07. 2013年5月15日 02:31:22
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中国のすさまじい軍事力増強を 米国防総省が警告 2013年05月15日(Wed) 古森 義久 米国防総省が中国の軍事力についての年次報告を公表した。5月6日のことである。米国では中国の軍事力の実態について、政府が毎年、包括的な報告をまとめて、議会に送ることになっている。ここもう10年ほど、法律で決められた行政府の義務である。中国の軍事力がそれほど米国にとっても、世界にとっても大きな重みを持つということだろう。米国はまず中国の軍事力の現況が米国自身の国家安全保障に重大な影響を及ぼすからという理由で、この報告を作成し、その大部分を公表しているわけである。この報告が知らせる中国の軍拡の、日本にとっての意味ももちろん大きい。 さて今年の中国の軍事力報告は昨年分にくらべ、まず分量がずっと多く、本文だけで90ページ近くあった。また内容も中国のすさまじい軍事力増強の実情に対して批判的とも言えるトーンで鋭い光を当てている点が特徴であろう。 潜水艦や哨戒艦、戦闘機を増強、宇宙開発にも熱意 まず、その報告の全体像をまとめてみよう。 「中国は軍隊の近代化という名の下で、人民解放軍の大規模で長期の増強を続けている。その目的は、地域的な戦争で短期の集中した戦闘により勝利を収められる軍事能力を完備することにある。その戦闘の目的としては、台湾有事だけでなく、周辺の海洋での領土紛争から遠隔地での平和維持活動まで、グローバルな規模へと広がっている」 「中国指導部は2012年にも人民解放軍の役割と任務の達成のために、新鋭の短距離、中距離の通常戦力弾道ミサイル、地上攻撃、艦艇攻撃両方の巡航ミサイル、宇宙攻撃兵器、接近拒否、地域拒否の能力強化を意図した軍事サイバー能力などの増強に資金の投入を続けた」 「中国人民解放軍はまた2012年に、核抑止能力、遠距離への通常戦力攻撃能力、新鋭戦闘機、遠隔地への兵力投入能力、初の空母配備、統合防空網、潜水艦戦力などの増強をも続けた」 この全体像を背景にして、今回の報告が特に重視する具体的な部分を以下に挙げてみよう。 ・中国はウクライナから購入した初の空母「遼寧」に加えて、今後10年ほどの間に国産の航空母艦数隻の建造を意図しており、その国産第1号空母は2010年代後半には実戦配備される。 ・中国は潜水艦隊の近代化も優先目標として進めている。弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)「夏」型がすでに3隻配備されているが、今後10年の間に同型5隻がさらに建造される見通しが強い。 ・中国海軍の現在の主力潜水艦はディーゼル機能の「キロ」級攻撃型12隻だが、それに加えて、哨戒潜水艦「宋」型13隻、同「元」型8隻をすでに配備し、2012年中にもその潜水艦隊全般の増強を顕著に進めた。 ・中国海軍は沿岸海域での戦闘能力の強化として2012年中に少なくとも6隻の新型哨戒艦を建造した。この哨戒艦は東シナ海や南シナ海での近海戦闘用であり、その1号艦は2013年2月に配備された。中国は今後同型艦を20〜30隻、建造する計画を決めた。 ・中国空軍は2011年1月にステルス戦闘機の初の飛行テストを実行したが、その後の2年余の間に、次の世代の戦闘機J-31型のテストをも終えた。同型は米軍のF-35に酷似している。 ・中国は宇宙での軍事関連能力の開発にも熱意を示し、2012年中に合計18基の人工衛星を打ち上げた。それら衛星は軍事目的をも有する情報収集、偵察、航行、通信などの機能を持つ。中国はまた宇宙での米国側の軍事関連の衛星などを破壊する能力をも高めてきた。 ・中国は人民解放軍のコンピューターネットワークを軍事目的に使い、米国に対し軍事だけでなく外交、経済など広範な情報収集や機密窃取を実行している。中国は純粋な軍事作戦としてのサイバー攻撃能力をも高め、その実験を繰り返している。 以上のような特徴を見ると、尖閣諸島への中国の軍事圧力を受ける日本としては、脅威感を強めざるをえないだろう。特に明らかに尖閣近海での海洋戦闘能力の大幅な増強が意図した新型哨戒艦隊の急速な建造は海上自衛隊への正面からのチャレンジとなる。 そのうえに中国海軍の潜水艦戦力の大幅な増強も当然、日本への脅威となる。このように今回の米国防総省の報告は日本にとっての意味も巨大なのである。 サイバー攻撃を巡って米中が非難合戦 オバマ政権は中国の軍拡に対し、このような警告や懸念を表明しながらもなお、米中関係全体の安定への配慮から遠慮がちな言辞が多かった。その一例としてはこの報告自体のタイトルが挙げられる。ブッシュ政権時代は単に「中国の軍事力」と題されていたこの報告書はいまでは厳密には「中華人民共和国の軍事、安全保障の展開」とされているのだ。 しかし今回の報告は昨年などよりは数歩、踏み込み、中国の軍拡の脅威をより明確に述べている。特にはっきりと批判したのは中国側のサイバー攻撃で、中国人民解放軍の直接の関与を明記した。 中国側はこの点に対し、まっさきに反論している。米国側の主張は事実無根だというのである。米国側は当然、その否定をまた否定する。その点ではこの報告が米中関係に新たな緊張をもたらすと言っても、過言ではない。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/37778 さてわが日本としては中国のこれほどの大規模な軍事力増強にどう対処するか。この課題は安倍政権にとっても重大である。
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