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杉浦爺の時事評論ね。
◎防空圏で中国は早くも孤立化
「張り子の虎」が自分の掘った穴に落ちた
「中国は張り子の虎か」とイギリス人の記者が質問した27日の中国外務省の記者会見がすべてを物語っている。米B52爆撃機の示威飛行になすすべを持たなかったことが、世界的な嘲笑の的となった。まさにやぶをつついて蛇を出したのだ。23日の中国国防省による防空識別圏(ADIZ)設定発表以来、わずか5日間で国際世論の動向は、中国批判一色となった。とりわけ米国はシリア問題での失地回復のチャンスとばかりに、強い対中けん制に出た。軍部の突出を抑えられなかった国家主席・習近平は、まさに内憂外患の状態に追い込まれた。
筆者は防空識別圏の設定によって中国は自ら作った落とし穴にはまったと判断、「国際社会を味方につける絶好のチャンス」と主張したが、予想通りの方向となった。まず米国では主力紙が社説で対中非難の合唱となった。ワシントン・ポストは「無謀だ」、ニューヨーク・タイムズ「中国の威嚇的な振る舞い」、ウオールストリートジャーナル「重大な国際法違反で、許されるものではない」とそれぞれ決めつけた。一致して米政府の対中非難を支持している。シリアへの弱腰で国際評価が弱まったオバマ政権にとって、願ってもない得点挽回のチャンスでもある。
オーストラリアは外相が中国大使を呼びつけて批判、朴槿恵が中国にすり寄っていた韓国はADIZに自国領の岩礁が組み入れられて世論は激昂。朴槿恵は愛する習近平からはしごを外される結果となった。やはり線引きがひっかかる台湾も非難している。欧州諸国も対中非難が圧倒的だ。こうした中でB52の飛行である。中国政府は「中国軍は米国の航空機を確認し、全過程を適切にモニターしていた」と誇らしげにレーダー能力を誇示したが、これも問題の所在を意図的に外そうとしている。なぜなら世界が注目したのはAIDZ設定で「戦闘機による対領空侵犯措置を取る」とした宣言が履行されるかどうかだったからだ。
ところが中国の対応はスクランブルどころか、一機の航空機も飛ばしていない。ひたすらB52をレーダーで追尾して、その滞空時間を確認するだけにとどまったのだ。専門家によると米軍はB52を出して中国の様々な応戦能力を試したのである。もともと中国のレーダーは地球が丸いから機影が1万メートルより低いと掌握出来ないといわれているが、B52はわざとレーダー識別可能な1万メートルより上を飛んだ可能性があるという。だからAIDZ滞在時間が分かったのだ。スクランブルするといっても、空中給油機がなければ中国戦闘機は航続距離を確保出来ず尖閣上空に長時間滞在することは不可能である。だから狙いとは逆に国際社会に「張り子の虎」を露呈させてしまったのである。
恐らく習近平は米国のこのような強硬態度を予想しなかったであろう。中国政府の熟慮が明らかに欠けていたフシが濃厚だ。米政権を分析すれば、オバマがシリアでの失地回復で焦っていることぐらいは十分に分かるはずである。この時期を選べば、強い反発を食らうと言う程度の判断が中国外務省になかったとすれば、その情報収集能力はさほどでもないことになる。むしろ軍部の独走を習が抑えられない現実をあらわにしたと見るべきかも知れない。軍部は尖閣諸島の空域を米空軍が演習に使っていることくらいは掌握していたであろう。したがってその反発は予想していただろうが、習には上げていなかった可能性がある。習は知らないままはんこを押した可能性がある。
AIDZで日米安保体制の固さを測ったというもっともらしい論調があるが、10月初旬の外務・防衛「2+2」会議での共同声明以降は、絆の固さは明白になっていたはずである。今さら確かめるほどのことでもあるまい。朝日の論説委員・惠村純一郎は、いまや反政府のとりでと化している報道ステーションでワシントンポスト紙が「米国が巻き込まれかねない」と述べていることだけをとらえて、「防空識別圏が日米へのくさびとして利いた」と述べたが、毎度のことながら浅はかだ。一新聞の片言隻句だけを見て、実際の米政府の動きを見ようとしない。くさびどころか、いよいよ日米安保体制は緊密化した現実から目を背けたい一心からの発言としか思えない。
このように状況は日本にとって圧倒的に有利な展開となりつつある。日本は首相・安倍晋三がいみじくも「状況を緊張させていく階段を上るわけにはいかない。私たちは冷静に対応しているということも国際社会にアピールしていく」と述べているように、ひたすら“いい子”でふるまえばいいのだ。「ガキ大将対いい子」の戦いを国際世論に見せ続ければ良いのだ。焦点は米副大統領・バイデンが12月2日から日、中、韓3国を歴訪することだ。おそらくAIDZ問題が焦点となる。安倍は3日の会談で、日本の立場を明確に示し、妥協の余地のない点を強調すべきだ。被害者日本を強調して、理不尽な中国の姿を浮き彫りにして「力による現状変更」を排除する日米共同歩調の揺るぎの無さを確認すべきだ。そうでもしない限り、中国の横暴は続く。
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