01. 2013年11月26日 09:36:06
: LG0FUtT49g
TBSの「朝ズバッ!」で、中国の防空識別圏に関連して第一列島線を取り上げていた。これは、昔から有名な話しだけど、今までマスコミが話題にすることはあまりなかったと思うが、防空識別圏の設定もあるのだから、マスコミはちゃんと国民に伝えた方がいいな。それに、中国には第一列島線どころか、第二列島線もある。1982年に中国の最高指導者、ケ小平の意向を受けて、 中国人民解放軍海 軍が打ち出した第一列島線、第二列島線という軍事戦略上の概念がある。 短期的には対米国防計画、長期的には中国が世界に同盟国を持つ覇権国家に成長するための海軍建設長期計画である。それは、2010年までは第 一列島線に防衛線を敷き、その内側の南シナ海・東シナ海・日本海へのアメリカ海軍 ・空軍の侵入を阻止することである。この2010年は若干遅れていて、最近は2015と言っている。そして、2010〜2020年には、第二列島線内部の制海権確保し、 2020〜2040年に、アメリカ海軍による 太平洋、インド洋の独占的支配を阻止するというものである。 第一列島線とは九州を起点に、沖縄、台湾、フィ リピン、ボルネオ島 にいたるライン。第二列島線は伊豆諸島を起点に、小笠原諸 島、グアム・サイパン、パプアニューギニア に 至るラインである。第二列島線まで中国海軍が制圧すると、日本の喉元に中国海軍が刃に突き刺さることになり、日中有事の際は中国海軍が日本のシーレーンを断ち、石油タンカーなどを止めてしまうこともある。 第二列島線については、中国社会科学院日本研究所の高洪副所長も「第二列島線突破は国際慣行に沿ったもの http://j.people.com.cn/94474/8407484.html 」と明確に言っている。それは、日本が硫黄島に傍受 施設を新設することに対して、「日本が軍事・安全保障面で中国への対抗を強化すると同時に、日本政府がお手上げ状態で、中国海軍による第一列島線、第二列島線の突破、西太平洋進出を阻止できず、封じ込められなくなったことを物語って いる」と指摘したのである。 さらに、「世界の多くの大国がみな海軍を世界各地に派遣している公海航行の時代 に、中国には世界により多くの貢献をすることのみを認め、貢献の増加に伴い広が る利益を中国海軍が守ることは認めないというような論理は、どうあろうと通じな い。」と、西太平洋を中国海軍の軍事作戦海域にすると断言しているのである。 だから、尖閣は中国にとっては海底資源というだけでなく、中国海軍が太平洋に出て行く際の要衝であり、日本の領土のままだと海路が狭められるので、軍事拠点としても確保しなければならないのだ。そのための、今回の防空識別圏ということになる。これに対しては、アメリカにとっても西太平洋の軍事支配権を巡る争いであり、看過できないのだ。 現在は、アメリカにとっては日本を同盟であり、東アジアで一番重要な国だから、中国との有事の際は、日米安保条約を発動して米軍は、自衛隊と共同で作戦に当たるが、今後、10年、20年もしたらどうなるか分からないかも知れない。 アメリカは軍事費の経済負担が厳しくなり、だんだんと「世界の警察官」を縮小せざるを得なくなる。一方で、中国の経済成長はまだ続くだろうから、当然軍事力の強化を行う。それだけでなく、今は中国は世界一のアメリカの債権国なのだ。つまり、アメリカは軍事的には中国と対立しているが、経済的にはアメリカは中国に借金しているから、頭が上がらなくなって来ているのだ。 そこで思い出されるのはニクソン・ショックである。ニクソン・ショックとは、1971年7月15日に発表されたニクソン大統領 の中華人民共和国 への訪問を予告する宣言をして、翌1972年2月の実際に北京訪問して、アメリカと中国は国交を結んだのである。 中国は第二大戦後、それまで中国は中華民国として国民党が政権に就いていたのだが、中国共産党との戦いに破れて台湾に移ったのである。そして、大陸は中国共産党が政権を握り国名を中華人民共和国としたのである。大陸は中国共産党の政権となったのだが、国際社会の大半は、台湾の中華民国を大陸も含めての正統政権として、国連も中華民国の加盟を認め、安保理常任理事国の立場もそのままであった。 だが、だんだんと中華人民共和国の存在感が増してきて、そして、1960年代に中国共産党と旧ソ連との関係が悪化すると、ニクソンは旧ソ連へのくさびを打ち込むために、電撃的に中華人民共和との国交樹立に動いたのである。そして、中華民国との国交を絶ったのである。アメリカが中華人民共和国が中国と認めたということで、中華人民共和国が国連に加盟し、常任理事国にもなったのである。 この時日本には、アメリカからは事前に情報は伝えられておらず日本政府は混乱し、当時の総理大臣田中角栄は、アメリカの後を追って中国共産党主席の毛沢東に会いに行き、日本も中華人民共和を中国と認めたのである。もっとも、アメリカは政治的には中華人民共和を中国と認めたのだが、軍事的には台湾の中華民国と同盟関係を続けるといったねじれ外交をしているのである。 中国の第一列島線の目的は、かねてより台湾も中華人民共和国であると言ってる中国共産党は、武力による台湾併合も辞さないのが基本的立場である。そのため、第一列島線の内側を制圧することが、中国にとっては極めて重要なのである。ちなみに、当初の計画では2010年までに第一列島線を制圧する予定であったが、5年ほど遅れて2015年には達成するとしている。つまり、尖閣に関する中国の強硬な姿勢は、日本が国有化したからだけではないということである。 さて、アメリカと中国は、政治的には1972年の国交樹立で手を握り、さらに、中国が世界一のアメリカの債権国になったということで経済的にも深い関係になったのである。また、中国は世界最大の消費者を抱えている市場であり、アメリカ企業も中国との経済関係を重視しており、アメリカにとっては中国はますます重要な国になっているのである。 だが、アメリカと中国とは未だに軍事的には対立している。アメリカが中国とは軍事的には対立せざるを得ない理由は二つある。まず、中国との軍事的対立を解消するということは、アメリカは事実上東アジアからの撤退を意味し、それは、世界への影響力を強めている中国との関係で、東アジアに止まらず、東南アジア、南アジア、中東、さらには、アフリカにまで至る世界規模でのアメリカと中国との力関係に影響する。 さらに、アメリカには軍産複合体と呼ばれる、軍需産業を中心とした私企業と軍隊、および政府機関が形成する政治的・経済的・軍事的な勢力の連合体がアメリカの中で強い力を持っており、軍事縮小は軍需産業の死活に関わり、簡単には中国と軍事的にも手を結ぶことはできないのである。 だが、アメリカは今のままでは国債を増発し、中国などに買ってもらうしか国を経営できないので、いずれ限界が来る。つまり、中国と軍事同盟を結び軍事費を縮小するということである。そうなると、アメリカにとっては日米安保条約を継続する必要はなくなってしまうことになる。中国共産党は中長期的には、この戦略で進めていると思う。 では、なぜ中国は頑なに反日政策を押し進めているのかというと、中国人のメンタリティがあるのだろう。中国は何千年も前から東アジアの覇者であった。自らを中華、すなわち世界の中心だとし、周辺国を属国として君臨していたのだ。だが、地政学的に大陸と適度に離れていた日本は、直接的に中国の支配下になることはなかった。それどころか、隋王朝の煬帝に対して、聖徳太子の発案とされる「日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に 致す。恙無しや」 の国書を送るなど、中国の属国になることは拒否したのである。 そして、時代が下りイギリスとアヘン戦争で破れた清国は、こともあろうか、目下だと思っていた日本にも日清戦争で負け、中国への日本の進出を許し、さらにアメリカが参戦したから、辛うじて戦勝国になったが、実際は日中戦争で負けるという屈辱を骨絡み味わったのだ。いわば屈辱の100年の歴史である。だから、経済大国になった中国は、軍事的にも日本を圧倒し、日本に対して中国がアジアの盟主だと思わせるまでは反日を進めるということになるのである。 安倍のアメリカとの同盟関係を強化して、中国の拡張政策に対処するのは、短期的には正しいのだが、10年、20年といった時間軸で見ると、日本は手をするとアメリカから見捨てられ孤立するリスクはある。困ったことだが、歴史とはこういうものだろう。 |