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民主党の三枚舌
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★「田中良紹氏の視点ー(2013/11/28)」★ :本音言いまっせー
フーテンが「の・ようなもの」と断じた日本版NSC法が参議院本会議で可決成立した。これに加えて特定秘密保護法案も成立すれば、日本は「官僚の、官僚による、官僚のための国家」となる。「官主」栄えて「民主」滅ぶという訳だ。採決では自公に加え、民主、みんな、維新の野党3党も賛成した。
民主党は附帯決議に「議事録の作成」を盛り込むことで賛成に回った。しかし附帯決議は法律的な拘束力を持たない立法府の希望である。政府はそれを尊重しなければならないとされてはいるが、国会審議を見る限り、安倍総理は「議事録の作成」に決して前向きでない。つまり民主党は国民向けに「慎重」のポーズを見せながら、安倍政権の「一丁目一番地」を助けた。これは公明党の二枚舌以上に悪質な三枚舌と言うべきである。
公明党が純粋な創価学会員に「福祉」と「平和」を訴える一方、昔から権力と通じた二枚舌政党である事は政治記者なら誰でもが知っていた。アメリカの軍事戦略に深々と組み込まれ、かつ政治主導を装いながら官僚主導が強化される日本版NSC法案と特定秘密保護法案に公明党が賛成したのは、その「二枚舌」が表に出た話である。
公明党は自らが決して単独では権力を握ることのできない政党である。常に権力に付き従う「ついていきます下駄の雪」なのだ。与党になれば看板を塗り替える事も厭わないのは宿命とも言える。しかし民主党は単独で権力を勝ち取ったことのある政党である。そして権力奪還を狙う野党と思われている。公明党とは基本的に立場が違うのである。
それが国民向けには「慎重姿勢」を見せながら事実上は安倍政権と変わらないスタンスを採っている。それは日本版NSC法案も特定秘密保護法案も菅政権時代に検討した経緯があるからだ。だから安倍政権は民主党が反対に回れるとは見ていない。「修正協議」で国民の目を騙し、取り込めると見ている。
みんなの党や維新の会との「修正協議」は「修正」の名に値しないひどいものだった。フーテンは「知る権利とのバランスをとる」のではなく、民主主義の「原理」に立った法案なら日本版NSCにも特定秘密保護法にも反対しない。それは官僚が独占してきた情報を国民の代表がアクセスできる仕組みにし、何を秘密にするかの基準も国民の代表が作り、国民の利益のためすべての外国に対して秘密にするのである。
従って秘密にしなくとも国民の利益を守ることが出来ると判断されれば情報は国民に公開される。その判断は国民の代表が行う。ところがそうした「原理」を確認する作業が国会ではほとんど行われていない。すべての外国が敵だという認識も共有されていない。
ひたすら「テロとの戦い」のためには外国との情報共有が必要だという話ばかりだった。「テロとの戦い」を言いだしたのはアメリカである。しかしアメリカには「テロとの戦い」を継続する力がなくなった。日本の自衛隊に肩代わりさせなければならなくなってきたのである。
冷戦後のアメリカにとって何でも言う事を聞いてくれる国として特別視されてきたのは英国と日本である。アメリカにとって英国と日本は最重要の協力国であった。従ってブッシュ政権が「テロとの戦い」を宣言した時、真っ先に支持を表明したのも英国と日本だった。そして英国と日本は「イラクが大量破壊兵器を保有」というアメリカの嘘情報を共有する事になった。
アメリカの嘘が明らかになった時、民主主義国家である英国はアメリカの嘘に騙されたブレア政権を厳しく批判した。ブレア首相は任期途中で退陣せざるを得なくなった。それからの英国はアメリカの言いなりにならない。最近ではオバマ大統領が対シリア戦争を宣言した時にも英国議会はそれに同調する事を許さなかった。そうしてアメリカの言いなりになる国は日本だけという事になった。
それが日本版NSC法案と特定秘密保護法案が安倍政権の「一丁目一番地」となった背景にある。そしてこれらの法案が作成される過程で、明治以来情報を独占してきた官僚機構は決して民主主義の原理が作動しないように、つまり秘密情報の世界に政治が入り込むことのないように工夫を凝らした。それが法案をアメリカとは異なる「の・ようなもの」にし、日本では官僚の権限がより強化される方向を向く。
90年代から叫ばれてきた「政治改革」の目的は、明治以来の官僚主導政治を政治主導に転換させる事にあった。国民主権を確立するための戦いと言っても良い。そのために政権交代可能な政治体制を作る作業が行われた。一方で政権交代を阻もうとする自民党も官僚批判を行い「政治主導」を標榜せざるを得なくなった。
ところがである。国民が「政治主導」に期待を寄せ、誕生させた民主党政権は、官僚機構とアメリカの挟み撃ちにあってあっけなく方向転換する事になる。菅直人政権はアメリカの喜ぶTPPと官僚機構が喜ぶ消費税導入に舵を切り、日本版NSC法案と特定秘密保護法案の検討にも踏み切った。
その方向を民主党政権に代わって安倍政権が実現しようとしている。すると野党に転落した民主党は情報公開法を特定秘密保護法案の対案として提出した。自分が権力を握っている時に出さないで今頃出してきたのは本気で情報公開法を成立させようとしているのではない。ただのポーズを国民に示しているに過ぎない。
アメリカと官僚機構の顔色ばかり伺う安倍政権の姿勢に、フーテンは本気で国家の安全保障を考えているとは思えない不誠実さを感じるが、民主党は国民向けにはそれとは違うポーズを取ってみせる。しかしよくよく見れば同じ穴のムジナである。そこには公明党以上の三枚舌を感じてしまう。
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