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共同記者発表するバイデン米副大統領(左)と安倍晋三首相=3日、首相官邸(酒巻俊介撮影)
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20131215/frn1312150729000-n1.htm
2013.12.15 大前研一のニュース時評
中国を訪問した米国のジョー・バイデン副大統領は4日、習近平国家主席と会談し、中国が東シナ海上空に防空識別圏を設けたことで高まった緊張を緩和する措置を取るよう求めた。
バイデン氏は、日本にいたときは「中国はけしからん。日本と力を合わせて毅然とした態度に出よう」と言っていたのに、いざ中国に行くと習近平氏のペースにはまってしまい、「防空識別圏設定には反対だ」としながらも、「撤去しろ」とは言えなかった。
それどころか、「中国と米国が仲良くすることこそが一番重要」とまで語った。ということで、今回のバイデン氏の行動にはがっかりした。
中国メディアも「世界の2強というのは、こういう形で関係を強化していく。米国が日本の立場を中国に対して突きつけるような時代は終わったのだ」と、鬼の首でも取ったような報道をしていた。
バイデン氏は韓国も訪問したが、訪問後の8日、韓国国防省は防空識別圏を南方に拡大すると発表した。
拡大範囲は日本と中国が防空識別圏を設定し、韓国が中国と管轄権を争う東シナ海の海中岩礁、離於島(イオド)上空などを含んでいる。日中韓の防空識別圏が一部重なることになり、3カ国は複雑な対立の火種を抱えることになった。
つまり、バイデン氏の訪問は何の役にも立たなかったということだ。やはり、太平洋地域における米国の影響力は低下したのだろう。
そんな状況の中、安倍晋三首相は、就任1年でインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイなどASEAN(東南アジア諸国連合)の加盟10カ国のすべてとモンゴルを訪れて首脳会談をしている。
来月には2度目のインド訪問を予定しているが、政権交代が確実視されているシン首相とどんなことを話し合っても、新政権になると予想されるインド人民党(BJP)はご破算にしてしまうだろう。安倍首相はインドと仲良くなると中国包囲網が強化される、と信じているようだが、BJPはバジパイ首相のころに中国と戦略的パートナーシップを組んで、むしろ米国には距離を置いた。
安倍首相としては、「いま中国に対して直接言っても仕方ない。中国の動きを封じるための包囲網を張ろう」と考えているのだろう。この戦術は悪くないと思う。
しかし、周りをしっかり固めたら中国が折れるかというと、そうはならない。まして相手国と中国との関係が強固かつ緊密である時には数回の訪問で果実を期待するのは難しい。
そもそも、中国はなぜ、この時期に防空識別圏設定をしたのか。おそらく、中国の軍部に海も空も押さえ込んでいこうという大国意識が浮き上がってきたからだろう。そして、習政権はそれを抑えることができない。
中国の特徴は、一度言い出したら引っ込めないことだ。米国が説得しても引っ込めないし、日本が周辺国と包囲してもどこ吹く風。それがこの問題の難しいところだ。米国がもっと毅然とした態度を取ってくれれば、共同管理のような落としどころもあるだろうが、日和見的なバイデン訪問ではむしろ事態は後退した、と見ておかなくてはいけない。
■ビジネス・ブレークスルー(スカパー!557チャンネル)の番組「大前研一ライブ」から抜粋。
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