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2013年12月30日 DAILY NOBORDER
「戦争の惨禍によって人々が苦しむことのない時代をつくる決意を込め、不戦の誓いを立てた」
26日に靖国神社を参拝した後、安倍晋三首相は記者団にこう語った。
どんな立場の人でも世界のどこにいる人でも述べる、きわめて当たり前の言葉だ。近隣諸国や欧米からも強い批判が吹き出し、現実に国益を著しく損なうことが分かっている靖国参拝を強行した日本のリーダーが発するメッセージとしては無内容で説得力がほとんどない。
国のために戦って命を落とした戦没者に一国のリーダーが「哀悼の誠」をささげるのは当然であり、なんら批判されるいわれはない。だが、靖国神社がその対象となると話はまったく違ってくる。
先の大戦で国民を戦争に駆り立てた国家神道の中心的役割を果たした靖国神社は、1978年に戦争指導者であるA級戦犯14人を合祀した。それ以降は昭和天皇も参拝していない。 赤紙一枚で家族と別れ、戦場に散った兵士と戦争を遂行した責任がある戦争指導者を一緒に祀った靖国神社への参拝は、日本の侵略や植民地支配をどう見るかというリーダーの歴史認識が問われる問題なのだ。
第一次政権時に靖国参拝ができなかったことを「痛恨の極み」と繰り返していた首相は、歴代政権が認めてきた河野談話や村山談話を見直したい、が本音だ。
だが、首相の歴史認識は国際社会から受け入れられない。対外関係を配慮して持論を封印し、「歴代内閣の立場を引き継ぐ」と表明するしかなかった。靖国参拝も我慢してきた。 その自制のタガが外れた。行き詰まっている中国、韓国との関係打開の糸口をどう見出すか、という国益よりも個人的な理念にこだわる「参拝への思い」を優先させたのだ。
中韓の猛反発だけでなく、首相が頼みとする米国からも「失望している」との異例の声明が出された。首相が基盤とするコアな保守層からの支持はあっても、国際的には孤立する危険すらはらむ。 さらに驚くのは、自らの判断と行動の結果、引き起こされる事態に対する戦略的対処が皆無だったということだ。
参拝後に首相は「謙虚に、礼儀正しく誠意をもって説明し、対話を求めていきたい」と語った。隣人の横っ面をはたいておいて、「謙虚に、礼儀正しく…説明し」と言っているようなもので、中韓は聞く耳を持たないだろう。 冷徹な国際政治の中で中韓や米国が首相の参拝を受け入れざるを得ないという読みと具体的な手立てを打ったうえでの行動ならまだしも、説明のための対話を求めるというだけでは、政治家としても稚拙と言わざるを得ない。
領土問題や従軍慰安婦問題などで中国と韓国が嫌いという日本人が増えている。両国との関係がさらにこじれれば、双方のナショナリズムに火が付きかねない。 個人の思いを遂げるよりも首相としての行動がもたらす結果に、謙虚に思いをいたすべきだった。
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