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[けいざい解読]大詰め迎えるTPP交渉 日米協議に世界が固唾
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉が大詰めの局面に入った。米通商代表部(USTR)のフロマン代表が1日、バイデン米副大統領が2日に相次いで来日し、政治レベルで安倍政権と膝詰めの協議に臨む。
年内妥結を賭した閣僚交渉がシンガポールで始まるのは7日。世界各国が固唾をのんで見つめるのは日米の動きである。日米両政権の判断が、これからの世界全体の自由貿易の流れを決めるかもしれないからだ。
「日米の出方が分かるまで次の提案も譲歩もできない。TPPがどういう協定になるかは日米間の取引の中身次第」。ある交渉国の高官は、24日まで米ソルトレークシティーで開いた首席交渉官会合の後、新提案を凍結する方針を明らかにした。
高い水準の自由化で日米両大国の息が合うなら、他の交渉国も合意に乗り遅れまいと、それぞれ最後のカードを切って譲歩する。そうなればTPPは中身の濃い協定となり、次世代の通商協定のモデルとなる。
逆に日米合意が例外だらけの甘い自由化に終われば、各国は多くを譲る必要がないと判断し、切り札を温存する。TPPは世界に無数にある名ばかりの自由貿易協定(FTA)と大差ない、平凡な協定になりかねない。
日米2国間の焦点は、やはり関税である。日本側は聖域とされるコメ、麦など農産品5項目を、米側は自動車の市場を関税で守りたい。両者の駆け引きは、既に水面下で佳境に入っている。
日本が取引に使える手段は決して少なくない。聖域の5項目を詳しく見ると586品目もある。ここから他の原料と混ぜた調製品など国内農業に影響が少ない品目を“間引き”すれば、見かけ上の自由化率は上がる。
低関税で輸入できる特別枠を設け、輸出する側の関心に応じて便宜をはかる方法もある。相手国の産品であると認定する原産地規則や、関税を撤廃するまでの期間で工夫もできるはずだ。
むしろ合意を阻む本当の壁は、オバマ政権の米国内での「弱さ」だろう。財政問題でつまずいた米オバマ政権は、米議会に対抗する力が極端に落ちた。その議会では、米自動車業界や労働組合の圧力を受けて、対日強硬論が高まっている。
「日本に為替操作の疑いがある」。米上院では9月末、過半数の60人もの議員がTPPに為替条項を盛り込むよう求める書簡に署名。この政治エネルギーは侮れない。オバマ政権は、対外的に柔軟姿勢を取りにくい。
TPPの本来の意義は投資や競争政策、知的財産権などの新しい通商ルールづくりにある。だが日米が旧来型の関税交渉でもたつけば、こうした新分野での自由化の機運にも影響する。
TPP閣僚交渉の直前に3日からインドネシアで開く世界貿易機関(WTO)閣僚会議は「成果が薄い」と見なされている。世界中の国々が加わるWTOの多国間交渉には、もう自由化を力強く推し進める力は無い。
世界を見回せば、稼働中のエンジンはTPPだけだ。安倍晋三首相とオバマ大統領は、その世界の期待に応え、指導力を発揮できるだろうか。
(編集委員 太田泰彦)
[日経新聞12月1日朝刊P.3]
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