に署名した。そして、同大統領は最近も、同収容所は「我々米国人の在り方に反する。国益を損なっている。閉鎖すべきだ」と述べた。にもかかわらず、収容所はまだ存在している。166人の被収容者の中には、11年もの間起訴すらされないままここに拘留されている者もいる。
■2009年のテロ未遂事件で送還ならず
責任の多くは議会――民主、共和両党の政治家にある。グアンタナモ収容所を閉鎖するというオバマ大統領の当初の計画は、2009年に上院の反対に遭い、頓挫した。投票結果は90対6――議会は、グアンタナモに残った被収容者を一般の裁判にかけるためイリノイ州の刑務所に移すことに税金を使うのを許さなかった。
民主・共和両党の議員がこれほど意見を合わせることはめったにない。その後制定した法律によって、議会は、被収容者らをどこか別の場所に移すことを事実上不可能にした。
オバマ大統領は拒否権を発動すべきだった。あるいは、議会に課された制約を無効にするために、大統領権限を行使すべきだった。それどころか、同大統領はある重要な点で事態を悪化させた。
2009年のクリスマス、デトロイト行きのデルタ航空機を、いわゆる「パンツ爆弾」で狙うテロ未遂事件が起こった。逮捕されたナイジェリア人容疑者が、イエメン人のジハード主義者の牧師と接触していたと主張した。
このためオバマ政権は、グアンタナモに収容されていたイエメン人たちを本国に送還する計画を即座に中止した。送還される予定だった者の中には、裁判にかけられるようなことは何もしていないと判断された者や、安全保障上の重大な危険を生じさせる人物ではないと見なされた者も含まれていた。グアンタナモの被収容者の中で現在最も多いのがイエメン人だ。
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このようにしてオバマ大統領と議会は、釈放される予定だった86人の被収容者をそのまま拘留し続けている。そのほかの被収容者は、アメリカが「審理すべき事件性がある」と見なしている者たちだ。とはいえ、議会がその道を閉ざしてしまったので一般の法廷で彼らを裁くことができない。しかもオバマ政権は、議会の考えを変える努力を諦めている。共和党が議席の過半数を握っている下院では、この件に関して状況を逆転させることは難しい。
■グアンタナモの存在がテロの温床に
被収容者の中には、ドナルド・ラムズフェルド国防長官(当時)が作ったグアンタナモ内の「軍事法廷」で裁判を受けている者もいるだろう。しかし、その審理の過程は非常に醜悪で、数多くの法的な問題があるため、大抵の場合、途中で止まってしまう。
彼らを外国に送って裁判にかけることも、ほとんどのケースでうまくいかないだろう。よそで裁判にかけるには証拠が弱すぎる。あるいは、その信ぴょう性が拷問によって大きく損なわれているからだ(ラムズフェルド氏とディック・チェイニー副大統領=当時=のおかげだ)。
今米国は窮地に陥っている。グアンタナモに収容所を設置したほら吹きと臆病者がいつも口にする最も不適当な反応はこうだ。「ではどうするつもりなのか? 彼らを自由にするのか?」。我々の答えはそれでも「イエス」だ。
釈放されたうちの何人かが、イエメンや中東のどこか、あるいは米国内で、何らかの暴力行為を行うリスクは確かにある。しかし、そのリスクは監視を続けることで軽減することができる。万が一、そうした暴力行為が起こるとしても、仕方がない。「Gitmo(グアンタナモ)」という悪の存在は、166人よりもはるかに多くの人間をテロ活動に追い込んでしまったのだ。
オバマ大統領は今こそ米国の建国の理念について考えてみるべきだ。そしてペンを取り出し、米国の歴史に汚点を残したこの収容所を閉鎖する法案にサインすべきだ。
(c) 2013 The Economist Newspaper Limited. May 4, 2013 All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、日本経済新聞がライセンス契約に基づき掲載したものです。(翻訳協力 日経ビジネス)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1402J_U3A510C1000000/?n_cid=DSTPCS013
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