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2013年12月10日(火)町田 徹 現代ビジネス
特定秘密保護法案の可決強行騒ぎで政治が揺れる中で、NHK会長の松本正之氏が退任の意向を表明した。
松本氏は受信料の引き下げとNHK職員の賃下げを実現した功績を評価されており、通常ならば続投を要請されてもおかしくない状況だった。
しかし、すでに、松本更迭を目指す安倍晋三政権に会長の人事権を持つ経営委員会を掌握されているため、首相のNHK会長人事への介入≠ニいう悪例を招く前に、機先を制して身を引いた格好だ。
これによって目先の混乱は回避されるかもしれないが、事態はむしろ悪化している。安倍政権が「言論の自由」の制約に向けて大きな布石を打ったと言わざるを得ないからだ。
■更迭や解任避け、自ら身を引く「功労者」
「(来月24日までの)任期満了後は経営委員会でいい方を選んでいただくのがいい。私は(その候補に)入っていないと思っている」
NHKの松本会長は先週5日の定例会長会見でこう語り、続投の意思がないことを明らかにした。
会長人事を巡っては、任命権を持つ経営委員会が、候補者の一人として松本会長の業績評価を行ったうえで、他の候補者と比較し、最終的な絞り込みを行う手はずになっていた。
前任者が迫られた満額ではないとはいえ、松本会長が、これまで歴代会長の誰も実現できなかった受信料の引き下げやNHK職員の報酬の引き下げを実現した功績は大きい。
が、8月の本コラムで新聞やテレビに先駆けて指摘したように、再任に向けて、松本氏は四面楚歌だった。というのは、安倍政権が日銀、内閣法制局長官人事でもみせたように、民主党政権が任命した主要な公職人事の刷新を最優先しているからだ。
すでに、安倍内閣は政権取得後に、12人の経営委員のうち10人を承認した。10人には、首相にも太いパイプを持つ浜田委員長ら一部の委員が再任されたほか、思想的に首相に近い首相自身の個人的な知己が新たに選任された。このため、首相の意に沿う人物を会長に据えるのに必要な9人の賛成票の確保が容易とみられていた。
2011年の会長人事の混迷を受けて、松本氏擁立に奔走した鉄道会社幹部と、松本氏の軋轢も少なからず影を落としたとされる。こうした状況を踏まえて、更迭や解任という事態を招いて再び混乱が起きる前に、松本氏は自ら身を引いたものとみられている。
■NHKは一段と萎縮、他メディアに伝染する恐れも
深刻な問題は、安倍政権が第1次安倍内閣時代も含めて、同政権に批判的な論調を掲載したメディアと再三、対立を繰り返してきたことだ。
首相は現状のNHKの論調にも否定的であり、一部の記者を除いて取材に非協力的という。それだけに親安倍政権的な報道を期待して、NHK会長の首の挿げ替えを狙っていたと囁かれている。
一方、中立を問われるメディアとして見た場合、NHKにはこれまでも新聞、民放、雑誌に比べて構造的な欠陥があったのは事実である。
一般の有料放送と違い、テレビ受像機を保有しただけで、番組そのものは見なくても強制的に視聴者に受信料を支払わせる「公共放送」の特権と引き換えに、予算、決算、事業内容などで政府、国会からの監視を受けてきたからだ。国民の目から見れば、政治的に中立、公平なメディアとは言い難い状態だったのだ。
しかし、今回行われている会長人事の介入は、そうしたNHKを一段と委縮させて、政権や政治への批判を公然と自己規制するメディアにNHKを追い込むリスクがある。自己規制が、NHK以外のメディアに伝染する恐れも否定できないだろう。
■情報コントロール狙う、特定秘密保護法との「危険な二重奏」
さらに、ここでどうしても関連を連想せざるを得ないのは、安倍政権が悪名高き「特定秘密保護法案」の採決を強行して可決・成立させた問題である。一般法としての同法のような法律の必要性は理解できない話ではないが、今回の法案は具体的な中身が問題だらけと言わざるを得なかった。
国の機密を漏えいした公務員に対する刑罰を、現行の国家公務員法の守秘義務規定と比べものにならないほど厳罰化するだけでなく、官僚の恣意的な「秘密」の指定を可能にし、60年間という超長期にわたって国民の監視を免れ、さらには国民の監視の目にさらされる前に廃棄までしかねないという内容だったからである。
国民の「知る権利」をないがしろにしかねないと、学会、言論界などの各方面から、法案成立後も廃止を求める声があがっているのが現状だ。
実は、この特定秘密保護法とNHKの会長問題は、情報の発信源と伝達の担い手の両方をコントロールする手段を権力者に与える危険な二重奏の様相を呈している。
消費税増税時の軽減税率の対象という特権がほしいのか、それとも歴代政権のあまりのお粗末さに政権批判をすること自体に疲れてしまったのか。メディア側の真意は不明だが、発足以来、安倍政権に対して、新聞、放送、雑誌の大手メディアは控えめな対決しかして来なかった。むしろ、アベノミクスを面白がって持て囃すなど無責任な報道が目立っていたぐらいだ。
しかし、NHK会長人事はNHKだけの問題ではなく、マスメディア全体の問題だ。これ以上のやりたい放題の容認は、日本の行く末を誤らせるのではないだろうか。
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