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安倍晋三首相が在任中では初の靖国神社参拝に踏み切った。第2次安倍政権発足からちょうど1年の節目に悲願を達成した首相は、満足感に浸っていることだろう。
だが、中国、韓国との関係が冷え込み、特定秘密保護法の成立など強引な政権運営への懸念が広がる中での決行は問題が大きい。
日本が「危うい国」と見られて国際社会で孤立化する恐れはあっても、メリットはない。国益を損なうリスクを承知の上で今、首相が持論を貫く意味はあるのか。安倍政権の目指す国の在り方と、首相の資質が問われる。
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現職の首相が靖国神社を参拝するのは、小泉純一郎氏以来7年ぶりとなる。終戦記念日でも春秋の例大祭でもなく、政権発足1年に合わせた参拝に「私の内閣」の実績をアピールする狙いがうかがえる。
首相は昨年12月の衆院選前後から、第1次安倍政権の在任中に参拝できなかったのは「痛恨の極み」と繰り返してきた。ようやく「公約」を果たし、保守層の中に歓迎する声があるのは確かだ。
全ての戦争犠牲者を追悼し、あらためて不戦を誓う。首相が述べた思いを否定する人はいないだろう。
首相や閣僚の靖国参拝が政治問題化したのは、1978年に東京裁判のA級戦犯が合祀(ごうし)されたのが契機だ。過去の侵略戦争を美化する、などと国内外の批判を招いてきた。
以前は参拝していた安倍首相が就任後の参拝を避けてきたのは、その自覚があったからではないか。
首相の公式参拝は政教分離の原則に反し違憲とした司法判断もある。
むしろ首相は、内外の抵抗を抑えて「信念」を貫く強い姿勢を誇示したかったのだろう。
先送りすれば、参拝に期待する保守層の失望を招き政権基盤が揺らぎかねない。一方、参拝によるダメージは数の力で最小限に抑えられる‐。長期政権をにらんで計算が働いたとすれば内向きすぎる。国際社会のリーダー像とは相容れない。
首相は参拝後、「平和国家として歩む姿勢に一点の曇りもない」と述べた。だが、首相の歴史認識をめぐる発言や憲法9条改正への意欲をセットで考えた場合、近隣諸国が「軍国主義への回帰」と危ぶむのは容易に想定できたはずだ。
ただでさえ「戦後最悪」といわれる中国、韓国との関係がさらに悪化することは避けられない。
両国からは「安倍氏が首相である限り関係改善は難しくなった」などと強い批判が噴出している。
両国との首脳会談が持てない不正常な状況は、経済、文化交流などにも影を落とす。改善の見通しがないまま参拝に踏み切ったとすれば、思慮の欠けた判断というしかない。
中国側には、日本の戦争指導者と一般国民を切り離し「国民も軍国主義の被害者だった」として国交を回復した経緯がある。中国にすれば見過ごせない問題だ。
韓国では「植民地の歴史を美化する動き」と捉えられ、従軍慰安婦問題とともに火だねになっている。
安倍首相は「中国や韓国の人たちを傷付けるつもりは毛頭ない」と話した。両国の首脳に思いを直接説明したいとも語った。そうであれば具体的な外交努力が要る。
尖閣諸島や竹島をめぐる対立で緊張が高まり、米国も安倍政権の姿勢に懸念を示してきた。今回の参拝についても「近隣諸国との緊張を悪化させる行動を取ったことに失望している」と強く批判した。
10月に来日したケリー国務長官らが千鳥ケ淵戦没者墓苑を訪れた異例の行動も、靖国参拝に対する懸念の表れだったとされる。
価値観を共有するはずの欧米諸国との信頼関係も危うくなる。
懸念材料は靖国問題だけではない。安倍政権は、秘密法を強行成立させた後も「安倍カラー」の濃い政策を矢継ぎ早に打ち出している。
国連平和維持活動(PKO)で初めて他国に武器提供を行い、年明けには集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈の見直しを進める意向だ。靖国参拝では公明党の山口那津男代表の制止も振り切ったという。
与党内の歯止めさえ利かなくなっている。「自民1強」の独断専行との批判は免れない。
安倍首相は「戦場で散った英霊の冥福を祈るのは世界共通のリーダーの姿勢だ」とも述べた。個人の思い入れを抑えてでも、事態の打開策を示すのが真のリーダーだろう。
中国、韓国と対話の窓口を開き、信頼関係を築き直す。新たな追悼の形も含め誰もがわだかまりなく戦没者への祈りをささげられる環境をつくる。政治が安定している時こそ、こうした問題に正面から向き合い、冷静な議論を積み重ねるべきだ。
http://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201312/0006599471.shtml
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