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2013.12.03
安倍晋三政権が成立を目指している「特定秘密保護法案」には、人びとを「萎縮」させる効果があるとする指摘を見聞きする。強そうな相手が出てくると萎縮するということかもしれないが、それは自然現象でなく、意思の問題。
これまでも日本に住む多くの人びとは支配層の進める政策を見て見ぬ振りをし、妄想の世界に入り込んで支配層に立ち向かわない自分を正当化し、社会的に弱い立場の人間や、かつて侵略した国々を攻撃してきた。強い者に逆らうのは損だという一種の処世術。
支配層の政策を批判し、立ち向かうような人が出てくると、権力者に成り代わって制裁してきた歴史もある。マスコミも例外ではない。支配層の怒りに触れないように「自主検閲」しているのが実態だ。「特定秘密保護法案」で萎縮するのではなく、萎縮しているから「特定秘密保護法案」のような代物が出てくるのだ。
支配システムを比較すると、アメリカは日本よりファシズム化が進んでいるのだが、社会状況は日本が遙かにひどい。その理由は民主主義を実現しようとする人が勢力として存在しているかどうかという点にある。日本の場合は個人で立ち向かうことになり、社会全体から袋叩きにあってしまう。
そうした状況の日本なら「特定秘密保護法案」など必要なさそうだが、マスコミ以外から官僚の責任問題に発展しかねない情報が漏れ始めている現実もある。何人かの官僚OBが霞ヶ関の嘘を明らかにしているほか、インターネットを使って庶民も情報をえることができるようになった。インターネット上には語学に堪能な人も多く、そうした人びとの翻訳などによって、外国の情報を入手することも以前とは比較にならないほど容易だ。大本のところで情報を抑える必要があると感じている官僚も多いのだろう。
日本に比べれば、アメリカのメディアはマシだが、権力者が手を拱いていたわけではない。戦後、情報機関をコントロールする目的で極秘プロジェクトがスタートしている。「モッキンバード」と一般に呼ばれているが、正式名称なのかどうかは不明。
このプロジェクトの中心になっていたのは、アレン・ダレス、フランク・ウィズナー、リチャード・ヘルムズ、そしてフィリップ・グラハムの4人。ダレスはウォール街の大物弁護士で、大戦中から破壊活動を指揮していた。ウィズナーもウォール街の弁護士でダレスの側近。戦後は破壊工作部隊のOPCを率いている。ヘルムズもダレスの部下だった人物で、後にCIA長官へ就任する。祖父は国際的な投資家として有名。当時、グラハムはワシントン・ポスト紙のオーナーだった。
グラハムは戦争中、陸軍の情報部門に所属し、そこでOSSの幹部だったダレス、ウィズナー、ヘルムズと知り合ったという。この人脈のおかげでワシントン・ポスト紙は急成長し、有力紙と呼ばれるようになる。ウォーターゲート事件で有名になったキャサリン・グラハムはフィリップの妻であり、キャサリンの父であるユージン・メーヤーは世界銀行の初代総裁だ。背後に金融界が存在していると言うことである。
ウォーターゲート事件を記事にしたひとりで後にワシントン・ポスト紙から離れるカール・バーンスタインは1977年10月20日付けのローリング・ストーン誌でメディアに対するCIAの工作を暴露、CIAに雇われたジャーナリストは400名以上だとしていた。
この記事が出る数年前からアメリカの議会ではフランク・チャーチ上院議員らが政府の破壊活動を調査、NSAの存在が知られるのもこの時期であり、要人暗殺、クーデターなどについてもメスが入り、洗脳、心理、思想の操作などを研究していたことも発覚する。
こうした支配システムの暗部を浮かび上がらせるうえでCIAの内部告発は重要な意味を持っていた。そこで内部告発を困難にする仕組みが導入され、メディアでは気骨ある記者の排除が始まり、1980年代のCOGプロジェクトにも続く。なお、チャーチは1984年に59歳で死亡している。
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