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安倍総理、賃上げ企業2ケタ発言の嘘(大貫 康雄)
http://no-border.asia/archives/17499
2013年12月14日 DAILY NOBORDER
オリンピック招致委員会で、福島第一原発の汚染水が制御下にあるようなことを言い、世界の批判を招いた安倍晋三総理。その後も彼の発言には首をかしげることが多い。
安倍総理は10月16日、臨時国会で「今年の春闘について連合の集計結果によると、ベースアップを行う企業の割合が5年ぶりに2ケタになりました」と発言したと伝えられた。しかし、連合はそんなことを一度も言っていない。つまりこれも嘘である。
また、この件で連合が安倍発言を批判したという話もない。
それを知っていてか安倍総理はその後、企業側に公式の席で基本給の引き上げを要請している。三権のひとつ、行政府の長であり、かつ立法府で圧倒的多数を占める巨大与党の長でもある安倍総理が、なぜ企業に遠慮がちに要請するのか!? 何か弱みでも握られているのだろうか!?
国民の多数から批判されている特定秘密保護法を強行成立させるよりも、労働者地位強化の法律を強行成立させるべきだろう。
連合は連合で、そんな安倍発言に期待したのか、来年の春闘で基本給1%の引き上げを、また1%を目安にした格差是正・配分の歪みの是正を要求する方針を決定した。
生活の向上を求めて闘う労働組合の存在感がマスコミ報道から消えて久しいが、連合の今回の要求も極めて慎ましく控えめな方針だ。
なぜならば、21世紀に入ってから、経団連参加企業の経営陣の報酬はすでに最初の10年で2倍以上に増えているからだ。NHK経営委員長経験者には、日給換算で100万円という経営者もいると聞く。企業経営が悪化していれば経営陣の報酬が倍増する余裕はないはずだ。(大)企業の利益剰余金(内部留保金)は今や300兆円を超えるとも指摘されている。
一体、どこまで厳しい国際競争力にさらされているというのだろうか!? 経済研究所の姿勢によって諸外国の企業に比べ、多いか少ないかは見方が異なるが、要するに企業には資金が十分にあるのだ。それなのに正規社員は平均所得も労働者全体での割合も減り、派遣労働が増えるばかりだ。
企業がこうした経営状況であるにもかかわらず、政府・与党の来年度予算案はいくら控えめにみても企業優遇、個人冷遇の印象が拭いきれない。消費税率引き上げで、一般消費者は余計な支出を余儀なくされるが、輸出企業には輸出した分還付税が多く入る。
企業にのみ課した期限付きの東日本大震災復興の特別増税を1年前倒しでなくすのも企業に配慮したためだ(一般国民からは、所得税の1%上乗せ徴収を長期間続けていくのにである)。
それどころか大半の企業が払っていない法人税さえも一層減税すること考えている。企業の交際費も半額税制控除の対象になる。バーや高級レストラン、夜の町などは歓迎するだろうが……。
今や大企業が望む円安で、消費者物価は上がるだけになり、国民生活への影響が必至の状況になっている。一体いつまで、どこまで大企業優遇政策を進めるのか。いつになったら政治本来の国民生活重視の政策を進めるのだろうか?
2009年の政権交代時に鳩山友紀夫総理が、“この十数年で一般家庭の年収が“平均100万円減っている”などと言っていたが、基本的にその通りだ。
振りかえってみよう。歴代自民党政府は折に触れ“企業の国際競争力の強化が日本経済に必要”と説明し、その都度、税制や補助金・助成金で企業優遇策を続けてきた。企業業績は概して好調に推移してきた。富裕層減税も進めてきた。
他方、一般国民に対しては健康保険料の引き上げ、年金支給水準の引き下げ、生活保護受給者への現場での締め付けなどを行ってきた。
企業の負担を軽くする一方、その分国民負担を増やして税収を得ようとの発想だろう。また企業が効率よく労働力を確保できるよう派遣労働法の改悪を続けてきたが、いまさらに派遣労働法を緩和し、企業の雇用解雇をやり易くしようとしている。労働環境の悪化を食い止めようともしないようだ。
これでは貧富の格差を広げ、職場での女性差別も晩婚、少子化に拍車をかけるだけであり、日本社会が元気をなくすだけである。派遣労働者が簡単に解雇され、眠る場所もなくなって寒い中を路頭に迷う事態が再び起きない保証はない。
こんなことを何年も続けてきてGDPの6割を占める国民消費が増えるわけがない。景気が回復するわけがない。連合は、労働者の生活水準の向上が日本社会に貢献することを自覚し、人々の苦しみを理解し怒りの声をあげるべきである。
安倍氏が横浜まで出かけて演出した待機児童の解消(保育所増設、保育士の増員・優遇も伴う必要がある)を含め女性雇用の促進、女性差別の解消も、ほとんど実行されていないのが現状だ。
2014年度の春闘、政府の企業より政策の限界が明かになった以上、日本の景気浮揚の観点からも連合はもっと強硬に堂々と政府・経営側と対峙し、日本経済の活性化のために堂々と労働者の待遇改善を要求すべきである。
またマスコミは、組織の大きさを活かして全国で調査をし、安倍政権1年の経済・社会政策の結果、少なくとも傾向を報じるべきである。鳴り物入りで宣伝したアベノミクス、欧米のメディアであれば当然、1年後の検証をする。
【DNBオリジナル】
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