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http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35573
2013年04月22日(月)週刊現代 :現代ビジネス
■先制攻撃はここが狙われる
「北朝鮮は、韓国全域に届くスカッドミサイル、日本を標的にしたノドンミサイル、グアムまで到達するムスダンミサイルの発射実験を同時に準備してきた。韓国、日本、アメリカを直接狙えることを誇示するためだ。
だが金正恩の真の狙いは、朝鮮半島の統一だ。ミサイル発射の次は、西海岸(黄海)上のNLL(北方限界線)付近や、南北休戦ライン一帯で武力挑発に出るだろう」
こう語るのは、韓国の北朝鮮専門家であるソウル大学統一平和研究院の張容碩博士だ。
北朝鮮の恫喝外交が、日増しにエスカレートしている。
この3月以降、朝鮮戦争の休戦協定破棄、南北ホットラインの切断、開城工業団地の閉鎖、平壌からの外交官退避勧告、韓国からの外国人退避勧告……。常軌を逸した北朝鮮の矢継ぎ早の一方的な恫喝に、東アジア全体が振り回されている。
張博士が続ける。
「北朝鮮は7月27日に、朝鮮戦争戦勝60周年を控えている。金正恩としては、この時までに一定の成果を挙げ、国内での求心力を高める必要がある。だからどうしても、次々と派手なアクションを起こさざるを得ないのだ」
同じく韓国の北朝鮮問題の権威である世宗研究所の鄭成長・首席研究員も、世界最年少30歳の国家元首である金正恩の危うさを指摘する。
「父親の故・金正日総書記は、北朝鮮最大最強の朝鮮人民軍を、3分割して統治した。実動部隊である総参謀部、後方部隊である人民武力部、そして思想担当の総政治局だ。この3権力に自分への忠誠合戦をさせ、巧みに統治したのだ。
ところが金正恩時代になって、この軍の3権の統制が取れなくなってしまった。そのため金正恩としては、対外的にどんどん強硬策をエスカレートさせることによって、生き残りを図っていくしか手がないのだ」
在ソウルジャーナリストの金哲氏も指摘する。
「金正日総書記は、大胆で冒険好きな一面と、慎重で老獪な一面を併せ持った指導者だった。これに対し金正恩第一書記は、前者の部分しか受け継いでいない。性格的にも大変危うい指導者だ」
このように、38度線を隔てて直接、北朝鮮と対峙している韓国の専門家たちは、金正恩が現在行っている極端な恫喝外交を、非常に深刻に受けとめている。
いまの北朝鮮はまさに、窮鼠猫を〓む状態だ。土俵際に追い詰められた金正恩第一書記の狂気が意味するものは何か。そして北朝鮮はこの先、一体どこまで突き進んでいくのか―。
本誌は、あるルートを通じて、朝鮮労働党幹部へのインタビューに成功した。以下、その一問一答をお伝えする。
■もう後には戻れない
―このところの北朝鮮の言動は、常軌を逸しており、国際社会として到底、看過できるものではない。就任1周年を迎えた30歳の金正恩は、いったい何を考えているのか?
「何を考えているのかは、日々わが国の当局が発表している通りだ。つまり、米帝(アメリカ)がわが国を敵対視する限り、わが国も米帝及びその傀儡に対する報復の度合いを上げていくということだ。2000万朝鮮国民は一致団結して、米帝との最終戦争に臨むという決意を示している。ミサイル実験は、その覚悟を示したものだ。第2次朝鮮戦争になるかどうかは、米帝の態度次第だ」
―金正恩は、本気で第2次朝鮮戦争を起こそうとしているのか?
「金正恩第一書記は、有言実行型の指導者だ。昨年暮れの衛星打ち上げも、今年2月の核実験も、一旦やるとおっしゃったら、必ず実行する。その意味で、いまのわが国の主張は、外国勢力が考えているような脅しや誇張では、決してない」
―金正恩は、かつて「国民に白米と肉のスープを与えたい」と言った祖父の金日成主席を尊敬しているそうだが、国民に対する食糧配給は、きちんと行われているのか。
「食糧事情は、確かに厳しいものがある。配給も有名無実化している。だが、『苦難の行軍』('95~'98年に約200万人が餓死)の時代に較べたら、このくらいの困窮は耐えていける」
―配給がないと、国民は食糧をどうやって調達しているのか。
「チャンマダン(闇市場)へ行けば、食糧はいくらでもあるではないか」
―だがそれほど容易に買えるのか。ハイパー・インフレが進んでいるという話も聞く。
「インフレは確かに深刻な問題だ。だが何事も、慣れれば何とかなるものだ。わが国民は耐えることを知っている」
―金正恩は、「先軍政治(軍最優先の政治)を貫け」という父親の遺訓に従っているように見えるが、最優先されるべき朝鮮人民軍には、十分な食糧が行き渡っているのか。
「人民軍でも最近は、食糧調達が苦しくなっているのは事実だ。地方では軍と住民との諍いも、しばしば起こっている」
―一般国民の間で、'90年代半ばの「苦難の行軍」の時代のような大量の餓死者が出ているのか。
「平壌以外の地方では少しは出ているが、それでも'90年代ほど深刻ではない。特に今年の冬は寒かったので、死者が増えた。平壌でも、零下25度を記録したほどだった」
―凍死者が出たということか。
「それは凍死者も出た。地方は寒さを凌ぐ術が乏しいので、仕方ないことだ。冬に地方出張へ行ったが、道端に屍体がゴロゴロ転がっていた。油を撒いて火で焼かないと、腐敗して菌が発生するのだが、油も不足しているため、そのまま放置されていた。週に一度現れる清掃員は、多くの屍体の始末で大変だった」
―地方には暖房はないのか?
「平壌でさえも一般市民は暖房とは無縁だ。自宅でも職場でも、たくさん衣服を着込んで、何とか長い冬を凌いだ」
―電気はきちんと送電されているのか。
「平壌は、だいたい夜の2時間だけ灯りが点くが、それ以外は節電している。地方は電力が行き渡っていない地域もある。だがテレビは、全国いつでもつく。そうしないと当局の指導が行き届かないではないか」
―水道は正常に機能しているのか。
「していない。平壌市民も毎日、井戸水を汲んで運んでいる。だがわが国には公害もないので、井戸水は新鮮でおいしい」
―そのような国民生活の困窮と、金正恩第一書記の最近の好戦主義とは関係があるのか。
「国民生活と国家戦略とは、それほど関係ない。共和国(北朝鮮)には2種類の国民がいる。220万の選ばれた平壌市民と、それ以外の一般国民だ。平壌市民以外の国民が困窮することは、党中央はそれほど考慮していない」
―軍の食糧が困窮することはどうか。
「それは確かに、大変深刻な問題だ。これまでは軍にだけは、十分な食糧が供給できていた。それが最近は、軍にも行き渡らなくなってきている。これは由々しきことだ」
―食糧不足の最大の理由は何か。
「それは中国からの援助がストップしたことだ。毎年、食糧が不足する春から夏にかけては、主に中国からの援助で賄っていた。それが今年は消えたのだ。中国は、かつて朝鮮戦争で共に米帝と戦った『血を分けた誼』のはずなのに、いまやすっかり資本主義の走狗と化してしまった」
―中国からの重油もストップしているのか。
「2月にわが国が核実験を行って以降、ストップしている」
―化学肥料はどうか。
「肥料も滞り、深刻な問題を起こしている。春は種蒔きの季節だが、中国からの化学肥料がないと、作物が育たない。そのため人糞を争奪する騒動まで発生している」
■原発が狙われている
―今後、アメリカに対しては、どのような攻撃≠考えているのか。
「全軍全党を挙げて、あらゆる手段で米帝の敵対視政策に対抗していく。一歩一歩、水位≠上げていくということだ」
―4度目の核実験も強行するのか。
「当然だ。核実験やミサイル実験にいくら費用がかかるか分かるか。100億〓だ。それでも核実験は続ける。核兵器なくして、わが国の存続はないからだ。『人間はその日の米がなくても死なないが、兵器がなければ即死する』。将軍様(故・金正日総書記)が遺されたお言葉だ。
―1950年の朝鮮戦争の時のような、韓国への南侵も行うつもりなのか。
「それは当然だ。わが国の最終的な目標は、祖国の統一だ。
経済的にわれわれよりも南の傀儡(韓国)の方が豊かなことは分かっている。だがわれわれ2000万国民には強烈なプライドがあり、一心団結で南の傀儡と、その背後にいる米帝に立ち向かって行く。われわれは南の傀儡をまったく恐れていない」
―金正恩は、日本との国交正常化は考えていないのか。昨年7月には、子供時代に遊び友達だった「金正日の料理人」藤本健二氏を平壌に招待したりしていたではないか。
「それは日本の態度次第だ。だが少なくとも、安倍政権が存続している間は、日本のことは相手にしない方針だ」
―それはなぜか?
「安倍政権のこの3ヵ月の態度を見れば一目瞭然ではないか。朝鮮総連の本部を競売にかけ、在日朝鮮人の教科書を無償化せず、拉致被害者が800人いるなどと抜かし、さらにはわが国への経済制裁期間を2年間も延長した。
これほど共和国を敵対視している政権と、どうやって手を結べというのか。安倍政権は百パーセント、米帝の傀儡であり、わが国はこのような傀儡政権は、絶対に相手にしないのだ」
*
以上である。
北朝鮮が安倍政権を敵視しているとしたら、日本への攻撃もありえるのか。韓国の国家情報院関係者が解説する。
「それはないとは言えません。まず日本各地にある米軍基地が、北朝鮮軍の攻撃対象になるでしょう。北朝鮮の考え方は、アメリカの同盟国はアメリカ同様の敵国だというものです。だから朝鮮労働党機関紙『労働新聞』(4月10日付)が報じたように、東京、大阪、横浜、名古屋、京都なども標的ということです。
ただし、ノドンミサイルに核兵器を搭載し、日本の大都市に向けて発射するというシナリオは、起こりにくい。北朝鮮に日本を占領しようという意図はなく、そんな余力があれば韓国を狙うだろうからです。
北朝鮮が注目したのは、2年前の福島原発の事故でした。ただ1ヵ所の事故だけで、日本全体がパニックに陥ると知ったことは収穫だったと、韓国に亡命した北朝鮮の元工作員たちは証言しています」
日本は4月9日に、迎撃ミサイル「PAC3」の配備を完了した。また、安倍首相も小野寺防衛相も、「備えるべきことは備えてある」と口を揃え、24時間態勢で自衛隊を挙げての警備を行っている。
だが、憲法で戦争や武力行使を放棄している日本が、北朝鮮と交戦することはない。ひたすら専守防衛に徹するだけだ。
代わって、いざ有事となれば、在日米軍を側面支援することになるが、米軍が日本の民間空港を使用することすら、法律に引っかかるのが現状だ。憲法を始めとする自衛隊関連の法律改正へ向けた国会論議の前に、北朝鮮有事が先に来てしまったのである。
北朝鮮という「いまそこにある危機」に対して、日本はどう対処すべきかを、早急に議論する必要がある。
いくらアベクロバブルで株価が急騰しても、北朝鮮のミサイルがただの1発でも、日本列島に着弾すれば、外国人投資家は一斉に日本から引き、株価も日本経済も大混乱に陥るのである。
「週刊現代」2014年4月27日号より
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