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【正論】 国学院大学名誉教授・大原康男 山本議員が犯した二重の「過ち」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131120/stt13112003110000-n1.htm
秋の園遊会で天皇陛下に手紙を手渡した山本太郎参議院議員に対しては、「議員辞職」(参議院規則では「除名」)を求める声も上がったものの、山崎正昭参院議長が国会法で付与されている「秩序保持権」に基づき、厳重注意したうえで任期中の皇室行事出席を禁じる内容にとどまった。
≪手紙の内容も手続きも問題≫
山崎議長は山本議員を議長室に呼んで、「議員の自覚を持ち、院の体面を汚さないよう十二分に肝に銘じてほしい。今後、皇室行事への参列は院として認めない」と通告し、本会議で処分を実施したことを報告した。これで「一件落着」になったが、何がしか不満感が残るのを禁じ得ない。処分の適否は措(お)くとしても、事の本質を深く究めずに、ごく一面的な対応に終始したからである。
与野党がほぼ一致して賛同した最大の処分理由は、天皇の「政治利用」であった。そもそも秋の園遊会は「菊花を愛で、内外人と和楽を共にする」かつての宮中「観菊会」に由来し、戦時の中断期を経て戦後、装いを新たに再開された。陛下が国会議員、官僚、自治体の首長や芸術・スポーツなど各界の功労者、駐日外交官らとその配偶者を招いて開かれる皇室と内外の人々の親睦を深めるための、世俗の政治を超えた貴重な集いなのである(春の園遊会は同じく「観桜会」の後身)。
そこに招かれた者が、今なおその処理をめぐり国会の内外で論議されている原発事故の現状を陛下に唐突かつ直接に訴えることなど、「国政に関する権能を有しない国および国民統合の象徴」である天皇の「政治利用」に当たるとみられても仕方あるまい。
もちろん、このような視点から今回の行為が批判されるのは当然であるとしても、事はそれだけではすまない。本来語られるべきもう一つの問題点が、どこかに置き去られてしまっている。陛下に訴えようとした内容だけでなく、陛下に訴えようとしたやり方−−すなわち天皇に対する「請願」の手法も問題なのである。
≪内閣に提出するのが法の定め≫
日本国憲法16条は「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない」とうたっている(天皇は国政に関する権能を有しないから天皇に対する請願は「その他の事項」に関するものであることは言うまでもない)。これを受けて制定された請願法3条1項後段には「天皇に対する請願書は、内閣にこれを提出しなければならない」とあり、内閣がその処理に当たることを明記している。
したがって、山本議員が引き起こした“手渡し事件”は、この請願法3条の規定に完全に違反する事案なのである。この点への新聞各紙の論及は管見の限りでは、11月2日付産経新聞の「主張」ぐらいではなかろうか。
請願権は当然、国民の参政権の一部を成すものだが、現憲法で初めて設けられたわけではない。明治憲法30条は「日本臣民ハ相当ノ敬礼ヲ守リ別ニ定ムル所ノ規程ニ従ヒ請願ヲ為スコトヲ得」と規定する。ここにいう「別ニ定ムル規程」が請願令である。
請願令は天皇に対する請願書について、「内大臣ニ宛テ」て呈すべきだと定め、現行法に近い。異なるのは、これに違反して「行幸ノ際沿道又ハ行幸地ニ於テ直願ヲ為サムトシタル者ハ一年以下ノ懲役ニ処ス」(16条前段)と罰則を設けているところだ。
≪請願受理は皇室に流れる伝統≫
君主または他の国家機関に対する請願権は15世紀以降、欧州諸国で広く認められてきたもので、明治憲法の請願権もそれを継受した一面を有しているが、実は、わが国においては歴代の天皇がむしろ積極的に臣下の直言を求めてこられた長い伝統がある。
大化の改新に関わられた孝徳天皇(36代)を嚆矢(こうし)として淳仁天皇(47代)、後嵯峨天皇(88代)、明治天皇(122代)には、そのものずばり「直言を求むるの詔」があり、ごく最近の事例では、昭和天皇(124代)が昭和41年の歌会始(勅題「声」)において、「日日のこのわがゆく道を正さむとかくれたる人の声をもとむる」とお詠みになったことが、改めて想い起こされる。
伊藤博文の『憲法義解』では、先に紹介した明治憲法30条の起源を孝徳天皇の詔に置いているぐらいだから、天皇に請願すること自体は皇室の伝統に適う。だが、繰り返しになるが、山本議員の不見識は請願の内容にとどまらず、その手続きにも及んでいるという致命的なものであった。
一部報道では、山本議員は皇居の二重橋に赴いて陛下にお詫びをし、その際に週刊誌記者とトラブルを起こしたというが、心からお詫びするのであれば、こうしたパフォーマンスまがいのことをするのではなく、内閣を通して文書できちんと行うべきではないか。あれだけ叩かれながら、このご仁は何も学んでいない…。(おおはら やすお)
[MSN産経ニュース 2013/11/20]
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