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2013年12月15日
以下のランディ・フォーブスらのWSJ寄稿コラムの内容を詮議するつもりはない。殊更に、中国威嚇論を展開しているあたり、共和党戦争屋っぽい受けとめかたで、賛同する価値はない。しかし、バイデン副大統領が日中韓を訪問し、何を安倍政権に伝えたか、習近平やパク・クネに何を語ったかは、報道機関に流れている情報をなぞっても、会談の本当の内容は判らないだろう。ただ、バイデンが中国に強く出た形跡はない。米国が強く出ても、ハイハイと二つ返事で忠告に従う中国でのない筈。
このコラムは、巷のハイパー・ナショナリズムに傾倒している人々にとって、心地よいコラムの内容になっているのだが、日本の米国依存型ナショナリストとっては、“そうだ、オバマのやり方は生ぬるい”という点で、情緒的に苛立ちがあるのも事実だろう。しかし、米国の現在の鈍らな態度こそが、現在、そしてこれからのアメリカの立場を暗示しているわけで、それこそ忖度すれば理解し得る範囲内の行動だと思う。
TPP交渉の年内妥結も頓挫し、継続協議に持ち込むだけでも大変だった状況を考えると、事務方の調整能力云々でもなく、政治決着させるだけのイニシアチブを米国が必ずしも握っていない状況を示している。TPP交渉が、何故あれ程までに交渉内容の情報を開示したがらないのか。おそらく、情報開示をしてしまうと、アメリカのゴリ押し(逆に横綱相撲が取れない)ばかりが世界に知られ、威信を傷づける惧れがあるに相違ない。今回も、日本の外務省は、アメリカと年内妥結に向けて共同歩調を取ったが、甘利ら政治家は、必ずしも、外務省の敷いた道筋に沿っては動かなかった面がある。
その理由を明らかにするのは難しいが、各国の対米姿勢が官僚らのレクチャー内容と乖離した事実を、数多く知る事になった点では、政治家にとって有意義だったのだろう。貿易協定の量的規模に於いて、日米が組むことで、完全にイニシアチブが取れると目論んだ官僚達だが、蓋を開けてみると、日本ほど“アメリカ様一辺倒”で交渉ごとにあたる姿勢がないことを肌で感じたに違いない。日本が日米同盟で囲われ者になり思考停止している間に、アジア等々の弱小国は混乱を繰り返しながらも、その困難と闘うことで、自立の精神を身につけていたのである。
北アフリカ、中東、ウクライナ、タイなど、国家体制の選択で、暴力等々も加わり国民が争っている場面もあるが、民主的に平和裏に行われる多国間協議おいては、国連のあらゆる機関での決定のプロセスで、大国の主張が必ずしも受け入れられず、会議が迷走し、決定に至らない現象を目撃する。表向き、公正公平を原則とする民主主義推進のリーダーを自認するアメリカにとって、このような事態は、表向きに隠された戦略的思惑が実現しないことを表している。そこで、モデルケースを制御不可能な多国籍から、一定数の国々との話し合いで、成功をおさめようと試みたのがTPPの大枠なのだろう。
21世紀と云うのは、20世紀、時に第二次大戦後、そして東西冷戦構造の解体で始まった米国の独り勝ち時代を経て、世界の権力構成の再編の過渡期にあるのだろう。そして、現状を見る限り絶対的勝者がいなくなりつつある事実を、我々は見守っている。日米同盟で、絶対的勝者の地位に座ろうと考えている奇妙な政治主導者もいるようだが、まったくの勘違い以外のなにものでもないだろう。このコラムを書いた人脈に通じる人々だけなら、その日本の仮説も成り立つだろうが、どちらかと言えば、米国内では少数派に属すると判断する方が賢明だ。彼らとタッグを組んだとしても、人種の壁を突破するほどのことはない。
相対的にみると、米中が絶対的ではないとしても、おおよその世界の覇者風になると見るのが、流れ的には妥当な線だ。「米国+つかず離れずの英国・EU」対「中露+中央アジア、東欧」対「中東」。理屈上はASEANがその勢力図に加わる。無論、上記のような単純な色分けは起きないだろうが、ベースはその構造の上にある。実際には、そこに外交防衛+経済的相対関係が絡み、より一層勢力図は混沌を増していくのかもしれない。少なくとも、方向性を定めるのは、時期尚早な時代が、現在我々の前に拡がっている。答えは筆者も判らないが、見識を誇る偉そうな人々も、実は判っていない。もしかすると、世界中の中のすべての人が、その先行きの見通しを立てられないでいるのだろう。現時点で、言えることは、国の行方を固定化するような方向に舵を切ることは、慎むべき時代なのだと思う。
どちらかといえば、内向きな方向性で、内々を固める方向に力を注いだ方が得策だ。我が国が、いま採るべき道は、決めないことである。鈍らな態度が適切な選択時期なのである。例えていえば、大平正芳政権のような鈍らに徹し、モラトリアムな態度を示し、状況を見定める時節なのである。絶対に自信を持って言えることは、自国の意思自体が迷走している国家と運命を共にするような拙速を戒める時代である。にも関わらず、駄馬が先走っている現状は、すべての面で、大変危険だ。しかし当面、我々国民の側は、その無謀な暴走を傍観するしか選択肢が無いと云うのだから、何とも悩ましい。
≪ 【寄稿】アジアでの制空権リスクにさらす米国の対中外交
By J. RANDY FORBES AND MICHAEL AUSLIN
先週のバイデン副大統領の東アジア歴訪には、中国が東シナ海上空に広大な防空識別圏(ADIZ)を設定したことで急激に高まった緊張を解消する効果はほとんどなかった。日中韓に対するバイデン副大統領のメッセージの隠れたテーマは「うまくいく方法を模索しよう」 だった。米国の同盟国が明らかに期待していたのは、米国が空の無害通航権を重ねて主張し、昔から設定されているADIZに重なるような中国のADIZの設 定を拒絶することだった。ところが、米国政府は混乱したメッセージを送り、は東アジアの空における中国の一方的なADIZの設定し直しを受け入れないこと を同盟国に確信させることに失敗した。
中国はADIZを日本が数十年前に設定したADIZに意図的に重複させた。そこには日中両国政府が領有権を主張し合っている尖閣諸島や韓国のADIZの一部も含まれている。日本政府と韓国政府は民間航空会社に対し、中国が民間機にも求めた運行情報とトランスポンダー・コードの事前通知に従わないよう要請した。それとは対照的に、米国務省は米国の航空会社に対し、そうした情報を中国に提供するように指示した。
中国の挑発に対して米国が断固とした態度をとらないことが、韓国によるADIZの拡張の一因となった可能性がある。韓国のADIZは今や中国のADIZと重なる部分がさらに広がり、日本のそれとも重複している。
報道によると、日本は通常通り、中国のADIZで自衛隊機を飛行させた。米国も2週間前、中国が設定したADIZに2機の「B52」爆撃機を派遣した。同盟国との合同飛行訓練を含むこうした任務を向こう数カ月間にわたって続けることは重要な意味を持つ。
バイデン副大統領は北京で、米国は新たな状況を甘んじて受け入れつつあるというメッセージを送った。副大統領は中国と日本が危機管理メカニズムを構築することを強く促したが、もてなしてくれた中国の要人たちにADIZの撤回を求めることはなかった。新たに設定されたADIZは第一歩でしかなく、中国のそうした暴挙が今後も続くことは明らかであるにもかかわらず、そのような対応をとったのである。南シナ海のように緊張が高まっている地域が中国の次の標的になる可能性が高い。
そのため、米国政府は、海、空、宇宙、サイバー空間といった特定の国家が支配していない公共の領域への困難なアクセスを狙った中国のさらなる挑発 に対して覚悟しなければならない。ところが、米国は現在、軍事予算を削減しており、2020年代半ばには1兆3000億ドルほど削減されている見通しだ。
アジアの空で米国と日本を挑発するほど中国が自信を持ち、北朝鮮が核兵器能力を持ち、イランが核保有に向けて前進し、軍事力を立て直して再び強引になったロシアがウクライナのような隣国に圧力をかけている世の中において、現在の米国の方針は非常に無責任である。強い米国なしの世界は平和が当たり前ではなくなる恐れがある。というよりも、かなり不安定になるのは確実だ。 中国の最近の行動はいろんな意味で、米国は制空権のおかげで世界で唯一の超大国であり続けていることを思い起こさせてくれた。朝鮮戦争以来、米軍は重要な地域へのアクセスを拒否される心配もなく世界的に活動できてきた。地球上のどこであれ、米軍にはほぼ瞬時に破壊的な攻撃を仕かけることが可能だった。
今後数年間の軍事予算削減にもかかわらず、連邦議会は今のところ唯一の次世代制空戦闘機計画である「F35」統合攻撃戦闘機を支持し続けざるを得ない。その背景には、特に中国、ロシア、イランが高度な防空技術に巨費を投じていることがある。
同様に、内陸部の奥地の標的を脅かす信頼できる能力を維持するためにも、次世代長距離爆撃機計画への完全なコミットメントが不可欠である。米国は大国や核兵器能力を入手しようとしている小国による軍事行動を抑止するためにも、最大の兵器量を搭載でき、ステルス性能を持ち、敵からの攻撃に耐え得る爆 撃機を配備しなければならない。
米国には、紛争中の空域でも撃墜されずに長時間高速で飛行できるステルス無人機に投資することも求められている。南シナ海、北朝鮮、イラン、シリアなど危機をはらんだ地域が拡大していくなか、現在のシステムでは脅威を察知して反応するのに必要なすべての情報を米国や同盟国に提供できるとは思えないからだ。
こうしたことの根底にあるのは、より優れた諜報能力、監視能力と防護性が高いコミュニケーションネットワークの必要性である。米国のコミュニケー ションネットワークや衛星攻撃能力へのサイバー攻撃は米軍の作戦の有効性を損なわせかねず、中国は素早い勝利が得られると確信してしまうかもしれない。米空軍の世界的規模のコミュニケーションを維持する能力は、防衛計画おいて最優先されなければならない。
中国は国力の向上がいかに軍事能力のさまざまな側面を米国が長く支配してきた領域にまで拡大させるかということを示してきた。今のところ、中国空軍が米国の空軍力に匹敵すると考える者はいないが、米国における政治的な意志の欠如と伝統的な優位性の着実な低下が組み合わされば、2020年代には劇的に異なる環境を生み出してしまうかもしれない。そうなったら米軍は50年以上ぶりに制空権に目を向け、自分たちは本当に安全なのかと疑問に思うことだろう。世界の安定を維持する米国の能力はますます試されることになる。
(共同筆者のJ・ランディ・フォーブス下院議員――バージニア州選出共和党――は下院軍事委員会の委員長で、中国議員連盟の会長も務めている。マイケル・オースリン氏はアメリカン・エンタープライズ研究所の日本部長で、wsj.comのコラムニストでもある)
≫(WSJ日本版:寄稿コラム)
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