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「従軍慰安婦」に聞いた話を歌に 美輪明宏/目をそらさずに見つめ直さねば 池辺晋一郎
作曲家の池辺音一郎さんが、各界の“会いたい人”と語り合うシリーズ。今回は美輪明宏さんです。
池辺 あけましておめでとうございます。
美輪 おめでとうございます。
池辺 美輪さんとは、僕が司会をしていたクラシック音楽番組「N響アワー」にゲストで来ていただいたのが初めてでした。
愛する人が死ぬ それが戦争です
美輪 その後、パルコ劇場での私のトークショーにもご出演いただいて。
池辺 美輪さんのご本『戦争と平和 愛のメッセージ』を拝読して感動しました。冒頭に「戦争とは、あなたの愛する人が死ぬということです」とあります。たくさんの子どもたちに読んでもらいたいですね。
美輪 ありがとうございます。全国の学校で読んでほしくて書いたんですが、どうも文科省が首を縦に振らないみたいなんです。
池辺 ご自身の戦争体験と長崎での被爆体験を基に、戦争の恐ろしさと平和の大切さを語られていて説得力があります。今、何かしなきゃならないという気持ちにさせられますね。
美輪 戦争に反対する発言は最近始めたのではなくて、1960年代の初めから、労働者への応援歌「ヨイトマケの唄」のほかにも「従軍慰安婦の唄」とかいっぱい反戦歌を作って、社会派と呼ばれていました。
池辺 ええ。シンガー・ソングライターの元祖と呼ばれるゆえんですね。
美輪 先日、NHKでも反戦歌を歌いました。「SONGS (ソングス)」という番組では、原爆、水爆の大好きな戦争亡者の連中を告発する「悪魔」をのっけに歌って、2曲目は、戦争で亡くなった人たちが焼けただれ、ちぎれた体を引きずって空を行進している「亡霊達の行進」。昨年の「紅白歌合戦」では原爆孤児を歌った「ふるさとの
空の下に」を。
池辺 素晴らしいです。「従軍慰安婦の唄」はずっと放送禁止歌ですね。
美輪 あれは敗戦後、「満州」から引き揚げてきた日本人の「従軍慰安婦」に、私がじかに話を聞いて作った歌です。
池辺 そうでしたか。
美輪 戦時中は遊郭が閉鎖されましたから、彼女たちは「満州」に行って「従軍慰安婦」にさせられたそうです。敗戦後、進駐軍のために再オープンした長崎の丸山遊郭で働き始めて、近くの喫茶店でお茶を飲むんですよ。私の家が遊郭の入り口にあったものですから、かわいがられて一緒にお茶を飲んで、山のように実体験を聞きました。
池辺 美輪さんは当時、まだ、子どもですよね。
美輪 11歳でしたけど、これはいつか伝えなきゃと思っていました。「満州」では兵隊と一緒に野山を行軍していたそうです。彼女たちは鉄砲を渡されてたたかって、弾に当たって死んでも、焼いても埋めてももらえず、中国服に着替えさせられて放り出されたそうです。
池辺 中国服に?
美輪 日本婦女子が「慰安婦」をしていたら日本の恥辱になるから、中国人の女だということにしたんですって。兵隊の相手をする時は、くいを打って、むしろをつって、コーリャンのおにぎりを枕元に置いて。木札を持った兵隊が表に並んでいたそうです。
池辺 日本の婦女子だけでなく、侵略した先々の女性を強制的に「慰安婦」にした史実もあります。これらの問題から目をそらすことなく、冷静に見つめ直さなければいけないですね。
美輪 随分昔に1回だけ、テレビで「従軍慰安婦の唄」を歌わせてくれたことがあったんですよ。
池辺 そうなんですか。
美輪 そうしたら「従軍慰安婦」だったという人から電話がきて、長崎県の島原の人でね。家のために売られたのに、故郷に帰ったら、さんざん非難されて、父親からも村八分になるから出ていってくれって言われて、死のうと思っていた、と。
池辺 その時に美輪さんの歌を聞かれたんですね。
美輪 私たちの気持ちをわかってくれる人がいる、これでいつ死んでも悔いはないって泣いてらして。私も泣きました。でもね、あなた死んだら負けですよ、復讐しなきゃだめでしょ、あなたが幸せになることが復讐ですよ、って言ったんです。そうしたら、ありがとうございました、目が覚めましたって。
池辺 その方、どうしてるんだろう、今。
美輪 それっきりでした。そういう人が、いっぱいいたんです。
憲法9条の堅持 訴えるわけは…
池辺 美輪さんはコンサートでも憲法9条の堅持を訴えていらっしゃいます。
美輪 もの知らずの自民党が、憲法はアメリカのお仕着せって育ってるけど、あれは日本製ですよって言うんです。植木枝盛の私擬憲法などの自由民権運動、ワイマール憲法、大正デモクラシーの影響を受けて、鈴木安蔵が中心になってまとめた憲法草案が土台になっているわけですから。
池辺 僕は、あの憲法がたとえ日本製じゃなくても、アメリカ製であったとしても、世界の手本だと思うんです。世界の憲法だと思えばいいという気がします。
美輪 同じ人間が作った憲法で、素晴らしければ、それでいいじゃありませんか。でもあれね、日本製なんですよ。(笑)
原発そして戦争 おおもとを見る
池辺 話を変えて、美輪さんの審美眼の素晴らしさについて。美輪さんがご自分のお芝居「卒塔婆小町」のために、ハチャトリアンの「仮面舞踏会」を選曲されたのには仰天しました。
美輪 ハチャトリアンは「剣の舞」が有名だけれど、あの曲は叙情的で上品でね。老婆が美女に早変わりする時に使ったんです。
池辺 すごく豪奢で、芝居と見事に一致していた。美輪さんは総合芸術家なんですね。歌を作り、歌い、芝居を作り、演じ、社会批評家でもある。辛口で正鵠を射た批評をされます。
美輪 現象だけを見るのではなくて、おおもとに何か原因があるからこそ全ては発生しているわけでしょう。そこを見極めなきゃいけないと思います。世の中を俯瞰して考えて、分析すれば、おかしいことの原因がわかるものです。
池辺 原発の問題もそうですね。
美輪 原発のプラスとマイナスをはかりに掛けてみれば、処理方法のない猛毒の放射性廃棄物が永久に増え続けるという、とんでもない弊害の方が大きいわけでしょ。
池辺 おおもとには軍需産業がありますね。
美輪 アメリカの出来損ないの原子炉を売りつけられて、結局、軍需産業が世界を仕切っているわけじゃないですか。戦争がやまないのもそう。アメリカでは1400万人が軍需産業で食べていると聞きました。彼らを養うためには、軍事物資を消耗させなければならないんですよ。
池辺 常に戦争を起こしていないといけない。
美輪 だから、本当に戦争を地球上からなくそうと思ったら、軍需産業を平和産業に切り替えなくてはいけないんです。
政治にたいして 声をあげる年に
池辺 美輪さんがおっしゃるようにおおもとを見ると同時に、その先を見なきゃいけないと思います。これまでの日本の失敗の原因は何のための経済なのか考えてこなかったことにあるんじゃないか。経済は目的語ではあり得ないんです。
美輪 愛する人がそばにいて、食べるものも着るものもそこそこの生活をしみじみとやっていければ、充実していますね。
池辺 そういう人々の暮らしを壊すような政治に対して、今年は、きちっと声をあげることをしなければならないと思っています。平気でうそをついたり、デモをテロだなんていう政治はやめてほしいですね。
美輪 お隣の中国や韓国との関係も、文化の交流はとても円満にうまくいってるんですよ。政治だけが正反対の方に行ってる。だから、あんな政治屋たちは全部首にして、池辺さんみたいな文化人を政治家にしてね、文化で世界に伍していくようにすれば、日本は世界でもピカイチの国になると思いますよ。(笑)
池辺 その希望を力にしたいと思います。ありがとうございました。
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みわ・あきひろ 1935年長崎市生まれ。16歳で歌手デビュー。演劇・リサイタル・テレビ・講演など幅広く活躍中。著書多数。4月12日(土)〜5月5日(月・祝)、東京・新国立劇場中劇場で「愛の讃歌−エディット・ピアフ物語」公演。
その後6月15日まで全国10都市で上演。
いけべ・しんいちろう 1943年水戸市生まれ。東京音楽大学教授。オーケストラ、吹奏楽、合唱、オペラ、ドラマ・映画音楽など作曲多数。尾高賞など受賞多数。著書『シューマンの音符たち』『ドヴォルザークの音符たち』ほか。
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