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遅すぎる「秘密保護法」反対報道 全く役に立たないどころかむしろデタラメ政府の共犯
http://ch.nicovideo.jp/nk-gendai/blomaga/ar399414
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2013/11/26 日刊ゲンダイ
希代の悪法、秘密保護法案がきょう(26日)午前の衆院特別委で強行採決され、賛成多数で可決した。午後にも衆院を通過する見通しだ。
今頃になって大マスコミは、この法案の危険性について反対キャンペーンを張っているが、あまりにも遅すぎるというものだ。
安倍首相がこの悪法を国会に提出する意向を表明したのは、半年以上も前、4月16日の衆院予算委なのである。
そこで、安倍は「日本が秘密保全法制を整備していないことに不安を持つ国がある。法案を速やかに取りまとめ、早期に国会に提出できるように努力したい」と“宣言”した。
法案の骨格はとっくの昔にできていて、その危険性は弁護士らが早くから指摘していた。
それから7カ月間――大マスコミが法案の危うさを徹底的に暴き、国民に周知させ、憲法無視の悪法を葬り去るためのキャンペーンを張れば、事態は変わったはずなのだ。
ところが、大新聞が社説やコラムで異議を唱え出したのは、安倍政権が法案を閣議決定した10月25日以降だ。参院選の結果、自民党が衆参両院で圧倒的多数を握った後である。
巨大与党に1カ月だけ歯向かったって、しょせん「無駄な抵抗」に終わってしまう。そんなことはメディアだって百も承知だろうから、今さらながらの反対キャンペーンは、罪逃れのアリバイ工作みたいなものだ。
◇本気ならなぜ参院選前に反対しないのか
本気でメディアが秘密保護法案に反対するのなら、参院選の前にキャンペーンを張り、安倍政権の「きな臭さ」を連日、ぶっ叩けばよかった。そうすれば参院選の結果だって、どうなっていたか分からないのに、なーんにも書かなかった。
「アベノミクスの信任投票」という自民の選挙キャンペーンを垂れ流し、危険な法案の中身や、それを出すことで、いよいよ、日米で戦争を始めようとしている安倍の真意を暴かなかった。それが今日の事態を招いたのである。神戸女学院大名誉教授の内田樹氏(フランス現代思想)はこう指摘する。
「参院選前にメディアは『経済最優先』を掲げ、盛んに『ねじれの解消』を繰り返していました。二院制とは、一度の選挙で多数派を形成した政党の『暴走』を抑制するためのシステムです。『衆参ねじれ』こそ二院制の本質なのに、メディアは『決められる政治』や『効率化』を執拗に迫り、ねじれを異常事態に仕立て上げた。自民党の衆参両院の圧倒的議席は、メディアの勝利でもある。その結果、安倍政権が危険な法案を国会に出してきた。メディアはこの責任を今こそ、思い知るべきです」
安倍政権の暴走に手を貸しておきながら、今さら「各論反対」もないだろう。先週20日に著名ジャーナリストらが秘密保護法に反対する集会を開いていたが、衆院採決の1週間前に怒りの声を上げても「時すでに遅し」である。
◇国民が鼻白む腰抜けメディアの「知る権利」
最新の世論調査でも、秘密保護法案に「反対」する人は50%にとどまっている。「廃案にすべき」は2割にも満たない。この法案の恐ろしさを知れば、反対が7割、8割に達してもおかしくないのだが、世論の盛り上がりはいまひとつだ。
「その理由には、メディアの追及が遅すぎて国民に法案の危険性が浸透していないこともありますが、多くの国民にすれば、この法案が成立したって『今までと同じ』『何も困らない』というムードです。その発想の根底には、国民の拭いがたいメディア不信が横たわっていると思います」(元NHK政治部記者でジャーナリストの川崎泰資氏)
いくら大マスコミが「取材の自由が制限される」「知る権利が奪われる」と騒いだところで、「今さら何?」というのが国民の本音だ。なにしろ、この国のメディアは国民の知る権利のために体を張ってきたことなんて、ありゃしないのだ。だから、大マスコミがいくら「取材が制限される」と騒いでも、国民はシラ〜ッとしてしまう。「もともと権力の走狗じゃないか」で終わりである。
その証拠に、マスコミが国家の秘密を暴き、弾圧された例として出てくるのは、西山事件だけだ。あれは40年も前の話だ。その時だって当時のメディアは「知る権利」への圧力を問題にしなかった。外務省の女性職員と「情を通じて」情報を収集した西山の手法を問題視、スキャンダルとして騒ぎ立てた。政府も米国も「シメシメ」だったに違いない。
そんな腰抜けメディアが「知る権利」をふりかざし、したり顔で秘密保護法の問題点を指摘しても国民は「どうでもいいよ」になってしまう。
かくて、危険な法案への反対は広がらず、安倍の暴走はますますエスカレートしていくわけだ。
「知る権利のためなら徹底的に戦う。その姿勢が日本と欧米メディアの決定的な違いです。米政府の違法な国民監視を暴露した元CIA職員のスノーデン氏や、それをスクープした英紙ガーディアンの姿勢を見れば、つくづく彼我の違いを痛感させられます。彼らは知る権利を脅かす勢力に対し、いかなる圧力にも屈せず、訴追すら恐れない。知る権利が自由と民主社会を守る上で、いかに大事かを歴史や文化を通じて肌で知っているからです。日本メディアの姿勢とは大違いで、この国には守るべき民主主義が存在しないのではないか、とすら思えてきます」(川崎泰資氏=前出)
秘密保護法についても海外メディアの方が、よほど危機感を募らせている。日本外国特派員協会は会長名で〈法案は報道の自由および民主主義の根幹を脅かす悪法であり、撤回、または大幅修正を強く求める〉と表明。NYタイムズも先月の社説で、〈市民の自由を傷つける〉と安倍政権を批判した。
一方、日本新聞協会が公表する「『特定秘密の保護に関する法律案』に対する意見書」の中身といえば、〈正当な取材が運用次第では漏洩の『教唆』『そそのかし』と判断され、罪に問われかねないという懸念はなくならない〉と、奥歯にモノが挟まったような言い回しである。
◇そして治安維持法のような狂気が吹き荒れる
先週の反対集会で、ジャーナリストの田原総一朗氏はこんなエピソードを披露していた。
「『(法案反対の)呼びかけ人になって欲しい』と頼んだら、10人以上のキャスターが『全く賛成なのだけれども、名前は出さないで欲しい』と言ってきた。個人情報保護法のときとは大違いだ」
同じ集会で、日経新聞元論説主幹で客員コラムニストの田勢康弘氏はこう言っていた。
「新聞もテレビも、いかに首相はじめ重要閣僚を自社に呼ぶのかを考えている。その結果が権力監視を弱めたのではないか。自らも反省をしながらそう思っています」
この言葉に今のメディアのすべてが凝縮されているのではないか。大メディアにとっては、時の政権に取り入ることが大事で、根底にあるのは権力との「お友達感覚」だ。だから、平気で権力者とメディアのトップが飯を食ったり、ゴルフをしたりする。西山事件のように権力の虎の尾さえ踏まなければ、秘密保護法成立後も「お友達」が自分たちの仕事を制限することはない。そう思っているのだろうし、つまり、秘密を暴くつもりなんて、そもそもないのだ。だから、大マスコミの法案反対には鼻白む。単なるジェスチャーにしか見えないのだ。前出の内田樹氏はこう言った。
「メディアも民主主義をないがしろにする共犯者にしか見えません。安倍政権が目指しているのは、経済成長最優先の国づくりです。スピード感が求められる経済活動にとって、妥協と調整を重ねる『熟議の民主主義』はもってのほか。そんな発想です。この先、国民は経済優先か民主主義かを迫られ、経済優先に従わない“反政府勢力”は抑圧されていく。そのための『凶器』に位置づけられるのが秘密保護法で、運用次第でかつての治安維持法のような『狂気』が吹き荒れかねません。そう危惧していたら、一部メディアは『きな臭い法案審議より経済政策を優先すべき』という理由で法案に反対していました。彼らも安倍政権と同じで、民主主義よりも経済効率なのです」
効率を優先していけば、独裁主義に行きつく。もちろん、米国べったりも加速する。地球の裏側まで出かけていって、米国と一緒に戦争し、1%の富裕層だけが得をし、99%は抑圧され、物を言えば捕まる世界。大マスコミの堕落によって、そんな世界がもうそこに来ている。
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