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記事より引用:
「「官僚は公正かつ中立でなければなりません。特定の政治勢力に仕えているのではなく、国益のために働くことを期待されているのです」
もらったのは平凡な助言だったが、政権交代がよくある国で中立でいるのは簡単ではあるまい。
内閣府が法案づくりに先立ち設けた有識者会議のメンバーだった稲継裕昭早稲田大教授の意見もほぼ同じだった。「政権交代で行政の継続性が損なわれないような仕組みが必要だ」」
[コメント]
「特定の政治勢力に仕えているのではなく、国益のために働くことを期待されている」というのはもっともらしく聞こえる説明だが、何が“国益”なのか、どっちが“国益”なのかをめぐる対立があるからこそ複数の政治勢力が存在し争っていることを考えれば、おかしな説明であることがわかる。
社会的立場によって利害得失が異なるように、“国益”自体が、“中立”という概念にそぐわない実に政治的な概念である。
官僚は“国益”のために働くべきという説明を受けて、日経新聞の大石編集委員は、「もらったのは平凡な助言だったが、政権交代がよくある国で中立でいるのは簡単ではあるまい」と応えているが、“国益”の非中立性という点からも、官僚のあるべき姿に照らしてもズレている感想と言わざるをえない。
“国益”は極めて政治的なものだから、官僚にとっての“中立”とは、政策絡みで“国益”云々を持ち出すことを控え、法的に定められた手続きで政権を獲得した政治勢力の政策意向をしっかり受け止め、それを政策化することで生じる問題や起きる齟齬を明瞭に説明はするとしても、自身の価値観や政治的信条で政策の善悪を判断するような言動をしないよう務めることである。
何より重要なのは、政治家が、往々にして“中立”から逸脱する官僚の言動を見抜き、政策論議を通じて官僚を納得させられる能力を醸成することである。
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[風見鶏]「政と官」の冷ややかな蜜月 編集委員 大石格
数年前、本欄で「政治家には難儀な時代だ」と書いたことがある。移り気な世論に翻弄される姿があまりに哀れにみえたからだ。
いまの霞が関にも似たような空気が漂う。政策決定を政治主導で進めるのは間違っていないが、官僚も人の子だ。「黙って言うことを聞け」的な扱いをされて愉快なはずがない。
「政と官」の双方で実力者だった後藤田正晴元官房長官は「役所は威信にこだわって本来の目的を忘れてしまうことが多い」と書き残した。日本に官僚制が導入されたのは国民主権になる前だ。いまも民意への感度は決して鋭敏ではない。
官尊民卑、天下り天国、縦割り行政……。筆者が政治取材を始めた中曽根内閣は行政改革が金看板とあり、この手の単語が出てくる記事をよく書いた。政治主導は当時から課題だった。
今国会に提出された公務員制度改革法案もその延長上にある。首相官邸がじかに差配できる人事を省庁の次官・局長級から部長・審議官級に拡大し、近衛連隊を増やす仕組みだ。
7年前、政権に就いたばかりの安倍晋三首相は政と官の力関係を変えようと、大胆な指示を出した。「出身省庁に二度と戻らないと誓約した官僚しか官邸スタッフに採用しない」。自ら手を挙げたはずの精鋭たちのいまをご存じだろうか。多くは何もなかったかのように元の役所で働く。
第1次安倍政権の首相秘書官だった井上義行参院議員に聞くと「彼らには悪いことをした」という答えだった。長期政権のもとで政治家なり行政トップなりになる道をつくるつもりが、突然の退陣で放り出す格好になったからだ。それでも「省庁幹部はすべて政治任用にすべきだ」との考えは変わらないという。
安倍首相の本音もさほど違わないだろう。今回の公務員制度改革にあたり、第1次政権で廃止しようとしていた人事院を存続させ、法案に「あらかじめ意見を聴取する」との条項を入れたが、霞が関を上手に動かすさじ加減にすぎまい。
今年夏の省庁人事では首相好みの辞令がいくつかあった。目立った反発こそ出なかったが、傷は残った。不毛な民主党政権が終わって霞が関が生き生きし始めたという「美談」を語る自民党議員は多いが、55年体制のころのような蜜月はもはや戻ってこない。
政と官はどう間合いをとればよいのか。どこかにお手本はないかと、来日したフランス国立行政学院(ENA)のロワゾ院長を訪ねてみた。日仏の官界は東大卒とENA出身者が中枢を占める点でよく似ている。
「官僚は公正かつ中立でなければなりません。特定の政治勢力に仕えているのではなく、国益のために働くことを期待されているのです」
もらったのは平凡な助言だったが、政権交代がよくある国で中立でいるのは簡単ではあるまい。
内閣府が法案づくりに先立ち設けた有識者会議のメンバーだった稲継裕昭早稲田大教授の意見もほぼ同じだった。「政権交代で行政の継続性が損なわれないような仕組みが必要だ」
公務員制度にはほかにも課題が多すぎてとても書ききれない。民間への出向が増え、疑似天下りと批判されるが、慶応大の清水唯一朗准教授はそれが中堅層にも適用されていることの方が問題だという。「上が辞めず、ポストが空かない。課長補佐のあとにさらに出向させられ、働き盛りに能力の発揮の場がない」
だから法案が継続審議になってよいとはいわない。それにしてもどこから手をつければよいのか。それこそ政治主導が必要だ。
(編集委員 大石格)
[日経新聞12月1日朝刊P.2]
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