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木谷弁護士は、後輩である東京地裁裁判官の判断を「情けない」
【PC遠隔操作事件】家族との面会禁止の是非を問う
http://bylines.news.yahoo.co.jp/egawashoko/20131222-00030897/
2013年12月22日 20時12分 江川 紹子 | ジャーナリスト
PC遠隔操作事件で起訴後も勾留が続いている片山祐輔氏は、今もなお、弁護人以外とは誰とも面会できない「接見禁止」の状態が続いている。家族とも会えず、手紙のやりとりもできない。これに対し、弁護団は接見禁止決定の取り消しを求めたが、東京地裁刑事14部(藤原靖士裁判官)は、「現行法に被告人や弁護人が接見禁止決定の取り消しを請求できる規定がない」として、請求を棄却。これに対し、弁護側は「法律家の悪しき形式論だ」(木谷明弁護士)として、近く異議申し立ての準抗告を行う。最終的には最高裁の判断を求めることが予想され、事件そのものとは別に、被告人の面会の権利を巡る司法判断が注目される。
■異議を申し立てることすらできないのか
片山氏は、今年2月10日に逮捕されてから、捜査の間、ずっと身柄の勾留と接見禁止が続いた。捜査は6月28日に終結。だが、その後も勾留と接見禁止は続いている。勾留や接見禁止の決定は裁判所が出す。刑事訴訟法には勾留の理由や必要性がなくなった時には、勾留を取り消さなければならないとする規定が明記されているが、接見禁止については何らの規定も書かれていない。弁護団は何度も母親と弟との面会を求め、接見禁止決定の一部を解除する職権発動を裁判所に求めてきたが、裁判所は受け入れなかった。このような「職権を発動しない」という裁判所の対応に対しては、これまで被告・弁護側からは異議申し立ての手続きができない、とされてきた。
実際、今回の請求も、刑事14部の受付が受理を渋った。元裁判官の木谷弁護士が「こちらは、請求する権利があると考えて請求している。この点について裁判官の判断を求めているのに、受付が受け取らないとは僭越至極」と一喝し、ようやく受理された。
請求書によれば、弁護団は、
*現実の訴訟においては、法制定当時には思い及ばなかった事態も生じることがある。そのような場合、規定がないからといって、不合理を放置しておくのではなく、法文の解釈によって適切に対処するのがプロの法律家の役割である。
*捜査が終了すれば罪証隠滅のおそれも格段に減少する。接見禁止決定をする場合は、捜査段階に限るのが、一般的な見解である。本件は、最終起訴から半年。しかも、年末・年始を控えており、せめて近親者との接見を認めてやりたい。
*勾留取り消しの請求権があるのに、接見禁止についての規定がないのは法の不備。それを被告人にガマンしろというのは正しくない。そういう場合は、不合理を解釈で解消する努力を惜しむべきではない
ーーなどとし、法の不備を解釈によって埋めた事例もあげている。
たとえば、1981年に千葉県柏市で起きた「みどりちゃん殺害事件」。小学6年生の女の子の刺殺死体が発見され、中学3年生のA少年が犯行を自白したものの、少年院に送られる保護処分となって否認に転じた。当時の少年法では、再審の規定がなく、保護処分を見直す道は閉ざされていた。A少年の弁護士が保護処分の取り消しを申し立てたが、家庭裁判所は認めなかったため、高裁への異議申し立て(抗告)をした。すると、高裁は少年法の規定がないことを理由に、抗告自体が「不適法」とした。これに対し、最高裁は少年法の解釈運用によって、規定がなくても本件抗告は適法として、少年事件の再審に道を開く判断を行った。
「接見禁止の場合は、勾留に関する規定を準用すればよいだけの話だ」と木谷弁護士は言う。
■検察官の反対理由は?
東京地裁は、今回の判断を行うにあたって、検察官にも事情を聞き、意見を求めている。その際、検察官は「犯人が使ったアカウントのパスワードを家族に伝え、それが第三者に伝わって真犯人になりすましたメールが送られる可能性がある」という捜査段階でも繰り返し述べていた主張を展開。片山氏が犯人であるとする直接的な証拠がなく、検察側は客観証拠を積み上げて「想定される犯人像に合う要素をすべて備えているのは被告人しかいない」という形での立証をよぎなくされていることを説明し、新たにメールを送られるなど、要素の1つでも崩されれば、検察官立証に著しいダメージを与えるとして、接見禁止を解除することに猛烈に反対している。
拘置所での面会は、刑務官が横ですべての会話を聞き、記録を取っている。そんな状況で密かにパスワードを伝えるなど、現実的に考えれば、不可能だろう。
検察官の理屈によるならば、判決が出るまで誰との接見も認めるな、ということになりはしないか? 検察官の手持ち証拠が脆弱で立証が困難だからといって、被告人にいつまでも不利益を強いていいのだろうか。
■裁判開始前から実刑以上の刑罰
実刑が確定した人でも、一定の頻度で家族や友人・支援者らと面会ができ、手紙のやりとりも許される。凶悪事件を引き起こした死刑囚でさえ、家族や限られた友人との交流は可能だ。身柄を拘束されたまま、家族にも会えず、手紙のやりとりもできないという、今の片山氏の置かれた状況は、裁判を受ける前から、すでに実刑判決以上の刑罰を受けている状態と言える。
にもかかわらず、接見禁止の解除を申し立てる権利すら認めない、という東京地裁の対応に、高裁や最高裁がどのように判断するのか。注目していきたい。
江川 紹子
ジャーナリスト
神奈川新聞記者を経てフリーランス。司法、政治、災害、教育、カルト、音楽など関心分野は様々です。
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