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2013年12月21日
元裁判官で現在は弁護士を務める森炎氏が
『司法権力の内幕』(ちくま新書)
と題する書を出版された。
森氏は1959年生まれで東大法学部を卒業後、裁判官に任じた。
両親が弁護士の法曹一家の弁護士である。
大学卒業後、小説家を目指したが5年の年月を経て法曹の道に入り、裁判官に任ずることになったという。
小説家を目指したというだけあって、文章力が非常に高い。
社会科学分野の無味乾燥な筆致ではなく、読者を引き込む文体に感じ入る。
『司法権力の内幕』のタイトル通り、裁判所裁判官の実態を正確に描き出している。
私などは、司法権力を考察した書籍などによる知識から、最高裁事務総局が裁判所を支配してしまっているとの観念的な捉え方をしてきた分野であるが、森氏の著作を読むことによって、より現実、真実に近い、日本の司法権力の姿を捉えることができるようになった。
森氏は、日本の裁判官が置かれている場所を、「パノプティコン」にたとえる。
「パノプティコン」とは、功利主義哲学者の代表者ジュミレー・ベンサムの提唱にかかる近代的監獄の設計思想である。
森氏の記述によれば、ベンサムは、最初は法律実務家として出発したが、刑事政策的意図をもって、パノプティコンなる「監獄の一望監視装置」を発案したのだという。
パノプティコン=Panopticonとは、
pan=all=「すべてを」
opticon=observe=「みる」
という意味で、全展望監視システムのこと。
その詳細は、1791年刊の『パノプティコン』に記されている。
パノプティコン型の監獄では、中央に配置された監視塔の周りをぐるりと囲む形で囚人棟が円形に配置される。
囚人は円形棟の狭い棟割房に閉じ込められ、房には必ず中央監視塔に向けて窓がつけられる。
この仕組みの中では、閉じ込められた囚人は、常に中央監視塔からの視線を意識しないわけにはいかない。
森氏は、
「そこでは、四六時中、食事中も入眠中も用便中も、嘆く時も笑う時も、怒る時も祈る時も、ただ単に無為に過ごす時さえも、監視されているという意識が離れない。」
と指摘する。
森氏は、日本の裁判官が位置する場所は、このパノティプコンの囚人房なのだと指摘する。
そのうえで、
「狭い房の中で、中央監視塔の視線から逃れる場所はどこにもない。そうした毎日を繰り返すうちに、人は、いつしか、規律を欲する中央監視塔からの視線を自己の内部に取り込むほかなくなる。
自分からそれに見合う姿勢や動作をするようになるだろう。」
と述べる。
裁判所裁判官の行動原理を、森氏はパノプティコンの囚人房に押し込まれた囚人の行動原理にたとえるのである。
現実に裁判官の職務を経験し、裁判所の現場で、鋭敏な感性をもって捉えた森氏の洞察は、まさに現実そのものであると思われる。
重要なことは、その裁判所がどのような役割、機能を持つ存在であるのかということである。
私たちは、教科書に掲載される民主主義制度、権力分立、憲法の規定などを踏まえて、裁判所に対して、幻想を抱いているのかも知れない。
私は、日本の警察・検察・裁判所制度の前近代性を糾弾し、その刷新を求め続けてきているが、それでも、判断の根幹には、民主主義制度に対する理解を基礎に、裁判所とは法と正義を守るための存在、人権の砦としての存在であることを、暗黙の前提に置いてきたきらいがある。
しかし、森氏は、冷徹な視線で、その根本判断を一刀両断する。
森氏は、日本の裁判所は治安維持のために存在していることを明示する。
「裁判所は、公式的には、治安維持と人権保障を両立させるための存在と言われるが、国家権力が国民の権利・自由のために身銭を切るか。
国家が刑事裁判官を公金で養うのは、治安維持のため以外あり得ない。」
と断ずる。
「刑事裁判官は、治安維持を任務とする、最初からバイアスのかかった歪んだ存在である。なにしろ、そのために公給をもらっているのだから。」
と記述する。
まさに、目から鱗とはこのことである。
何よりも重大な問題は、日本には冤罪が横行し、政治目的による「人物破壊工作」が横行していることだ。
その現実と、憲法には書かれていない、裁判所の現実を重ね合わせることによって、この国の暗い暗黒の側面が浮かび上がる。
裁判所とは現実にどのような存在であるのか。
裁判所の機能とは何であるのかについての真実を知りたい市民は、この書をまずは熟読するべきである。
日本の現実がくっきりと浮かび上がってくることだろう。
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