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2013年12月06日
自民党が5日の本会議強行採決を見送った。あまりにも強行過ぎて、国際世論上も好ましくないと云う杞憂が芽生えているかもしれない。明日6日、会期末を迎えるだけに、6日午前に本会議可決・成立を目指すのだろうが、会期切れの日に、世界に類を見ない北朝鮮並の法案を通過させるのは目立ち過ぎ、会期を9日まで延長しておいたほうが目立たない等と、驚くほど姑息な次元で物事を考えているようだ。 *実は、官邸にとって、議院運営とは異なる次元での悩みが、二つばかり浮上している。一つがバイデン副大統領の暗示的言葉が、アメリカと云う国の現状の複雑さを感じさせた事である。もう一つは、株価が奇妙な形で下落傾向を強めていることだ。その上、原油が再び激しく上昇している。株価の下落と秘密保護法案に間に、連関的関係はなさそうに見えるのだが、実は“さにあらず”なのだ。どういうことかと云うと、安倍政権が提出している秘密保護法案の中身を、世界の金融勢力は吟味するに従い、日本市場への過度の参加はかなりにリスクを伴うかもしれない、と思いはじめた点にある。安倍がNY証券取引所で講演し、≪Buy my Abenomics(アベノミクスは買いだ)≫と9月25日に発言していたが、民主主義の態をなしていない日本政府の動きへの警戒が強まったものと思われる。
バイデン副大統領と安倍会談の不都合な事実は、勿論闇。特定秘密である。おそらく、米国は中国の防空識別圏の撤回など要求出来る立場ではない。中国は米国債の買い入れをストップし、逆に売りに出ているくらいだ。その肩代わりを日本が出来ると云うのか?出来るわけがないだろう。今、中国とことを構える時期とは、到底思えない。おそらく、我が国は、中国と戦争をするつもりもない。あまり、国際世論を喚起するような言辞を弄していると、のっぴきならなくなるのは、貴国の方である。その点を、十二分に留意して貰わないと、日米同盟不要論を抑え込むことが難しくなるよ。そんな話がなされた可能性は充分ある。つまり、安倍晋三の「勇ましい言葉」は命を縮めるのだから、程々に融和的外交を展開することを、トモダチとして助言しておきますよと言われたのではないかと推測する。ネオコンや外務省右翼系官僚の口車に乗り、総元締めの代理人から、印籠を渡された可能性も捨てがたい。さて、今後の展開は、結構面白いものになるやもしれない。
週刊金曜日ニュースに掲載されている「特定秘密保護法案 徹底批判(佐藤優×福島みずほ)」その3と4を引用、5は明日。本日掲載分の中身も濃いのだけど、佐藤優が吉野文六氏との会話の中で語られた ≪佐藤 吉野さんは非常にしっかりしています。それはやっぱりナチスドイツの崩壊を彼自身、ベルリンの日本大使館にあった壕のなかにいて見ていますからね。彼は決死隊で首都のベルリンに残されたんですけれども、当時の大島大使はドイツ南部のバードガシュタインに逃げちゃう。それで、大島大使に「酒とつまみを持ってこい」と言われて、吉野さんは運転手と一緒に機銃掃射を受けながら二回往復しているんですよ。「佐藤くん、外務省というのはどういうところかあのときよくわかった」と言っていました(笑)。勇ましい人ほどいざとなると信用できないと。≫ココの部分は、今政権で栄華を満喫する首相にも当て嵌まるのだろう。
≪ その3
日本版NSCは戦争指導最高会議
福島 特定秘密保護法案と車の両輪にたとえられる国家安全保障会議(日本版NSC)の設置法が、残念ながら一一月二七日に成立してしまいました。
佐藤 私は日本版NSCが本丸だと思っているんです。国家安全保障会議設置法の成立が安倍政権が本当にやりたいことで、特定秘密保護法は実は付属品なんだと見ています。この国家安全保障会議がなにをやるか。日本版NSCは「地震とか災害が起きた時の対応だ」と政府に煙幕を張られてしまって、みんな勘違いしています。
福島 今の体制でも災害時の対応は十分できます。
佐藤 重要なのは今回常設される「四者会合」(首相、官房長官、外相、防衛相)です。これはなにかというと、日本が戦争するかしないかを決める最高意思決定機関です。つまり統帥権(軍隊の最高指揮権。明治憲法下では天皇の大権と規定され、一般の国務から独立するとされた)の発動をするところなんです。
戦争をする必要があるから、それに付随して戦前の軍機保護法と国防保安法にあたる特定秘密保護法が必要になってくるのです。国際社会も「日本は戦争をできる体制の国にすでになっていて、それを立法で追認している」と見ています。
福島 災害対策では九大臣会合もあります。それだけの数の大臣を集めるのは日程調整が困難だから四者会合が必要だというけれど、調べてみると閣議決定の前に会議をやっているので、人を集めるのは難しくないんですよ。
佐藤 状況によっては持ち回りでやればいいわけですからね。
福島 それから四者会合も実際は行なわれていることもある。わざわざNSCで四人の会議を常設し、国家安全保障局をつくって、人員を置く必要がない。なんのためにこれをやるのか。それはやっぱり、ここで、戦争をするかしないかを決めるっていうことなんでしょう。
佐藤 そう思います。そして、安倍内閣は「積極的平和主義」を掲げています。積極的平和主義と言っても、国際法学者やリベラル派が言う積極的平和主義とは意味が違います。伊藤憲一さんという青山学院大学の元先生がいるんです。もともと外務官僚です。この伊藤さんが 『新・戦争論――積極的平和主義への提言』という新潮新書を出しているんです。安倍内閣の「積極的平和主義」は、この発想です。要するに、戦争が違法化されつつある状態においては、米国を中心とした世界的規模での警察活動が積極的平和主義なんだというのです。
福島 ほう。
佐藤 湾岸戦争のようなものに全面協力することが平和を作ることなんだという意味なんです。これ、戦争しろっていう意味なんですよ。『新・戦争論』で伊藤さんは次のように主張しています。
二〇〇三年三月二〇日に開戦したいわゆる「イラク戦争」で、結果的にイラクに大量破壊兵器が存在しなかったために、米国の行動は越権行為であると世界世論のかなりの部分から批判されることになったが、国連決議を実行するために行動した米国を批判することは大局的判断を見失った大きな誤りである、というのです。(同書一五〇〜一五二ページの要旨)
福島 積極的平和主義そのものも根本的に批判しないとダメですね。
佐藤 そうなんです。だから積極的平和主義がなにを指すのかを政府の側に定義させないとダメですね。
福島 なるほど。
佐藤 一一月一、二日に、日露間の2プラス2。防衛相外相会合が行なわれたんですが、そこで岸田文雄外相が積極的平和主義の説明をしています。だから「積極的平和主義ってなんなんですか。伊藤憲一さんの言う積極的平和主義と同じことなんですか」って聞くと非常に面白いと思いますよ。
福島 戦争を開始することに関して言えば、自民党の日本国憲法改正草案には戦争を開始するときの規程がないんですよ。だから宣戦布告をしない。国会の事前承認も必要としていない。これはどうなのかと疑問に思っていましたが、つまり、この日本版NSCの四者会合の構成員である外務大臣と防衛大臣、官房長官、総理大臣で戦争開始を決めるのですね。
佐藤 そういうことです。戦争指導最高会議なんですよ。ここにあるのは統帥権なんです。これまでは戦争しない国だから統帥権はないということになっていた。国家安全保障会議(日本版NSC)の設置法は、統帥権の独立を担保する法律ですよ。そして、特定秘密保護法という技術法のところで起こりうる問題を処理しようとしている。ところが根っこはNSCで、これができることによって国家の構造がガラッといま変わろうとしているのです。
福島 要するに戦争をする国になる。特定秘密保護法とNSC法で原発推進・戦争遂行国家にするということですよね。そして、次に国家安全保障基本法を作ろうとしている。
佐藤 それを一番ハッキリわかっていて、きちんと言っているのが保守派の論客であるキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦氏(一九五三年〜)ですね。彼も外交官出身で安倍首相のブレーンです。
ロシア課長のキャビネットの中身
福島 実は、NSC設置法と特定秘密保護法に関して言えば、この二法ができることによって、防衛省が外務省に好きなように使われることになると言われているんですよ。
佐藤 まさにそれは正確ですね。外務省が絵を書いて、防衛省が行く。乱暴な言い方をすると「偏差値順」という発想ですよ。
福島 まあ(笑)。
佐藤 偏差値順に決めましょうと。米軍普天間飛行場の移設問題だってそうでしょう。外務省は一歩も二歩も後ろに 引いていて、普天間で何かあって辺野古の移設がうまくいかなくても日米関係に悪影響がないようにしましょうねと。それで「防衛省に行って来い、やれ、お国のためだ」と命令する。こういうところに外務官僚の質の悪さが表れているんですよ。そうすると旧内務省である警察は面白くないわけですよね。そうすると、 適性評価のところで外務省に手を伸ばしてくる。
福島 「あいつはワインをガバガバ飲んでいる」というようなことを言うわけですね。
佐藤 そういうことです。外交官たちが高級レストランでロシア人や中国人と飲んでいるとするでしょ。公安警察官たちはその間、薄汚いライトバンかなんかで店の前に停まって、ジャンパー着てアンパンかなんか食いながら、ずっと会食の様子などを見ているわけですよ。 「このやろう、いつかしめてやろう」と、ふつう思いますよね。こういうレベルの喧嘩が結局、国の構造全体をおかしくする。だから彼らを逆にグーッと握って、コントロールするのが政治の仕事なんですよ。
福島 はい。でも政治家は、特定秘密保護法による処罰の対象にはなっても、秘密をコントロールすることがまったくできません。だって、秘密に触れないのですから。
この点についていくつか議論しましょう。外務省アメリカ局長として沖縄返還交渉で日米密約にかかわった吉野文六さん(一九一八年〜)に私は会いました。 彼は外務省に入省し、一九四一年五月にドイツに着任。そのままベルリン陥落までドイツに勤務しました。つまり、ヒトラー政権の崩壊を間近でみています。だから、私の質問にも歴史の証人としてきちっと話をしてくれました。
二〇〇〇年五月には、我部政明琉球大学教授と『朝日新聞』が米公文書館で日米密約を裏付ける文書を発見し、報道していました。そして〇六年二月、『北海道新聞』の取材に吉野文六さんが日本側当事者として密約の存在を初めて認めました。そこで参議院の予算委員会で私は「密約はあるか」と質問したら、当時の小泉純一郎首相、安倍晋三官房長官、麻生太郎外務大臣らは「密約はありません」と答弁したのです。
最近もまた行政交渉したら、役人たちは「密約はありません」と答えるんです。日米密約をスクープし、国家公務員法一一一条(秘密漏洩をそそのかした罪) 違反で逮捕され、有罪判決を受けた元毎日新聞記者、西山太吉さん(一九三一年〜)の怒りは大きい。日本では重要なことは外に出ていないと出ない。全部米国発で「こういうのがあるじゃないか」と公文書が出てくる。 米国から公文書が出てきて、当時担当だった局長が「これは自分の書いたサインで、こういうものだ」ときちっと説明をしても、政府は否定するわけじゃないですか。
佐藤 ええ。
福島 西山太吉さんの裁判では一審も二審も、最近やった情報不開示の問題の情報開示請求でも「密約はある」と裁判所が認定するんですよ。いくらなんでも「密約はない」とは裁判所は認定できない。
私が特定秘密保護法が成立した時に問題だと考えるのは、ぺったんぺったんと判子が簡単に押され、「これは秘密だ」と秘密が膨張していくのが一点。もう一つは、本当に重要なことは「特定秘密」の指定すらされず、闇から闇へ隠し通していくことです。
佐藤 秘密指定すらしないというのは、本当の秘密を守るためにときどき取られる手法です。
福島 ないことにする。だから、ないものは秘密指定ができない。
佐藤 行政文書に関しては、官僚の手書きのメモでも、公務で使えば私的なメモではなく、公文書公開の対象となりますからね。しかし実際の運用は違います。私もよくやりましたけれども、本当にやばいものは決裁書や報告供覧にしないで、メモにして回しました。
福島 やはり、外務省ではそうですか。
佐藤 そうです。一度、非常に機微に触れるメモの改竄文書が鈴木宗男さんの事件で流出したことがありますよね。これは私が起案したものではないのですけれども、北方領土交渉に関するメモで、共産党に流れました。
福島 二〇〇二年ですね。
佐藤 ロシアのパノフ大使(当時、以下同)とロシュコフ次官、外務省欧亜局長だった東郷和彦さん、鈴木宗男さんの四者会談の内容で、「こういうふうにして国を売っているんだ」という形で流れました。共産党の志位和夫委員長が三月一九日に会見しました。
福島 「会談記録は、対ロ領土交渉で、二重交渉がおこなわれており、それが現実に日本外交をゆがめていたというきわめて深刻で、重大なものである」などと非難しましたね。
佐藤 あのオリジナルの文書は八枚なんですけれども、共産党に届いたのは改竄されていたので七枚でした。そしてロシア側が言ったことが、東郷さんの言ったことに改竄されていた。ああいう公文書じゃないメモが外務省にはたくさんあるんですよ。
福島 それは、公文書としてきちんと管理して一定期間後に公開すべきですね。
佐藤 同感ですが、情報公開が制度化されることによって逆の現象が起きています。今までは極秘無期限でずっと取っていた書類を五年でシュレッダーにかけるようになっている。書類廃棄励行っていうのを始めたんです。情報の保全という点からすると非常に問題なんですよ。今は昔みたいに「文書庫が足りない」という言い訳は利きません。電子文書(PDFファイル)化すればいいだけの話ですから。
福島 そうですね。特定秘密保護法の成立でどうなるかというと、「特定秘密」の指定は五年ごとに更新するが、五年経って公文書館に行かないものは全部廃棄しちゃうと思うんですよ。時間が経って「密約はどうですか」と質問しても、「そういう文書はありません」と言われてしまう。
先ほども説明しましたが、行政交渉で「三〇年経って政府が同意すれば公開すると言っているが、じゃあ二九年目に廃棄していたらどうなるか」と聞いたら、官僚たちは「それは仕方ないですね」と答えるんです。
佐藤 そうなると思います。二〇〇一年春に東郷和彦さんと話した時に「とんでもない話をある記者から聞いた。どうも日米関係の密約関係の文書を外務省はシュレッダーにかけたらしい」と聞いたんです。東郷さんは具体的な外務省幹部の名前を挙げて「奴らはこんなものが あると後腐れがあると思ってシュレッダーにかけたんだ」と怒っていました。東郷さんの父親である東郷文彦・元外務事務次官は密約に携わっていますから、お父さんの作った文書もシュレッダーにかけられた文書に入っているはずだと。
福島 あきれはてますね。
佐藤 要するに、外相だった田中眞紀子さんが来て、「これは出せ」とか言われて表に出たら大変になるということで捨てたんだろうということです。
私も心配なので、東郷さんに「ロシア関係の書類は大丈夫ですか」と聞きました。ロシア関係の書類は、公のきちんとファイルされているものとは別のものがあるんです。ロシア課長席の横には鍵のかかる白い色の四段キャビネットがあって、そこの中には誰がロシア人女性とトラブルを起こしたとか、スパイとの接触 があるとか、表では存在していない、いろんな秘密交渉のメモが入っているんですよ。
福島 そうなんですね。
佐藤 そのキャビネットの文書はロシア課長をやった人間だけが見ることができる。だから自分のスキャンダルがあるとシュレッダーにかけちゃうわけです。
福島 それはひどいですね(苦笑)。
佐藤 そうするとロシア課長をやった人間は、履歴が綺麗になっていく。そしてそれ以外の人間の秘密を全部握っているわけです。外務官僚だけでなく、ロシアに来た政治家たちの秘密もです。おそらく中国課も同じようなシステムだと思います。だから人事課の人事権が及ばない。私、実務で連中が何を企ててどういうふうにやっているのをよく見ていますからね。今でも相当むちゃくちゃなことをやっているところに「特定秘密」というものを作ったらどうなるか。その光景が容易に目に浮かぶんですね。
盗聴が事実上の全面解禁に
福島 米国はとんでもない国で、世界中で盗聴をしています。一方でエドワード・スノーデンさん(米国家安全保障 局〈NSA〉元局員)みたいな人が内部告発したり、あるいは公文書館から一応、公文書が出てきたりする。でも日本の政府の腐りようはすさまじい。米国から 公文書が出てきて、外務省の担当者が認めても密約はないといまだに言い切る厚顔無恥さです。そして、繰り返しますが、問題は「秘密指定すらしていない秘密」がいっぱいあることです。実は、「秘密指定すらしていない秘密」の方に歴史の真実が隠れている。けれどもそれは闇から闇へ葬り去られるんですよ。
佐藤 それだから本当に重要なことについて、政府高官ですら知らないということがよくあります。日韓で領有権が争われている竹島問題なんか、相当深刻になっています。引き継ぎがなされていない。
福島 まったく同じ意見です。日米密約などについて、社民党党首だった村山富市総理大臣(当時)に外務省は説明していません。秘密について説明を受ける大臣と教えられない大臣、秘密を引き継ぐ人と引き継がない人が出る。情報が、歴史的にどういう役割を果たすかではなく、非常に個人的なレベルで動く。そして、ごみのようなものも含めた山のような「特定秘密」が出てくる。でも本当に重要なことは実は秘密指定すらされない。
佐藤 よくある話です。特定の人の頭のなかと、その人の手帳のなかに記号化されて入っている。本当の秘密についての話ではよくあります。
福島 そのことが引き継ぎもされなければ歴史的な検証もできない。
佐藤 ここで問題なのは、交渉する相手国側が記録を作っている場合が多いということです。そうすると「こういうことがあったじゃないか」と相手に言われた場合に、交渉が相手ベースになっちゃうんですよ。密約を抹消するのがどうしてよくないかというと、相手は持っているからです。「合意は拘束する」は国際関係の原則です。約束している場合でも、その時の記録や双方の立場の違いは必ずある。その記録がないと、向こう側のペースに乗ってでしか交渉ができない。
福島 西山太吉さんは、沖縄返還時の日米密約が、米軍への「思いやり予算」支出に発展していくと分析しています。
佐藤 吉野文六さんも同じ認識です。沖縄返還協定に出てくるこのカネ自体に積算根拠はないんだ、と吉野さんははっきり言っていますからね。
福島 吉野さんのオーラル・ヒストリー(聞き取り)の保存はきちっとやらなければならないと思います。
佐藤 吉野さんは非常にしっかりしています。それはやっぱりナチスドイツの崩壊を彼自身、ベルリンの日本大使館にあった壕のなかにいて見ていますからね。彼は決死隊で首都のベルリンに残されたんですけれども、当時の大島大使はドイツ南部のバードガシュタインに逃げちゃう。それで、大島大使に「酒とつまみを持ってこい」と言われて、吉野さんは運転手と一緒に機銃掃射を受けながら二回往復しているんですよ。「佐藤くん、外務省というのはどういうところかあのときよくわかった」と言っていました(笑)。勇ましい人ほどいざとなると信用できないと。
福島 西山太吉さんの事件も奇妙で、検察官は一審で控訴するときに「密約はない」と言っているんですよ。じゃあ密約はないにもかかわらず、なぜ有罪になったのか。あの書類が出たことに関して責任があるってなるんでしょうね。
佐藤 密約じゃなければ秘密だと……。
福島 密約はないと言いながら、彼の有罪の理由はわからない。
佐藤 岡田克也外相の時にやった外務省の有識者懇談会による調査結果も、外務省内の調査結果も、非常にいいかげんな話でしたよね。
福島 読めば読むほどよくわからなくなってしまう。
佐藤 最初から「密約はない」という結論をつけると決めてやった調査ですよね。ただ、あの人たちには本当にないように見えるんですよ。要するに、秘密っていうのは自分たちが決めたものが秘密であると考えています。では、なにが密約なのかと考えると、密約っていうの は戦後の外交においてはやらないことになっている。だから密約はあるはずがない。あの人たちはそういうふうに思うとそう見えてくるんですよ。
福島 ただ、密約はないと言っても、米国で公文書が発見され、吉野さんの証言がある。どう考えても物証と人証がある。だから裁判所は、密約の存在を認定するんです。
佐藤 裁判の発想と官僚の発想は違うわけですよね。官僚からすると、判決はノイズ(雑音)なんですよ。
福島 裁判所では一審二審とも「密約はある」と認められているわけですよ。しかし今の政府は「密約はない」と言い張る。
佐藤 裁判所の言うことなんか聞く必要がないというのが本音でしょうね。私の裁判で争いになっているのは、支援委員会の協定。その協定で、旧ソ連諸国の支援にその金は使えるんだとなっていた。じゃあそのソ連の改革支援というなかで、イスラエルに代表団を派遣したことが協定違反であるというのです。その協定違反の申請を決済した理由は、「佐藤の後ろには鈴木宗男がいて逆らうと怖かった」というのですね。
福島 そんなことで決済をねじ曲げるなら、鈴木宗男さんより怖い外国との交渉なんかできっこありません。
佐藤 それでも、「鈴木宗男の圧力から自分の身を守るためにはサインするしかなかった、緊急避難だった」という構成になっているわけですよ。
ところが外務省は公判になってからその議論をひっくり返すわけです。決裁書に書かれている内容についてサインしたのは、ギリギリだけど適法で問題ないと言う。決裁書に書かれている通りだったらいいが、佐藤たちが作った決済書にウソが書いてあったから外務省は騙されたんだ、と変わった。それで検察と外務省の間で激しい闘いになるんです。
福島 筋書きが違っちゃったわけですね。
佐藤 そう。外務省は佐藤による被害者であるとなる。外務省は途中から決裁にはまったく問題がないという立場に変わった。それで今度は東郷さんが証言台に出てきて「いや、決裁書の内容は事実ですよ」と証言する。「決裁にも問題がない」と。こういう三つの立場が出てきて、ごちゃごちゃになったわけです。
福島 「秘密」がらみの裁判はそういう争い方になりますね。自分の都合のいいようにねじ曲げる。そして、特定秘密保護法が成立するとさらに大変なことになる。何を元に争っているかがわからなくなっちゃうんですよ。
佐藤 秘密については言えないと……。
福島 戦前の軍事法廷が何を争っているかさっぱりわからないのと同じになります。
佐藤 毎回の裁判が2・26事件のときの軍法会議と同じになるわけですね。しかも秘密法廷でやられるかもしれない。
福島 もう一つは、西山太吉さんの事件がそうであるように、「これは本当に秘密とすべきものか国民が知るべきものか」という点ではなく、「取材の手法」という点に論点が移ってしまうんですよね。
佐藤 本来は取材方法論とは別の話なんですけどね。記者なんていうのは盗んで情報を取ってきたって、脅しで情報を取ってきたって構わないわけです。それが真実かどうかっていうことだけを問われる存在です。
福島 そうなんですよ。BBC(英国放送協会)などは潜入して情報を取っている。それなのに「国民の知る権利のために必要だ」というところが確立していないと、「なんか強引な取材だった」と言われておかしくなる。
論点は二つあって、政府の運用がメディアに対して謙抑的になるっていうのはありえない。森まさこ担当大臣が、西山太吉さんの事件に関して「違法性阻却事由に当たらない」と言っているんですよね。報道の自由などについて考慮すると言っているのは違法性阻却事由ということです。だから、特定秘密保護法案が定める犯罪の構成要件には該当するんですよ。
西山事件のどこが構成要件に該当するのか。特定秘密保護法案が定める構成要件はずーっと数多く並べてあって、その他、権利者の権利を侵害する行為となっています。そうすると、秘密チームがあったらそこはみんな権利者なわけですよ。私が国会議員であれ市民活動家であれ市民であれメディアであれ、権利者の権利を侵害せずに情報をもらうことなんて不可能ですね。
佐藤 その通りです。
福島 どういう場合があるのか。限定されるなんてウソですよ。繰り返しますが、権利者の権利を侵害しないで情報を入手するなんて不可能ですよ。
佐藤 少なくともそこにおいては官の判断というのが第一義的に優先される。そうなると警察の問題もそうなんですが、検察がそこでまた力をつけてくる可能性がありますね。この法律が仮に通ったとした場合、いつ第一号事案が出てくるか。その時に検察がどう判断するかですよね。
福島 たとえば基地労働者が「基地の中でこういうことが起きているんではないか。おかしい」と話をしたとする。そうしたらもうそれは特定秘密保護法違反となります。
佐藤 そのとおり。そして捜査当局は共謀や秘密漏洩を調査するためにどうするか。実際いまも通信傍受をやっているわけですが、通信傍受に関して…。
福島 拡大しますね。
佐藤 事実上の全面解禁になってきます。すごく息苦しい社会になってきますよ。 (その4に続く)
その4
特捜検察は事件をつくる
福島 実は、特定秘密保護法の後に出てくるのが盗聴の拡大であったり、屋内盗聴だったりする。「いや、これは秘密とは知らなかった」と言えば、一般民間人は罪に問われないと政府は答弁しているんです。でも、逮捕されたら、「秘密って知らなかったことはないだろう」 と迫られる。自白で「秘密と知っていました」あるいは「秘密かもしれないが、それでもいいと思いました」っていう自白が取られちゃうんですよ。
佐藤 自白を取るのは簡単です。「これは秘密なんだよ、君。今になってどう思う。いまになっておかしいことをしたと思うか」と取調官は聞きますからね。「これだけの騒ぎになっているんだ。新聞見てみろ」と。そうしたら「いや、いまになって考えてみたら確かにおかしい」って答えてしまいますよ。それが調書になる。その後、「君、いまになっておかしいと思うってことは、やった時点においても潜在的におかしいと思ったんじゃないか」ときます。「どの時点で君の認識は変わったんだ」と問われた時に「いやあ、今、検事さんにすごい剣幕で言われたので認識が変わりました」って 言える人間はいないですよ。そうしたらその当時の時点においてでも、「私おかしいと思っていました」となる。それでビンゴになって、違法性認識があったと認定されちゃいます。彼らは調べのプロ。それで飯食ってるんですから。
福島 「秘密と知りませんでした」と言えばいいというけれど、そんなの言えるわけない。「秘密かも知れないが、 秘密であってもかまわない」と考えたら未必の故意ですからね。もう一つは、ジャーナリストであれ市民活動であれ市民であれ国会議員であれ、秘密とされたことが重要なわけじゃないですか。大本営発表なんてどうでもいい。むしろ政府が隠そうとしている不都合な真実をきちっと国民に情報を開示するのが仕事じゃないですか。
佐藤 そうです。
福島 だから核燃料の再処理とかのコストを隠す。SPEEDIの放射性物質拡散予想を出さない。東電のテレビ会議録画は、民間だけれどもなかなか出さない。私たちの仕事は「真実を明らかにしないこと」におかしいじゃないかと言うことです。つまり「特定秘密を明らかにしないのはおかしい」と言うのが仕事なんですよ。
佐藤 その通りです。
福島 そうしたらもう日常茶飯事、特定秘密に触れることになる。
佐藤 そもそも憲法の発想自体、そういうような形にして権力を規制するものですからね。
福島 そう。知る権利って、そういうことなんですよ。
佐藤 権力は放っておけば悪いことをする、というのが大前提です。
福島 そう。権力は悪いことをし、腐って重要な情報を出さない。主権者である国民に対して事実を隠蔽しようとする。
佐藤 事実、そういう傾向がある。特捜検察っていうのは、事件がないところから作って初めて特捜検察ですからね。あるところからきちんとそれを摘発するんだったら、特捜検察の意味はない。だから尋問の技術に関しては、彼らは天才的なんですよ。
福島 だから民間人が「秘密とは思いませんでしたと言えば助かる」なんてことはありえない。
佐藤 もしそう言い続けることができる人間がいるんだったら、革命運動ができますよ(笑)。みんなが自白するような状況になっても自白しないでがんばったら、「これはやはり特別な訓練を受けているやつだ」となりますよ。そうなると「これは徹底的に断罪しないといけない」と現場の警察官や検察官は燃えますよね。
福島 厳罰化されるでしょうね。「別表で指定されている『特定秘密』に当たるってわかるじゃないか」と取り調べで追及されますよ。たとえば『週刊金曜日』が原発のこのことを暴いたら、「テロリズム対策上問題だとわからないか」って、非難されますよ。
佐藤 取り調べでは「君の書いた記事が引き金でテロが起きたんだ。それに対して道義的な責任を感じないか」と取調官に言われるでしょうね。そこで道義的な責任を感じちゃったら、一枚目の調書になる。「道義的な責任を感じていたら、法的な責任はあるんだよ」と言われる。それをさんざん言ってから、「もう一回、房に帰ってよく考えてごらん」と。それで「考えてみて言いたいことはないか。言いたいことがあったらいつでも 俺のところに言ってきてくれ。夜中でもいつでも対応するから」と言われる。そんな形で二三日もやっていたら、みんな「おれもちょっと悪いことした」と思うに決まっています。それで両隣が確定死刑囚で「うわーっ、殺されたくないよー」と騒いでいたりする。そんな状況に置かれたら頭がくらくらになりますよ (笑)。
福島 〈特定秘密を漏らしたときは、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する〉だからすごく重い刑罰です。
佐藤 一〇年以下の懲役は特別背任と一緒です。会社の金を使って一五〇億円ぐらいバカラ賭博をした人と一緒ですよね。
福島 しかも一〇〇〇万円以下の罰金と併科できる。秘密にしているようなひどいことをきちっと暴くのがジャーナリズムであり国会議員の仕事であり、市民の仕事で、知る権利ってそういうことじゃないですか。そこで頑張れば頑張るほど、特定秘密保護法違反になってしまう。「秘密かもしれないが、いいと思いました」って言うと完全に有罪。「秘密とは思いませんでした」と言ったところで、「でも君、論理的に考えて、これは別表にある秘密でしょ。だから君は一生懸命やろうとしたんじゃないの」って言われてアウトですよね。これが共謀でも処罰されるんですよ。
佐藤 いくらでも広がっていきますね。
福島 罪の対象が「共謀、扇動、教唆」だから、ものすごく範囲が広がります。
相談しただけで罪に問われる
佐藤 法律専門家の観点から再度、教えてほしいんですけれども、なぜ刑法が定める「共同正犯」だけではダメなんですか。
福島 刑法の共同正犯はものすごく限定した行為にしか適用できないんですよね。だから、この特定秘密保護法案では独立罪として処罰するところがポイントです。普通は正犯が実行行為をやった時に、「君は共謀で関わっていたじゃないか」と処罰されるんだけれど、特定秘密保護法では、まだなにも秘密が出てこない段階でも処罰されることになります。
佐藤 要するに、摘発にあたって捜査当局の手抜きが可能になるということですね。
福島 すごく早い段階で処罰しちゃうんですよ。共謀ということは相談しただけで罪に問われるということになる。繰り返すと、秘密が漏れていなくても罪になる。
佐藤 保護隔離的な発想になっているわけですね。
福島 そうです。治安維持法の保安処分の発想なんですよ。
佐藤 つまり、「間違った考え方を持っている人は早く社会から隔離して排除して、本人も楽にしてあげるし、社会もキレイにしよう」という発想です。日本は、だんだん一九世紀に帰りつつあるということですね。
福島 たとえば私と佐藤優さんが、「違法なことをちゃんと暴こうね」って二人でメールを交換したり、言ったりしたらアウト。
佐藤 メールという物証が完全にありますからね。
福島 そう。つまり特定秘密が一般に出なくても、共謀の段階で処罰されるんです。諮っただけで。だから福島みずほと佐藤優が特定秘密保護法で逮捕されても、「私たちは何の地雷を踏んだんだろう」っていう答えはずっとわからない。
佐藤 これは権力にとっては一番魅力的です。「この線を超えたら処罰される」と明確になっていれば、人々は権力自体を怖がらないですからね。
福島 線引きが明確ではないから、いつ地雷を踏むかわからない。
佐藤 たとえば自民党の閣僚経験者などの有力政治家がいるとします。そこに自己の栄達のために情報を持っていく人間がいたとしても、警察が恣意的に処罰しないということがいくらでもできるようになる。
福島 いくらでもできますね。
特定秘密保護法で罰せられるのには二通りあって、新聞や雑誌、ホームページ、ブログなどのメディアに「こういうことがある」って載った場合に「漏らしたやつは誰だ」となる。それは一応、秘密が外に出たことになるから、「何が秘密か」が少しはわかるわけです。でも共謀だと、秘密がまだ外に漏れていないから、「何が秘密か」がまったくわからない。要するに壁を叩こうとしたように見えるというだけで処罰される。
佐藤 権力としては非常に魅力のある法律です。
福島 佐藤優が国会議員と一緒に、なにかを問題にしようとしただけでアウトですよ。
佐藤 それはその通り。裏返して考えると、まさに国家というのはそういう法律がほしいんですよね。
福島 戦前の治安維持法もそうでしたよね。
佐藤 治安維持法も、最初は極めて限定されていたものが、途中から死刑まで罰則に入ってくる。最後のころには大本教なんかもやられています。大本教は「皇道大本」で、むしろ満洲国への進出を積極的に推進するなど国家権力に近い団体でした。
福島 創価学会の創始者である牧口常三郎だって獄死するじゃないですか。
佐藤 第二代の会長になる戸田城聖も不敬罪と治安維持法で捕まっているわけですからね。
福島 私は日本版NSC設置法と特定秘密保護法は、治安維持法と似たような弊害をもたらすことになると思います。共謀でダメなんだから。「そういうのを考えることがけしからん」という話になっちゃうんですよ。
身近でスパイ活動がはじまる
佐藤 もう一つ調べていかないといけないのは、戦前の軍機保護法、国防保安法の構成がどうなっていたかですね。
福島 戦前の軍機保護法で処罰された例を国会図書館に頼んで出してもらったんです。治安維持法がそうだけれども、立件されるのは一部なんですよね。でも問題は、逮捕されるとか、警察に引っ張られるだけで、その人の人生がアウトになることですよ。
佐藤 これは今でも基本的に一緒ですよね。
福島 そうです。判決が出なくても、逮捕された段階で打撃です。捜索を受けただけで打撃です。
佐藤 それから、特定秘密保護法の適性評価の過程で非常に深刻なのは、表現の自由に対する大変な侵害があること です。表現の自由の根本というのは内心の自由です。表現しないことの自由なんですよ。要するに自分の言いたくないことは公権力に対して語らなくていいとい うことです。ところが公務員になると適性評価で全部プライバシーが丸裸にされる。僕らが行政法を勉強した時には、もはや特別権力関係というのはないんだと 教わりました。ところが特定秘密保護法の発想は、旧ドイツ法の特別権力権みたいな内容です。「お前はどの女性と付き合ったんだ。外国人女性と付き合っていたことがあったら、セックスは何回ぐらいやったのか。その国は何度訪ねたのか」などと聞かれる。本来、これは言わなくていいことなんですよ。
福島 もちろん、そうですね。
佐藤 それが公務員という身分を得て、秘密に触る可能性があるということで適性評価を受けなければいけないとなると、内心の自由に対してものすごい侵害が行なわれることになります。
福島 そうなんです。それで公務員がすさまじい特別権力関係になって、適性評価を受ける人がものすごく広がる。 民間のなかにも警察が入って適性評価をするわけだから、ものすごい監視社会になります。変なことを言うと、戦前の軍機保護法が「あいつスパイじゃないか」 という疑心暗鬼で人々の心をズタズタにしたように、相互のスパイ活動が始まる。公務員のなかだけでなく、民間企業のなかでも人々の心がズタズタになっていくんですよ。そこで連帯しようとか、ともに何か悩みを語ろうなんていうことはありえなくなる。
もう一つ思い出したことがあります。以前、橋下徹大阪府知事(当時)が、「あなたは街頭演説に行ったことがありますか」「街頭演説に行った時に誰に誘われていきましたか」というアンケート調査を県職員にかけて、それが労働委員会で不当労働行為だと決定されたことがありました。これ、実は思想良心の調査な んですよ。
佐藤 その通りです。しかも、調査した結果自体が、特定秘密保護法の関係のクリアランスだから、「特定秘密」におそらくなると思うんですね。
福島 そうですね。やってることも秘密になる。
佐藤 個人情報が全部握られてくると、気に食わない官僚がいたら異動させて、「今度君は特定秘密を扱うことになったから適性評価をするよ」ということになりかねない。
福島 嫌がらせですね。
佐藤 嫌がらせもできるし、情報も集めることができる。
福島 当時の橋下知事が県職員からアンケートを取った時は、結局、シュレッダーにかけるんだけれども、不当労働行為だ、ダメだと断罪されたわけですよ。ところが今回の適性評価は個人のアンケート調査どころではなく、同意をとった上で身辺調査を秘密裏に行なうわけです。
佐藤 「同意を取った上で」と言いますが、「同意しない」と言った場合、その官僚は出世できないということですからね。民間企業だって同じです。
福島 もちろん特定秘密を扱うチームに入れられません。
佐藤 たとえば民間企業で兵器開発の部局に異動になったとします。そこで適性評価をすることになったとしましょう。そうなると家族を調べるわけです。実は妻が若いころ市民運動をやっていて、公務執行妨害あるいは道路交通法違反での逮捕歴があるとしたらどうなるで しょうか。それは結婚するよりもはるか以前の、たとえば二一歳の時のことだとしたら、妻が夫に言っていないことがありうる。その夫が適性評価を受けたら、 「いやあ、あんたの奥さんに問題があるんだよ。実は以前にパクられたことがあってね」と言われるわけです。「それも警備公安にパクられている。だから君は この部局はダメだ」と言って外されます。こうなると、家庭のなかで深刻な問題が起きますよ。
福島 うーん。
佐藤 ロシアであるとかイスラエルのように本当に調査能力のある国家だったら、たとえ仮にそういう過去の履歴が あったとしても、国のためにいま使える人材であれば活用しますよ。というか、過去の何かのことで全部排除するなんてことはしない。そういう本当の意味での 調査能力はいまの日本の警察にはありません。
福島 民間企業でも、社員たちの周辺を警察がいろいろ調査をすることになる。 佐藤 それはもう調査して日常的に見ているわけですからね。福島さんの電話なんか聞いているのも間違いない。メールも見ています。全然心配ないですよ(笑)。
福島 ははは(笑)。
佐藤 ただし、盗聴した情報が公に使えるかどうかということと、密かに違法行為によって情報を集めているかは、まったく位相が違う問題ですからね。
福島 特定秘密保護法に基づいておおっぴらにやれるという次元と、違法盗聴しているという次元は別ですからね。
佐藤 位相の違う問題になります。 (その5に続く) ≫(週刊金曜日ニュースより抜粋)
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