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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131216-00010000-kinyobi-soci
週刊金曜日 12月16日(月)16時53分配信
山本太郎参議院議員が一一月一二日付で提出した特定秘密の保護に関する法律案(以下、秘密保護法案)に関する質問主意書に対する答弁書で、安倍晋三首相は秘密指定を行なう行政機関の長について、五三もの機関名を挙げてきた。その中には外交や防衛等に関する秘密にほど遠いような機関(文化庁や公害等調整委員会、中央労働委員会、郵政民営化推進本部等)も多数ある。
呆れたのは、答弁された「特定秘密を指定し」「(特定秘密の取扱いを業務とする者に)適性評価を実施する」行政機関の長があるものとして、今年八月に廃止された社会保障制度改革国民会議が挙げられていたことだ。答弁書のチェックを担当した内閣法制局と内閣情報調査室は、すでに誤りを認め陳謝したというが、ことはそれだけで済むものではない。全閣僚が確認のうえ、内閣総理大臣名で出される閣議決定文書が質問主意書に対する答弁書なのだ。
まして社会保障制度改革国民会議は委員を首相自らが任命したもので、首相官邸に直属する行政機関だ。首相宛に答申書を出して任務を終えたことで八月二一日に廃止された。今回の誤りは、安倍首相自身がいかに答弁書を丹念に検討していないかを白日の下にさらすものとなった。
答弁書を受け取った山本太郎議員は、「すでに存在しない機関が答弁されて、驚いています。答弁書は内閣法制局が細部までチェックしてから閣議決定されると聞くが、チェック機能が働かなかったとしか言いようがない。ずいぶんずさんな話で、人権制限をともなう法案の審議がまともにできているとは思えません。内閣法制局長、さらに総理大臣自身の責任も問う再度の質問主意書を提出しました」と述べている。
誤答弁に反映されたのは、審議の不徹底にとどまるものではなく、法案そのものがきわめて不十分な検討しかされていないことをも示している。そもそも、法案の構造が自衛隊法第九六条の二(防衛秘密)と第一二二条で規定された防衛秘密を漏らした場合の罰則についての取り決め、同法別表第四(第九六条の二関係)で規定された防衛秘密の指定に関する項目を別途の法律とし、刑罰を重くしたものにすぎない。
自衛隊法の一部分を拡大して行政機関のほとんどを拘束する法規にするものだが、その具体的あり方、問題点がまったく明らかにされていない。よりわかりやすく言うなら、自衛隊のみに適用されていた「防衛秘密」の保全とそのための「罰則」システムを行政全体に押し広げることによって生じる具体的な問題、矛盾点の検討がほとんどされた形跡がないのだ。
答弁書が示した五三の行政機関の大部分が、身近な公共事業に関わっている。これらに適切な予算執行がされているか、官製談合などがないかについて市民やオンブズマンが情報開示制度を駆使して追及しているが、今後、個別の事業案件が「防衛」「外交」「特定有害活動(注)」「テロリズム」に影響のあるものと当局が認定すれば、情報の大部分が秘匿されてしまうことが予想される。
実際、サイバー攻撃の対象が電力・エネルギー供給施設や交通管制システムに向けられている時代ともなり、これを口実に行政の正常な執行をチェックする市民の活動が妨げられたり、「特定有害活動」とみなされて抑圧されたりすることも、今回の法案が成立すれば十分にあり得ることなのだ。
(注)公になっていない情報のうちその漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるものを取得するための活動、核兵器、軍用の化学製剤若しくは細菌製剤若しくはこれらの散布のための装置若しくはこれらを運搬することができるロケット若しくは無人航空機又はこれらの開発、製造、使用若しくは貯蔵のために用いられるおそれが大きいと認められる物を輸出し、又は輸入するための活動その他の活動であって、外国の利益を図る目的で行われ、かつ、我が国及び国民の安全を著しく害し、又は害するおそれのあるものをいう(法案第一二条二の一)。
(古是三春・軍事評論家、12月6日号)
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