http://www.asyura2.com/13/senkyo158/msg/330.html
Tweet |
http://shimotazawa.cocolog-wbs.com/akebi/2013/12/post-0dba.html
2013年12月22日 神州の泉
安倍首相が実践するアベノミクスは「三本の矢」で構成されていて、1に「大胆な金融政策」、2に「機動的な財政政策」3に「民間投資を喚起する成長戦略」である。
この第三の矢で謳われる「成長戦略」は「世界で一番企業が活躍しやすい国」をキャッチフレーズとしている。
社会学者の五十嵐仁氏はそのためには「聖域なき規制改革を進め……企業活動を妨げる障害を、一つひとつ解消」することが、「新たな『規制改革会議』の使命」だというと書いている。
http://blogos.com/article/70499/
五十嵐仁氏は意識していたのだろうか。
それは一度中断して、また新たに立ち上げられた『規制改革会議』の使命に掲げられた、“聖域なき規制改革”と“企業活動を妨げる障害を解消”という二つのフレーズが、反意的な危険をはらんでいることを。
その一つは、「聖域なき規制改革」が小泉・竹中構造改革で言挙げした「聖域なき構造改革」を強く連想させるからである。
小泉政権のスローガン、「聖域なき構造改革」とは、新自由主義経済学派の小さな政府論をベースにして、郵政事業の民営化、道路関係四公団の民営化、政府による公共サービスの民営化転換による縮減などから、市場にできることは市場に任せる、いわゆる「官から民へ」の積極的な転換を図る政策であった。
その観点から言うなら、小泉構造改革の『聖域なき構造改革』も、安倍政権の成長戦略で出てきた『聖域なき規制改革』も、全く同じ政策的な思想構造を持っている。
その構造は、1973年にチリで起きた軍事クーデター後の政策路線と合致している。
これはフリードマンの弟子たちであるシカゴ・ボーイズたちが、チリのクーデターを契機に南米諸国で行った経済政策と本質的には同じである。
この構造改革の中心にいた竹中平蔵氏は、今現在も彼が牽引した政策の指針が新自由主義であることを全く認めていない。
にも関わらず、小泉政権以前の政体構造を古い時代の社会主義的な要素の強い疲弊した体制であり、自分の考え方を批判する者たちを抵抗勢力派と断じている。
それでは、竹中氏が構想し実践している経済思想が新自由主義でも修正資本主義でもないのなら、それは一体何であるかについては全く言及していないのである。
だが、竹中氏が何と言おうとも郵政民営化を筆頭として、彼が携わった政策群は紛うことなき新自由主義路線であり、ミルトン・フリードマンが書いた「資本主義と自由」の考え方に完全に合致したものだった。
もう一つの「企業活動を妨げる障害を、一つひとつ解消」というのは、企業にとっては良いことづくめだが、企業利益のためだけに規制を緩和した場合に、それが国民生活や共通社会資本にとって、どういう影響を与えるのかには故意に言及されていない。
これが安倍政権成長戦略の最大のペテンであり、危険すぎる問題点なのである。
五十嵐仁氏の該当記事を参照すると、第二次安倍内閣は「経済財政諮問会議」、「日本経済再生本部」、「産業競争力会議」、「規制改革会議」という四つの戦略的な政策形成機関を設けた。
各会議は連携して各種の規制緩和策についての検討を行ない、それぞれ答申や報告書を発表した。
五十嵐氏は、これらの内容も、基本的には小泉純一郎内閣と第一次安倍内閣による新自由主義的な構造改革路線を踏襲するものであり、労働の規制緩和はその重要な構成部分となっていると書いている。
この「規制改革会議」の下には「雇用ワーキング・グループ」が置かれていて、例えば労働の規制緩和についての具体的な議論は主としてここで行われたようである。
詳しいことは五十嵐氏の該当記事をお読みいただきたいが、要は安倍成長戦略が年次改革要望書や日米経済調和対話の系譜を踏襲していることがよく分かる。
この延長線上に国家戦略特区法や産業競争力強化法、TPP関連の日米二国間協議などを重ね合わせると、安倍政権が目指している成長戦略とは小泉構造改革の集大成であり、グローバル資本の対日改造プログラムのステージで言うと、最終局面に突入した感じがある。
徹底したフリードマン主義に基づく政策指針と、企業の投資活動の便益だけに焦点を絞り、国民生活を全く顧慮しない姿勢を鑑みれば、戦後史上、これほど経済的に巨大なリスクを孕んだ政権は初めてである。
もっというなら、このまま安倍成長戦略が遂行されれば、日本は国家としての存続が成り立たないところまで進む可能性があり、その道程は国民が気付いたときには不可逆の縛りをかけられている公算が強い。
TPPで強く憂慮されているISDS条項(投資家対国家の紛争解決)も、内国制度の大破壊を招来する恐ろしい条約だが、一度決めたら事後修正が利かなくなるラチェット条項も極めて破壊的なリスクを帯びている。
国家戦略特区諮問会議に竹中平蔵慶大教授が加わることがいよいよ決まったが、今後の優先的な課題は雇用の規制緩和やさらなる企業減税に焦点が絞られるようだ。
前大田区議会議員の奈須りえ氏は、規制緩和を推し進めるに当たって、不可逆なラチェット規定がこの安倍型特区にも用いられる憂慮を示している。
これは実に恐ろしい話である。
安倍政権が竹中平蔵氏を中心に据えて着手している成長戦略は、“規制緩和”がキーポイントなっているが、これは日本の命運を左右するすこぶる危険な要素を孕んでいる。
TPPのISDS条項やラチェット規定などが韓国流の言い回しでは毒素条項などと言われるが、「聖域なき規制緩和」というスローガンもまさに猛毒そのものである。
だからこそ、規制改革会議で言う『聖域なき規制緩和』というスローガンは、小泉改革の『聖域なき構造改革』と同様に、非常に危険な“魔語(まご)”なのである。
魔語とは、それを信じた人々を地獄にいざなうキッカケになる言葉である。
規制緩和とは諸刃の剣である。
上手くやれば、社会全体を益し経済を賦活化する。
しかし、一方的にある利益団体のためだけに行う規制緩和は国民に大打撃を与える。
だから、規制緩和を行う主体(政府)が規制緩和の内実を、誰のためにどういう目的で行うのかを明確にしないと、国民にとって致命的なリスクをもたらすことになる。
国民はまだ新自由主義思想による規制緩和の恐ろしさを自覚していないと思う。
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK158掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。