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2013-11-28 07:14:12
国会が機能しないことが明らかにされた「事件」といえるのではないでしょうか。衆院で特定秘密保護法案が、かくもあっさり成立していくとは。今年2013年は、戦前戦時中の「翼賛政治」に逆戻りした年として、歴史にとどめられるはずです。
1強の自民党は、数をバックに野党を制圧前進する国会運営です。野党は「みんなの党」の渡辺喜美代表が典型的な例を示したように、広い視野から見れば多くの政党がいわば「第2自民党」の役割に落ちぶれました。野党としての役割を果たしません。つまり、「野党」をも含む「翼賛政治」といえる状況です。
特定秘密保護法案は参院で審議されていますが、結局は衆院のコピーを繰り返すだけでしょう。例えば、民主党は採決時に委員長席に詰め寄る「景色」を作り、客観的には「反対しました」というアリバイづくりにしかしないでしょう。政権側にとっては、反対する勢力がある方がむしろ「ガス抜き」になってありがたい。「反対」の行動をしてくれることが、「民主主義のルールにのっとって成立した証し」となるからです。
民主主義は、最後は数で決めるルールであることはもちろんです。だから、反対するならそれだけの論拠を早く示して、世論に訴える必要が欠かせません。ところが、民主党は、みんなの党が自民党と修正協議をする段階になってようやく反対の姿勢をまとめるのがやっと。あとはどうやって体裁を整えるかだけしか残されていませんでした。存在感はゼロ。野党第一党としての役割は果たせず、逆に国会の機能停止の役割を果たしてしまいました。
昨日11月27日の中日新聞に次のような記事が掲載された、とネットにアップされました。以下引用。
◇「秘密」礼賛、衆院は死んだか 信念なし 世論無視 日中戦争前に酷似
*【中日新聞・特報】2013(平成25年)11月27日(水曜日)
特定秘密保護法案が衆院で可決された。数を頼りに成立を急ぐ与党の姿勢は問題だが、野党の追及も決して厳しいとはいえない。国会は、政策論争の場ではないのか。この政治状況は、泥沼の戦争に突き進み、国会が機能を失った昭和初期に似ているとも指摘される。だが、まだ参院が残されている。議員の気骨と信念を示すべき時だ。(荒井六貴、鈴木伸幸)
「国会は死んだのかもしれない」――戦前の政治など昭和史に詳しいノンフィクション作家の保阪正康氏は、衆院で法案が可決された状況を、こう話した。かつて保阪氏は著書で、軍部支配の政権に迎合した議員らが政党を解体し、戦争を是認する大政翼賛政治に進んだことを「国会が死んだ」と表現した。
「腹切り問答」の浜田国松、「反軍演説」の斎藤隆夫、「憲政の神様」と呼ばれた尾崎行雄。「国民を苦しめるな、と信念を持つ政治家もいた」。しかし数は少なく「多くの議員は軍人に圧力をかけられ、政策論争をやめ、政権や軍部にすり寄った。議員らの手によって、国会は死んでいった」。保阪氏の目には、現在の状況はその一歩手前に映る。
現在、軍部の庄力はない。それなのになぜ、多くの議員が政権にすり寄っていくのか。国民の生命と財産を守るという「政治的信念がないからだ」と言う。「国民に生命と財産を供出させ、使い捨てにしたのが戦争。戦争を二度としてはいけない。過去の教訓を学び、現在に生かし、未来に託さなければならない」
安倍政権は、特定秘密保護法の制定で米国と一体化し、集団的自衛権を容認して戦争への道を切り開こうとしていると思えてならない。法は戦前戦中に、国民の意見を封じた治安維持法の役割も果たすとみる。
・法成立後の想像力欠く
「賛成した議員には『この法律ができれば別の世界が広がる』という想像力がない。国会で審議される何百本の法案の中でも絶対に譲れない法案が一、二本はある」。まさに特定秘密保護法案がそれだという。「地球の反対側でも自衛隊を派遣すると発言した政府高官がいたが、本人が行くわけではない。戦争に行くのは若い自衛官だ」
戦後も「信念」を持った政治家はいた。「戦争はやっちゃいかん」と繰り返した元副総理の後藤田正晴氏。元官房長官の野中広務氏は「戦争に大義などない」と訴え、元外相の伊東正義氏は「自衛隊を戦争にやってはいかん」と演説した。「以前の自民党内には暴走を抑えてバランスを取る勢力があったが、今はそれがなくなった」と憂う。一方で、「修正」で妥協した野党のみんなの党と日本維新の会にも厳しい。「迎合した野党議員は、与党と八百長をしているのと同じだ」
・参院議員は気骨を示せ
信念なき政治家を生む土壌として、現行の選挙制度の問題を指摘する。「選挙改革は失敗だった。小選挙区は死票が多すぎて有権者の無気力を生み、比例代表は名簿に名前を載せただけで議員になれる。だから官僚のいいなりになる」。ともかく、法案審議の場は参院に移る。「信念があるのなら、参院議員は気骨を示してほしい」
・「何か起きろ」――漠たる願望
東京大の板野=ばんの=潤治名誉教授(日本近代政治史)は「今の政治状況は、盧溝橋事件が起きて日中戦争に突入する前夜の時代に似ている」と指摘する。「当時のように、社会の根底に不満が渦巻いている。何かが起こって、世の中が変わってほしいという願望が獏とある『嫌な感じ』がする」
1937年(昭和12年)4月の「戦前最後の正常な総選挙」と言われた衆院選。第一党は民政党、第二党は政友会で、第三極の社会大衆党(社大党)が躍進した。坂野氏は「社大党支持者は戦争回避を期待していたが、7月に盧溝橋事件。すると『聖戦護持』が叫ばれ、反対の声を上げにくくなった。そんな状況に再び陥るのでは」
25日の福島市内の地方公聴会では批判の意見しかなかった。世論の反発や慎重審議を求める声は結果的に無視された。「数の論理」を盾にした与党の国会運営には、戦争に向かった当時のような危険なにおいも漂う。
37年も国民には政治への無力感があった。大正デモクラシー時代の似い25年に男子普通選挙が導入されたが、資本家と労働者、地主と小作人の格差はそのまま。「選挙では何も変わらない」「何でもいいから変化がほしい」という、不穏な世相だったという。
「高度成長を経て、日本は中間層が厚く、格差の小さい安定社会になった。だが、バブル崩壊後に登場した小泉政権は格差社会に変えた」。2007年には「社会を変えるには戦争しかない」という戦争待望論が話題になり、08年末には東京・日比谷の日比谷公園に年越し派遣村ができた。
「格差解消の期待があっての政権交代だったが民主党は何もできず、財政再建にかじを切り、増税にまで手を染めた。期待感が大きかっただけに、落胆も大きかった」
・高い支持率 言論を封殺
多くの権者カ棄権する中、昨年の総選挙で自民が勝ち、第三極の保守勢力は勢いを失って今夏の参院選でも自民が勝った。「金融、財政政策で表面上は景気がよくなった。行きつけの居酒屋も一年前はすいていたが今は混雑している。だから内閣支持率も高い。国会に怖いものなしの安倍政権は、特定秘密保護法案でメディアも黙らせようとしている」と懸念する。
「根本的な格差問題は悪化を続け、社会不満は欝積している。世相を背景に大きな問題が偶発的に起こるかもしれない。日中戦争から終戦の45年までを『崩壊の時代』と呼んでいるが、今まさに、その時代に入っているのではないか。参院が最後の鎖。歯止めをかけるよう議論を尽くすべきだ」
・「国民の思いと離れすぎ」
「いつも野党に投票しよう!」の著者、遠藤直哉弁護士は「異常事態。人の自由を奪ったり、民主主義の根幹を揺るがすような法案で、妥協していいわけがない。政党政治の危機」と訴える。
「国民が選挙で自民党を勝たせたとはいえ、国民の思いとの分裂が大きすぎる。与党に『国民との仲介役や代弁者になる』という意識がなくなっている」
野党についても「批判を代弁してくれる受け皿がない」と嘆く。「民主党は頑張り始めているが、みんなの党にいたっては『あわよくば政権に』という気持ちが透げてみえる。少数の共産に投票しても政策を実現できないという考えになり、これでは投票率も上がらない」と嘆く。
以上、引用終わり
*保阪正康氏(ほさか・まさやす): 1939年生まれ。出版社勤務を経て著述活動。個人誌「昭和史講座」を主宰。「昭和陸軍の研究」「東条英機と天皇の時代」「松本清張と昭和史」など著書多数。2004年に菊池覧賞受賞。
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