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http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/509879.html
政府はこの国をどうしようと考えているのか。
幅広い犯罪を対象とし、謀議に加わるだけで処罰する法改正が行われれば結末は目に見えている。通信傍受の際限のない拡大をはじめ、捜査機関の権限の肥大化だ。
監視強化で市民の基本的人権も脅かされる懸念から容認できない。
政府は、殺人など重要犯罪を対象とする共謀罪新設のため組織犯罪処罰法改正の検討に入った。来年の通常国会の改正案提出を見送り、時期は慎重に見極めるという。
いまなお、共謀罪新設を考えているのかと驚かされる。
政府は2003年以降3回、改正案を提出して廃案となった。2回は衆院解散に伴う廃案とはいえ、社会に強い懸念と反対の声を呼び起こした経緯を忘れてはならない。
国際的要請に加え、テロや暴力団などの組織犯罪を未然に摘発するのに必要だと政府は説明してきた。
しかし、現行法でも対応できる半面、市民団体や労働組合にも適用される危険性など数々の問題点が国会審議などで指摘された。
なのに再提出検討とは国民と国会への愚弄(ぐろう)にほかならない。即刻断念すべきだ。特定秘密保護法のように世論の反対を無視し、強行突破を考えているのならとんでもない。
過去の改正案は4年以上の懲役・禁錮の罪が対象だ。殺人や強盗、窃盗など600以上が該当し、実行行為がなくても罪に問える。
わが国の刑事法は犯罪の実行行為を事後的に処罰することを原則とし、例外的に一部犯罪に実行行為なしに処罰できる規定を設けている。
殺人や強盗などには下見だけでも処罰できる予備罪が、自衛隊法や爆発物取締罰則などには共謀罪もある。日弁連によると、こうした規定は約60の犯罪に設けられている。
原則に反する規定は増やすべきでない。特定秘密保護法にも共謀罪があるが、これは法律全体が論外だ。
政府は今回、共謀罪をテロ関連や密入国などに限る方向だというが、問題の本質は変わらない。
政府はテロなど国際犯罪対策として国連が採択した条約の批准に共謀罪新設が必要とするが、疑問が出ている。条約の要請は「(予備罪などの規定で)既に十分に整備されている」(日弁連)などだ。
共謀罪との関係で看過できないのは法制審議会の部会で検討されている通信傍受の幅広い対象拡大だ。薬物犯罪などの現行対象に窃盗や詐欺などを加える案が浮上している。
憲法が保障する「通信の秘密」が脅かされる懸念が拭えない以上、安易な拡大は慎むべきだ。国家の役割は市民を監視することではない。
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