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投稿者 ダイナモ 日時 2014 年 1 月 15 日 19:36:08: mY9T/8MdR98ug
 

年が明けたらすぐに、なにやら騒がしい。選挙だ。
 まず、1月19日は沖縄県名護市の市長選の投開票日。むろん、この選挙の最大の争点は、普天間飛行場の辺野古移設。これははっきりしている。辺野古移設絶対反対を掲げる現市長の稲嶺進氏と、辺野古移設容認の自民党候補末松文信氏の一騎打ちだ。
 そして2月9日には、東京都知事選が控えている。このふたつの選挙は、まさにこれからのこの国の方向性を決めかねない重要な意味を持つ。安倍暴走政治の是非を問うということだ。

 名護市長選については、僕の考えは明快だ。ふたりの候補のまったく対照的な訴え。そのどちらに当選してほしいか、言うまでもない。

 2014年11月25日、それまで「普天間飛行場は県外移設」と主張してきた沖縄選出の5人の自民党国会議員たちは、記者会見場で、まるで何かの罪を犯した者たちのようにそろって首をうなだれ、唇をかみしめながら座っていた。その傍らで石破茂自民党幹事長は、白目を剥いて彼ら5人を睨みつけながら会見に臨んだ。あのシーンはテレビでも流れたし、新聞各紙に写真も掲載されたから、憶えている方も多いだろう。
 毎日新聞(2013年11月25日夕刊)によれば、こうだ。

 沖縄県を選挙地盤とする自民党国会議員5人が25日午前、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題を巡って同党の石破茂幹事長と会談し、5人とも党本部の方針に従い、同県名護市辺野古への移設を容認する姿勢で一致した。(略)
 同党沖縄県連は昨年(注・12年)12月の衆院選と今年(注・13年)7月の参院選で、党本部の方針に反して「県外移設」を独自公約として掲げた。これに対し石破氏は辺野古埋め立ての年内承認を取り付ける環境を整えるため、19日の5氏との会談で党本部の方針を受け入れるよう強く迫っていた。(略)
 県連公約から姿勢を変えた経緯については(石破氏は)「圧力を加えたつもりはない。沖縄の気持ちを代弁する国会議員が、党に県外移設を求めることは許容してきた」と語った。(略)

 
 石破幹事長は「圧力を加えたつもりはない」と言った。だが、そう語る石破氏の横で、顔を上げることもできずにうつむくばかりの沖縄の5人の国会議員たちの表情が、圧力の存在をあからさまに物語っていた。
 実際、石破氏が「もしこれ以上、党本部の意向に逆らうのであれば、何らかの処分を下し、次回の選挙では公認することも難しくなる」と5人、特に最後まで「県外移設」を主張していた国場幸之助氏(沖縄1区)と比嘉奈津美氏(沖縄3区)に詰め寄ったと、複数のジャーナリストから聞いている。このふたりが、記者会見の席で顔を上げられなかったのも当然だ。これを「圧力」と呼ばずして、何と言えばいいのか。
 こうして年末12月27日、仲井真弘多沖縄県知事の「辺野古沖埋め立て申請承認」へのレールは敷かれたのだ。札束で横っ面をひっぱたかれた仲井真知事は、さっそく沖縄県議会から「辞職要求決議」を突きつけられた。「沖縄はまたも金で転んだ」と言われることに、沖縄県民は我慢ならなかったのだ。
 だが、石破氏の“恫喝”が、これで終わったわけではない。彼はその後も、強烈な圧力を沖縄へかけ続ける。毎日新聞(1月13日)のほんの小さな記事(たった18行)が、こう伝えている。

 自民党の石破茂幹事長は12日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題が最大の争点となる名護市長選で、再選を目指す反対派の現職、稲嶺進氏をけん制した。「名護、県北部地域の発展を考える選挙だ。基地の場所は政府が決めるものだ」と鳥取県米子市で記者団に述べた。(略)

 凄まじいというしかない。当事者である地元の選挙結果がどうあれ、そんなものは関係ない。全部、政府が決めるのだから、お前たちは文句を言わずに黙って従えばいい……。
 石破氏が言っているのは、そういうことではないか。「民主主義」なんて言葉は、どこかへ棄ててきてしまった。これが政権党のナンバー2の発言なのだから肌寒くなる。しかし、こんなひどい放言・妄言を、なんでマスメディアはもっと大きく伝えないのだろう。
 暴走する中央政府と、まさに一騎打ちしようとしている候補を、僕は支持する。基地問題のみならず、根底にある安倍政権の民主主義破壊の政策を認めるわけにはいかないからだ。

 名護市長選に比べ、東京都知事選はもっと複雑だ。一騎打ちではなく、多くの人が立候補を表明している。
 僕がこれまでこのコラムでこだわってきた「反原発」について、はっきりとそれを争点にしようとする人が複数、名乗りを上げた。「原発のみを争点にするのはおかしい。他に、大事な都民の暮らしについても争点はたくさんあるはず」という意見がある。もっともだ。
 けれど、批判覚悟で書くのだが、それは木を見て森を見ていない意見ではないだろうか。ふたりの有力な人が「反原発票」を分け合えば、誰が有利になるか。むろんそれは、自民党推薦候補だろう。
 ツイッターなどでも、僕は何回か呟いてきたのだが、この都知事選は単なる「一地方選挙」ではない。安倍暴走政治をこれ以降も許してしまうのか、それとも戦前回帰の危険極まりない強権政治に「待った!」をかけられるのかという意味で、「国政選挙」に匹敵する重要な選択ではないか。少なくとも、僕はそう思う。
 そうであれば、この都知事選では、自民党推薦候補をどうあっても勝たせるわけにはかない。自民候補が勝てば、安倍は、これで自分の“復古政治”が支持された、とますます鼻高々になるだろう。そして、通常国会で「集団的自衛権行使の容認」へ踏み込み、解釈改憲、やがては明文改憲へと駒を進めるに違いない。国防軍創設から、アメリカの戦争支援、共同作戦へと、現実の戦争へ踏み込んでいく可能性が高まるだろう。
 事実、安倍のお先棒かつぎの議員が、早くもこう発言している(朝日新聞1月13日付)。観測気球だ。

(略)安倍政権は、憲法解釈を変更し集団的自衛権の行使を容認する新たな政府見解の素案を4月にもまとめる方針を固めた。(略)
 首相官邸で国家安全保障を担当する礒崎陽輔首相補佐官は12日のフジテレビの番組で「公明党と議論しなければいけないが、国会が終わってからやるのは敵前逃亡な感じがある。国会中にしっかりと決めたい」と強調。24日に召集予定の通常国会の会期中(6月22日まで)に行使容認を打ち出す考えを示した。(略)

 「敵前逃亡」などというキナ臭い言葉を使う。この礒崎議員の頭の中も「気分はもう戦争」なのだろう。上から下までひどいもんだ。
 この背景には、安倍首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇、座長・柳井俊二元駐米大使)の存在がある。このコラムでも何度か指摘してきたように、自分と似たような考えの連中を集めて“私的”諮問懇談会を作り、そこで自分の意図通りの“提言”をさせ、さらにその提言をまるで公的な原案であるかのように使って法制化していく。こんな好き勝手な“私的懇談会政治”がまかり通るなら、国会の委員会など不必要になってしまう。ほとんど政治の“私物化”ではないか。
 それをフル活用して、右翼的政治を行っているのが安倍政権なのだ。
 しかもこの礒崎議員も極端な右派思想の持主。彼は「立憲主義なんていう考え方は聞いたことがない」とツイートして多くの人に呆れられたほど、憲法学の基礎さえ知らない男だ。東大法学部卒というのだが、東大って、いったいどんな教育をしているんだろう、まったく。 
 そんな人物が、国家安全保障担当の首相補佐官であり、しかも自民党憲法起草委員会の事務局長だというのだから恐ろしい。

 これから先、ほぼ3年間、国政選挙はない。圧倒的与党多数の国会が3年間続くわけだ。だから安倍はその間に、「昭和の妖怪」と呼ばれた母方の祖父・岸信介元首相の“悲願の憲法改定”への道筋をつけようとしている。その前段階としての特定秘密保護法の強行採決であり、今国会中に打ち出す予定の集団的自衛権行使容認なのだ。
 それを阻止できる数少ないチャンスが、今回の名護と東京の首長選挙である、と捉えるのは間違っているだろうか。
 これらふたつの選挙で自民党推薦候補が敗れれば、安倍の暴走に一定程度の歯止めはかけられる。「脱原発」が東京から発信されれば、「原発再稼働」に重点を置いている “アベノミクス”は、一挙にほころんでいく可能性が高い。
 だから、悩ましい…。

 「脱原発」「9条改憲反対」「弱者救済」「スモール五輪の開催」…。せめてこのくらいの「政策協定」を結んで、候補者一本化はできないものだろうか。もしそれができたなら、勝算はかなり高まる。
 多分「野合」だとか「保守と革新の理念なき相乗り」などという批判や罵倒は殺到するだろう。だが、「一度除名した人を候補に担ぐ党」に、そんなことを言われる筋合いはない。
 どちらかに統一でき、その方が当選した場合、もう一方はその方の有力ブレーンとして都政に協力する。そういう協定は結べないものだろうか。
 これが、僕の本音である。

 断っておくが、以上はあくまで僕個人の思いだ。このサイト「マガジン9」の見解では決してない。
 「マガジン9」は、「日本国憲法第9条の精神を大事にする」という一点だけで立ち上がったサイトだ。ひとつひとつの事象については、参加スタッフや執筆者の考えには多くの違いもあり、すべてに同じ考えを持つなどということはあり得ない。
 「マガジン9」は、運動体ではなく、広くリベラルな言論の場を提供することを目的としているネット・メディアだと、僕は認識している。したがって、この都知事選についても、さまざまな意見が混在しているだろう。それでいいと思う。
 だから、この文章の責任は、あくまで僕個人にある。



http://www.magazine9.jp/article/osanpo/10217/  

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