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[真相深層]「軽」増税、業界は黙認
反対運動の先陣、スズキも「納得」 「燃費に応じ軽減」で折れる
2014年度税制改正の焦点だった軽自動車税は15年度から1.5倍に増税することで決着した。30年ぶりの増税に激しく反発していた自動車業界や経済産業省だが、与党が増税を決めた後の反応はいたって冷静だ。業界も経産省も増税を水面下で黙認していたという見方が広がっている。
流れ変えた一文
「お世話になりました」。13日、東京・永田町の衆院議員会館にはスズキの鈴木修会長兼社長(83)の姿があった。軽増税を「弱い者いじめ」と批判し、業界ぐるみの反対運動の先陣に立った鈴木氏。しかし増税決定後に国会議員のあいさつ回りで見せた表情は意外なほど穏やかだった。
軽保有にかかる税を年7200円から1万800円へ。鈴木氏は「決まった以上は納得するしかない」とコメントした。すんなり矛を収めた理由は何だったのか――。
政府関係者によると、与党が税制改正大綱にある一文を盛り込んだことで、業界に増税受け入れの流れができたという。
「『軽課』を検討する」。軽課とは燃費がよく環境にやさしい車はふつうの車より税率を引き下げるという意味だ。新規購入分の軽自動車税を上げる15年4月までに、具体的な軽減内容を決める。この一文が大綱づくりの大詰めの段階で盛られた。
スズキの軽「アルト」はガソリン車でトップの燃費を誇る。いままで軽自動車税は「エコカー減税」のような環境性能に応じた課税方式がなかったが、軽のなかでも燃費のいい車は税負担が軽く、有利になる。「『軽課』が入ってスズキが折れた」。政府・与党内にはそんな見方が広がる。
増税時期も後ずれした。当初は軽増税を来年4月から導入する案もあったが、経産省は「増税後の景気を冷やす」と反発した。最終的には茂木敏充経産相(58)が自民党の野田毅税調会長(72)と直談判。導入を「15年4月」に1年延ばすことで決着した。各社が増税に備えた商品開発を進める猶予を確保した形だ。
「ガラ軽」危機感
業界や経産省が1984年以来の増税を受け入れた背景には「軽のガラパゴス化」(経産省幹部)への危機感もある。軽は国内新車販売の約4割を占めるが「排気量660cc以下」などの規格は日本独自で、改良しないと海外で売れない。一方で税額は小型車の4分の1まで優遇され、独フォルクスワーゲン(VW)など小型車が得意な欧州メーカーから「参入障壁」と批判を浴びてきた。
政府は欧州連合(EU)と経済連携協定(EPA)の交渉中。焦点の自動車分野で日本はEUに10%の自動車関税の引き下げを求める一方、欧州の自動車業界は軽への優遇撤廃を求めていた。軽の増税は、政府がEUに関税引き下げを迫る交渉のカードとなる。
一方で、国内の税格差は縮まり、欧州車も含めた普通車と軽との競争は激しくなる。グローバル競争のなかで保護政策を守れる保証はない。軽増税は「いずれ通らねばならない道」との見方は官民双方にあった。
増税が軽という規格の見直しにつながる可能性もある。業界からは課税強化と引き換えに660ccという軽の排気量規制の引き上げを求める声が出始めた。今より大きな軽自動車をつくれるようになれば国際競争力を高められるからだ。これまで小型車はアジアの新興国でニーズが大きかったが今の軽の規格のままでは展開できなかった。
政府内でも規格の改正に前向きな声が上がる。「増税を機に欧州車と競い、アジアで売れる車をつくってほしい」(経済官庁幹部)。排気量が大きくなり、税額格差を縮小する流れが定着すれば「将来的には軽という車種がなくなるかもしれない」(業界関係者)。
軽の増税が住民の負担増につながるのは間違いない。ただ独自の規格や保護政策をとり続ければメーカーの伸びしろを縮めかねず、将来の雇用を損なう恐れもある。増税が単なる「弱い者いじめ」に終わるか、軽の成長戦略の布石となるか。官民で知恵を絞る必要がある。
(高橋元気)
[日経新聞12月21日朝刊P.2]
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