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靖国神社の参拝を終えた安倍晋三首相=東京都千代田区で2013年12月26日午前11時45分、竹内幹撮影
http://blog.livedoor.jp/ryoma307/archives/7473634.html
2013/12/27 毎日新聞
安倍晋三首相が26日行った突然の靖国神社参拝は、中国や韓国だけでなく日本にとり最も重要な同盟国である米国からも強い否定的反応を招いた。水面下で参拝自粛を働きかけてきた米国がいら立ちを深め、中韓との関係がさらに冷却化するのは必至の情勢だ。
米政府は安倍首相の2期目の就任以来、東アジア情勢の安定を望む観点から日中、日韓関係の悪化につながる靖国神社参拝を避けるよう日本政府側に水面下で再三働きかけてきた。これを退けた形となる今回の参拝に、米大使館は失望感を示す声明を即座に出した。日本外務省幹部が「近年になく良好で緊密」と胸を張ってきた日米関係だが、今後ひびが入りかねない。
「靖国神社参拝は絶対にやめてくれ。積み上げたものを全て壊す」。知日派のアーミテージ元米国務副長官は10月30日、東京都内で自民党幹部に対し、首相の靖国参拝を見送るよう力説した。日本と中国、韓国の対立激化がアジア太平洋地域に重心を移す米国の「リバランス」政策上、大きな不安定要因になることへの強い懸念を示したものだ。
沖縄県・尖閣諸島を巡る日中対立で不測の事態が懸念される中、米国は日米安保条約が尖閣にも適用されると強調して中国をけん制するが、米中がにらみ合う事態は避けたいのが本音だ。北朝鮮の核・ミサイル問題への対応でも日米韓の連携が不可欠だが、日本と韓国の関係は悪化し軍事情報の共有システムも途切れたまま。東アジア戦略のカギを握るのは日韓との連携であるだけに、米国は関係改善を繰り返し促してきた。
ある日本外務省幹部は今月、米外交・国防当局者との非公式会談で「靖国に参拝するなど、挑発的な行動は避けるべきだ」とくぎを刺されたという。
複数の日米外交筋が「靖国神社参拝は避けるようにというメッセージと受け取った」と口をそろえるのは、10月3日のケリー国務長官とヘーゲル国防長官の東京・千鳥ケ淵戦没者墓苑への献花だ。同墓苑は第二次世界大戦で戦没した身元不明者の遺骨を納める無宗教国立施設。
在日米大使館のカート・トン首席公使は10月31日のブログで献花に関し「日本の歴代指導者が米国訪問時にアーリントン国立墓地の無名戦士の墓を訪問していることと、相通ずるものがあります」と記した。宗教性を排した追悼施設の同墓地に一番近いのは、戦争指導者も合祀(ごうし)され宗教・政治性を帯びる靖国神社ではなく、千鳥ケ淵墓苑だとの認識を示したものだ。
米政府に近い知日派有識者は「オバマ政権は、参拝を見送る安倍首相の現実主義を高く評価してきた。保守主義が表面化すると、評価は一変しかねない」と指摘している。【ワシントン西田進一郎】
◇中国 首脳会談、困難に
「重大な結果の責任は日本が全て負わなければならない」。中国の王毅(おうき)外相は26日夕、木寺昌人駐中国大使を外務省に呼び、約40分にわたり厳正な申し入れと強い抗議を行った。木寺大使は中国にいる日本人と企業の安全の確保を強く求め、王外相は「すべきことはする」と回答したという。
26日夕には劉延東(りゅうえんとう)副首相が北京で小渕優子元少子化担当相ら超党派国会議員10人と会談する予定だったが、急きょ取りやめに。秦剛(しんごう)外務省報道局長は定例会見で「靖国神社参拝で両国関係の改善と発展に新たに重大な政治的障害をもたらした」と述べ、対抗措置であることを示唆した。
日中外交当局は来秋の北京でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、日中首脳会談が実現できないか環境整備を進める意向だったとされる。しかし、尖閣問題と中国の防空識別圏設定に靖国参拝が加わり、「それどころではなくなった」(北京の外交当局者)のが実情だ。
中国社会科学院日本研究所の李薇(りび)所長は「安倍首相には中日関係を改善する気持ちがないことの表れで、東アジアはさらに緊張するだろう」と批判する。【北京・石原聖】
◇韓国 「憤怒禁じ得ない」
韓国では、朴槿恵(パククネ)大統領の厳しい対日姿勢を疑問視する見方が出ていたが、靖国参拝で反発一色に染まった。日本の植民地時代の元徴用工をめぐる訴訟問題など他の問題に影響が出かねないとの懸念も出ている。
政府全体の広報を担当する劉震竜(ユジンリョン)文化体育観光相は26日、「嘆かわしく、憤怒を禁じえない」との異例の政府報道官声明を発表。「積極的平和主義という名の下に国際社会に貢献したいというが、誤った歴史観を持ち、平和増進に寄与できると考えているのか、問わずにいられない」と非難した。
また、金奎顕(キムギュヒョン)第1外務次官は外務省に倉井高志・駐韓総括公使(臨時代理大使)を呼び、「韓日関係の安定的な発展を望む両国国民の願いに冷や水を浴びせる行為だ」と抗議した。
韓国では今秋以降、メディアや有識者の間で日韓関係改善の必要性が強調され、青瓦台(大統領府)高官も問題意識を持つようになっていた。今月、韓国側が外務次官級の戦略対話の開催を提案するなど、実務レベルでは環境整備が進みつつあったが、日韓外交筋は「関係立て直しが全く見通せない状況になった」と漏らす。【ソウル大貫智子】
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◇米大使館声明−−全文
日本は大切な同盟国であり、友好国である。しかし、日本の指導者が近隣諸国との関係を悪化させる行動を取ったことに、米国は失望している。
米国は、日本と近隣諸国が共に、過去からの微妙な問題に対処し、関係を改善し、地域の平和と安定という我々の共通目標を前進させるための協力を推進する、建設的方策を見いだすよう希望する。
我々は、首相が過去に関する反省を表明し、日本の平和への決意を再確認したことに留意する。
毎日新聞 2013年12月27日 東京朝刊
安倍首相:靖国参拝 識者の話
◇反日世論高まれば強硬に−−
天児慧(あまこ・さとし)・早稲田大大学院教授(現代中国論)の話
中国は言葉の上では反発しても、昨年のような大規模な反日デモが起きるような事態は望んでいないだろう。習近平政権は対日関係を悪化させることでむしろ日米の結束を強めてしまったところがある。また、国内では経済成長が停滞しているうえ環境悪化などの問題もあり、日本の支援を受けるため関係を全面的に悪化させてはいけない、という意識があるはずだ。
ただ、世論が反日機運を高めると、中国当局も強硬な姿勢に出ざるを得ない。インターネットなどで盛り上がると、当局が防空識別圏内で空軍機を飛ばすなど軍事的挑発を強めることはないとはいえない。しかし、日本側が冷静に対処すれば最悪の事態は避けられるだろう。
また、中韓関係については、韓国はむしろ中国に取り込まれてしまうことを懸念しており、対日関係を見直す動きも出ている。靖国参拝をきっかけに中韓連携が進むというように単純化して考えるべきではないだろう。【聞き手・金子淳】
◇米国、明らかに腹立てた−−
ロバート・デュジャリック・テンプル大日本校現代アジア研究所所長の話
安倍晋三首相の靖国参拝に「失望した」と記した在日米大使館の声明は非常に強い内容で、明らかに腹を立てている。
首相が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)や米軍普天間飛行場の移設問題で米国寄りだった点を考慮すると、声明は重要な同盟国を公に責めている。キャロライン・ケネディ駐日米大使でなく、オバマ米大統領か米政府高官から出てきたものだと思う。
首相の参拝は米国に幾つかの問題を投げかけた。米国は日韓が協力して中国に対応するため両国の良好な関係を望んでいたが、一層難しくなった。また中国が東アジアで日本を孤立させる試みも容易になった。
しかし、日米関係が根本から変わったわけではない。両国の関係は調整できる領域にあるし、TPPなどをめぐる経済関係も変わらない。ビジネス流に言えば、今回の出来事で日本株が下落したといえる。【聞き手・大前仁】
◇米国の反応、受け止めよ−−
浅羽祐樹・山口県立大学国際文化学部准教授(韓国政治)の話
靖国参拝は中韓だけではなく、むしろ米国との問題としてとらえるべきだ。靖国神社は戦犯の合祀(ごうし)により問題化しているが、サンフランシスコ講和条約では東京裁判の結果を受諾する旨が書かれている。このため国際社会では、靖国参拝は過去の取り決めをくつがえす動きととらえられかねない。
米国はこれまで、同盟国の日韓両国に対し歴史認識問題などで自重を求めてきたが、今回の参拝で日本が警告を破ったと受け取られてしまう可能性がある。在日米大使館は今回、かなりストレートに批判する声明を出しており、日本政府はきちんと受け止めるべきだ。
韓国は今回、政府のスポークスパーソン格である文化体育観光相が声明を読み上げており、抗議の水準が外務省レベルよりも上がった。年明けには戦時中に強制労働させられた元徴用工訴訟の最高裁判決で日本企業が敗訴するとみられ、首脳会談の実現はさらに遠のいた。【聞き手・金子淳】
毎日新聞 2013年12月27日 東京朝刊
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