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特定秘密保護法案は、参院特別委員会で強行採決され、12月6日深夜、参議院本会議において、多くの問題点を残したまま、自民党と公明党の賛成で可決、成立した。最終的な修正案においても、指摘された問題点や懸念点は、本質的に何ら解消されることはなかった。アムネスティ・インターナショナル日本は、日本政府と国会に対し、国内外からの懸念や反対の声を無視して採決を強行したことに非難するとともに、この法律の全面的な見直しを強く要請する。
同法に対しては、法案提出前および審議過程で、国内外の市民団体、弁護士、学者・研究者、新聞・ジャーナリスト、文筆家・演劇人や音楽家、映画監督などの表現者、労働組合、さらに人権高等弁務官を含む国連の専門家から、数多くの深刻な懸念や反対の声があがっていた。現状のままであれば、今国会での法案成立は見送り、全面的に見直すべきであった。しかし、参議院でもわずかな審議時間を費やしただけで、十分な審議のないまま与党は強引に押し切った。
アムネスティ日本はこれまで、この法案が国際人権基準の観点から、「表現の自由」や「知る権利(情報へのアクセス権)」などを根底から脅かすものであるとして深刻な懸念を表明してきた(注1)。第一に、特定秘密の指定の範囲が極めて広範囲かつ曖昧であり、恣意的な指定がなされる可能性が高いこと。第二に、指定期間も当初の30年から60年に後退し、内閣の裁量によって秘密が永遠に明らかにされない可能性があること。第三に、適性評価制度において対象者とその家族・関係者の思想信条の調査が行われる恐れがあり、評価対象者の家族や関係者に対しては同意なく調査が行われること。第四に、一般市民やNGO・NPO、ジャーナリスト、研究者などが政府の行動を監視・調査して情報公開を求めるといった、表現の自由の根幹を成す活動が「特定秘密」漏えいの処罰対象となる危険があること。第五に、もし個人が、同法案に定める特定秘密の漏えいに関する罪に問われた場合、具体的にどのような特定秘密の漏えいに該当するのかが被告人および弁護人に開示されないまま裁判が行われる恐れがあること。こうした多くの問題点は、最後まで解消されることはなかった。
「第三者機関」を要求する声に対し、安倍首相は12月4日、3つの機関の概要を発表した。すなわち、内閣官房の中に秘密指定の適否をチェックする「保全監視委員会(仮称)」、統一基準を策定する「情報保全諮問会議」、そして特定秘密が記録された公文書の廃棄の可否を判断する「独立公文書管理監」の設置である。しかし、いずれも、権限を持つ独立した「第三者機関」と呼ぶには程遠い。組織の機能や法的権能もまったく不明なままで、恣意的な秘密指定や情報隠ぺいを防ぐ独立性はなんら担保されていない。
アムネスティ日本は、同法に対する深刻な懸念を重ねて表明するとともに、引き続き、同法の全面的な見直しを日本政府と国会に要請する。日本政府は、問題点を改善するまで、同法を施行するべきではない。
情報へのアクセス権を含む表現の自由は、この社会に暮らすあらゆる人びとの人権を実現し保護・促進するために不可欠な礎である。日本政府がこのことを十分に認識し、自国が批准している自由権規約をはじめとする国際人権基準を誠実に遵守するよう、アムネスティ日本は強く訴える。
アムネスティ日本支部声明
2013年12月9日
注1:アムネスティ日本支部声明は以下の通り
2013年11月28日 特定秘密保護法案 日本政府は法案を全面的に見直せ
2013年10月23日 特定秘密保護法案、表現の自由の侵害に対する深刻な懸念
http://www.amnesty.or.jp/news/2013/1209_4365.html
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