08. 2013年5月17日 23:58:41
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日中韓のリアルで探れ、尖閣・竹島の落としどころ イチャモンはつけられるほうが悪い、敵を知らずに戦う日本の外交〜小川和久氏 2013年05月17日(Fri) JBpress マット安川 今回のゲストは、初登場の軍事アナリスト・小川和久さん。ご自身も折に触れて関わられた、日本の外交政策や諸外国との関係について、細かくお聞きしました。官僚制度への見解や、米軍基地・対米交渉のリアルなお話は必見です。「引っ越しできない」隣国との正しい付き合い方とは? 小川 和久(おがわ・かずひさ)氏 1945年熊本県生まれ。陸上自衛隊生徒教育隊・航空学校修了。同志社大学神学部中退。地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立、現在は国際変動研究所理事長のほか、静岡県立大学特任教授。外交・安全保障・危機管理(防災、テロ対策、重要インフラ防護など)の分野で政府の政策立案に関わり、国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、日本紛争予防センター理事、総務省消防庁消防審議会委員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。著書多数。(撮影:前田せいめい、以下同) 小川 日本人は外交、安全保障、危機管理といったことのセンスが、ほとんどDNAレベルで欠けていると思います。中国や韓国といった隣国との関係をめぐる議論も非常に幼稚です。
両国とも海を隔てて国境を接している「引っ越しできない関係」だということを、まず念頭に置かないといけません。 怖がるばかりではなく戦略的に、相手を利用しておいしい思いができるように関わっていく。向こうもそういうスタンスで付き合う中でWin-Winの関係になれば、摩擦は横に置いといてって話になりますよね。 尖閣問題について言えば、中国の軍は一貫して抑制的です。日本との間に小競り合いでも起きれば国際的な資本が中国から退いてしまう恐れがあるからですが、それだけじゃありません。軍の上層部の財布は中国経済と直結しているんですね。だからとにかくトラブルは起こしたくない。 習近平(国家主席)さんの幼馴染みで、軍事面の代表者とも言える劉源という上将がいます。対日、対米の最強硬派と言われた人ですけど、今年2月からにわかに違うことを言い出しました。 日本との戦争は利益にならない、中国の発展は戦争と戦争の間に実現したんだとね。習近平の承認がないとこういう発言はできません。ちゃんと話し合った上で、日本とコトを構えるのはやめようなってことでしょう。 対中外交がうまくいかないのは、軍の仕組みを知らないから 中国が尖閣で領海侵犯を繰り返しているのは、日本がやるべきことをやっていないからです。 例えば南シナ海で中国ともめているベトナムは、去年の6月に海洋法を制定しました。外国政府の船、軍艦がベトナムの領海に入るときには、事前に政府の許可が必要だよっていうものです。 中国はぎゃんぎゃん咆えたけど、それからは入っていません。法律を知りながら入って撃たれたら、入ったやつが悪いんだという話になる。当たり前の国がやるのはそういうことです。 日本の外務省は中国をよく知っていても、軍のことは知りません。外交がうまくいかないのは、ひとつにはそのせいでしょう。 今の日本の場合、外国の大使館にいる防衛駐在官は一等書記官か参事官ですから、大使から見れば下っ端です。しかし中国の場合、大使館にいる国防武官は大使と同格なんです。 中国には対外的なことをやっている組織が5つあって、日本の外務省に当たる外交部はその中で一番格下です。だから外交ルートを通じて抗議するとかいって大使を呼んでも、北京の外交部で止まって党に上がらない場合があります。 ところが武官に言うとその日のうちに共産党中央軍事委員会にばっと上がる。だから安全保障問題に関しては大使と武官同席とかね、そういうルールを決めたら面白いと思っているんです。 竹島問題の落としどころは、領有権棚上げ+海洋資源折半 韓国との竹島問題にしても、日本がちゃんとしていたら向こうは何も言いません。いちゃもんをつけられるほうが悪いんです。
まず押さえておいたほうがいいのは、竹島については尖閣のように強く出られないってことです。尖閣は国際法上、100%日本のものですし、中国としてはアメリカの逆鱗にふれないように日本の反応を見るぐらいしかできません。 ところが竹島は違います。韓国もアメリカの同盟国だし、すでに実効支配しているのは韓国の方ですからね。 取り返そうと思ったら軍事的にやるしかありません。海上自衛隊、航空自衛隊が本気になればほんとに短い間に取り返すことができますが、それにはたいへんなリスクが伴います。そこから生まれた怨みに、2000年、3000年にわたってさらされ続けることになる。 だから竹島については、領有権は棚上げにしてやるから海洋資源は折半だぜ、というくらいの話で収めるしかない。元気なことを言う人には、やれるんならやってみろ、できないくせに言うなって、僕はいつも言うんです。 北朝鮮がミサイルを撃ったとしても海に落ちるだけ この3月から北朝鮮情勢が緊迫したって言いますけれど、本当にあの国を分析している人たちはそんなこと言いません。 彼らは3種類のミサイル、移動式の発射装置を日本海側に動かしました。しかし、それを発射するとは一度も言っていない。せいぜい一般論としてミサイルのボタンに手がかかっているとか、その程度の言い方です。あそこは言葉で勝負して生きている国だってことを踏まえないといけません。 小川さんはそんなこと言うけど、彼らも振り上げた拳を振り下ろさずにはいられないでしょうと言われます。しかし振り下ろすしか選択肢がないと考えること自体、おかしい。 北朝鮮は拳を振り上げてもね、日本の反応をうかがって、あ、びびってやがるって見る。もう効果あったなと思ったら、すっと下ろすんです。振り回されてはいけません。 北朝鮮の軍事的な動きを見れば、経済制裁は強まっても軍事攻撃は受けないという範囲でしかやっていないことが分かります。ミサイルを撃ったってどこかの国に落とすことはない。落ちるのは海ですよ。 延坪島に大砲を撃ち込んだり、韓国の軍艦を沈めたりということはありましたが、あのエリアだけです。 北朝鮮は国連が決めた軍事境界線を認めていません。韓国がそこから北で軍事演習をするのは黙認できないから攻撃するっていう警告は、1973年以来、もう年に何回も繰り返しているんです。
だからときどき小競り合いが起きますが、そうこうするうちに「北朝鮮の言うことにも一理ある。それを無視して韓国が軍事演習するのがまずいんじゃないか」という国が必ず出てきます。 北朝鮮はそういうひとつのルールの中で軍事行動をしているということを、ちゃんと見ないといけません。 アメリカが世界のリーダーなのは、日米同盟があってこそ 日本はアメリカに守っていただいている、という認識は決して正しくありません。 基地の一般的なイメージは、兵隊がいて戦闘機や軍艦があってというくらいのものですが、実際はそんなものじゃない。 軍事力というものは正面の戦力だけではなく、それを支えるロジスティックス、インテリジェンスまでを含めてのことなんです。そういう視点から見れば、安全保障をめぐる日米関係は対等に近いと言えます。 アメリカの同盟国を会社に例えるなら、日本以外の国は支店か営業所というところです。それに対して日本は本社機能を担っています。 逆に言えば日本のほかに本社機能を提供できる同盟国はありません。だから日本が安保条約を切ってしまうと、米軍を支える能力の多くが失われる。そうなったらロシアも中国もインドも北朝鮮も、アメリカの言うことを聞かなくなるでしょう。 するとアメリカは世界のリーダーの座から滑り落ちることになります。機密扱いを解除されて出てきた外交文書を見ると、アメリカは日本で反米感情が高まらないかをずっと気にしてるんです。 日本にしたって、防衛費が4兆7000億円プラスアルファで済んでいるのは日米同盟があるからです。 防衛大学校の2人の教授が去年試算したところによると、自立した軍事力で今のレベルの安全を保つには年間20兆から23兆円のお金がかかります。日米同盟をフルに使っていくことを考えるのが現実的でしょう。 「ムスダン」発射予告は北朝鮮の対中戦略だった? 日本は米韓と共助して拉致、核、ミサイル問題の早期解決を 2013年05月17日(Fri) JBpress 5月12日放送の『中山泰秀のやすトラダムス』(Kiss FM KOBEで毎週日曜24:00-25:00放送)では、北朝鮮の対中戦略について解説したほか、日本維新の会の憲法改正論議をめぐる主張や、精神科医の故・小田晋氏による性犯罪抑制の取り組みなどについて語った。
北朝鮮の脅しに最も反応したのは日米韓ではなく中国 中山 ワシントンで7日、オバマ米大統領と韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領による米韓首脳会談が行われました。 緊迫した朝鮮半島情勢が一定の落ち着きを見せ始める中、北朝鮮に対するメッセージが注目されましたが、どんな協議がなされたのでしょうか。時事通信が次のように伝えています。 故金日成主席生誕100年を記念して平壌で行われた軍事パレードに参加したムスダン級ミサイル〔AFPBB News〕
「対話の再開に言葉の重心を置きつつ非核化への行動を呼びかけた。しかし、北朝鮮が応じる見通しはない。具体的な出口戦略がないことも浮き彫りになった。北朝鮮に距離を置き始めたかに見える中国の動きが今後のカギを握りそうだ」と。 記事が指摘している通り、米国も韓国も北朝鮮に対して取るべき対応を分析できていない気がします。 一方の中国ですが、これまでは国連安全保障理事会や6者会合で北朝鮮制裁について論議されるたびに、拒否権を行使して北朝鮮の擁護に回ってきました。それが今回、ついに国連安保理決議に同調し、口座凍結や取引停止などの金融制裁を本格化させています。 これは、北朝鮮が繰り返すミサイル発射の脅しに対し、中国がさすがにこらえかねて制裁行動に踏み切ったという見方ができるでしょう。 しかし、中国の行動を北朝鮮はあらかじめ見越していたと私は見ています。すなわち、新型中距離弾道ミサイル「ムスダン」を発射しようとした今回のシグナルは、北朝鮮が中国に対して戦略的に行ったのではないかということ。 北朝鮮問題とは、簡単に言えば米国と中国による北朝鮮の政治的な奪い合いです。中国にしてみれば、北朝鮮は国境線上で接していますが、北緯38度線を越えると在韓米軍のいる民主主義国家・韓国があり、そのさらに東には日本があります。 もし、いずれ北朝鮮が鎖国状態を開放する時が来た場合、こうした冷戦時代の西側諸国と手を結ぶのか、それとも中国やロシアなどの東側諸国に仲間入りするのか。そのどちらに比重を置くかが、北朝鮮の今後を左右するターニングポイントになるはずです。 中国は今まで、北朝鮮の対中経済依存度を強めることで自国側に近づくよう仕向けてきましたが、ついに度を越えたミサイル発射の挑発に怒りをあらわにした。これは、中国が北朝鮮の戦略にはまったということです。 つまり北朝鮮は、中国ではなく米韓とも手を結べるという外交的な「フリーハンド」を持ちたかった。 表向きでは「ミサイルを撃つぞ」と言って日米韓と敵対関係や緊張を演出しているように見えますが、実はその脅しに一番引っかかったのは中国だったのではないでしょうか。 「フリーハンド」を手にした北朝鮮は、今後米韓との交渉に臨んでくるでしょう。いずれにせよ我が国にとって大切なのは、国交のない北朝鮮との間で拉致、核、ミサイルの3つの問題を、米韓らと共助して早期決着させることです。 1年生議員が大半を占める日本維新の会に自由な議論ができるのか 続いて国内の話題に移ります。日本維新の会の橋下(徹)共同代表は記者団に対し、自民党内の憲法改正論議について、「国家と公権力という区分けがあまりされていない中で、公権力の行使を強く出しすぎており、危険だ」と指摘したうえで、自民党との憲法観の違いを明確にするため、今後党内での議論を急ぐ考えを示しました。 日本維新の会にはさまざまな憲法観を持った議員がいると思いますが、果たして橋下氏に対して自由にものを言える風土が党内にあるのかは大きな疑問です。 自民党には上の世代とも侃々諤々(かんかんがくがく)の議論ができる風土があり、今回の憲法改正論議も十分な時間をかけて行ってきています。しかし、1年生議員がほとんどを占める維新において、それは難しいのではないでしょうか。 外交や外国人地方参政権など、数々の問題に関して党内のベクトルが定まっていない中で、とりあえず憲法改正にだけは賛成しているように私には見えます。 党としての歴史が浅いぶん、本格的な議論はこれからなのかもしれませんが、7月の参議院選を1つの期限とするのならば、それまでに党内でしっかりと熟議を重ねる必要があります。 橋下氏は、党の現状について「国民から支持を得る力はなくなっており、このままでは年内の消滅もあり得る」と述べ、参議院選に向けて党が結束して態勢を立て直す必要性を強調したそうです。 かつて民主党が、2010年までに政策を実現して解散する「時限政党」を標榜しましたが、兵庫県伊丹、宝塚両市長選で維新候補が敗れてしまったことを考えると、橋下氏が今後いかに政党支持率を上げていくかが注目されます。 再犯率が一般犯罪よりも高い異常性愛は、病気として治療する必要がある 精神科医として数々の凶悪犯罪を分析したことで知られる小田(晋)氏が11日、心不全のため死去したと伝えられました。 中山 泰秀(なかやま・やすひで)氏 衆議院議員(自由民主党所属)。1970年大阪市北区生まれ。電通勤務を経て政治の道へ入る。2003年衆議院総選挙で初当選、2007〜2008年8月まで外務大臣政務官を務める。自民党青年局長代理・国防部会長(撮影:前田せいめい) 小田先生には私が1年生議員の時、個人的にも大変お世話になった記憶があります。当時は、奈良市女児誘拐殺人事件や光市母子殺害事件などの異常性愛犯罪が社会に不安を与えていました。
実は私と小田先生は追手門学院小学校の同窓生なのですが、その同窓会の席で挨拶したところ小田先生が私のところへ来てくださり、一度話をしようということになったんです。 いろいろなお話を聞く中で、小田先生が嗜癖的性犯罪に対して「治療的保護観察」という概念を持っておられることが分かりました。難しく聞こえるかもしれませんが、これは要するに「異常性愛は病気であって、治療しなければ治らない」という考え方です。 例えば、痴漢行為などを異常性愛の病気としてまずは認めること。そのうえで、プロベラという男性ホルモン拮抗薬を投与して治療を行うわけです。世界では実際に犯罪者に対してこのホルモン拮抗薬を投与した症例があり、小田先生のリポートによれば犯罪抑制の効果が認められたそうです。 ドイツや米国の一部の州では、裁判官の立ち会いや医師の同意のもとで治療的保護観察の措置がなされます。そこで私は小田先生と一緒になって、日本でもこの制度を導入してはどうかと国会で提案したのです。あの時、小田先生にいろいろとご指導いただいたことを今もはっきりと覚えています。 性犯罪の再犯率は一般犯罪の倍とも言われます。今後不幸な事件を防ぐためにも、小田先生のご遺志をしっかりと継いでいくことが大事ではないでしょうか。 http://jbpress.ismedia.jp/ |