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2013年11月19日
今週中にも、特定秘密保護法案が衆議院を通過しそうな按配である。自民公明与党に、自民党補完政党「維新とみんな」がアリバイ作りの抵抗の上、天下の悪法の通過に加担するようだ。まぁ、そういう正体の政党なのに、それを見極められない国民がいるのだから、どうすることも出来ない。これが、日本の有権者のレベルだと思えば、腹も立たない。しかし、それにしても酷い法律だ。作文した人間は罪刑法定主義との連関について、一顧だもしていない法律であり、ことごとく日本国憲法に抵触する出来事が頻発する惧れさえある。挙句の果てに、みんなの党などは、修正だと言いながら、より法文に不鮮明さを増加させるような文言を追加させ、悦に入っているのだから始末におえない。
安倍晋三が、米国に追随するかの如き態度を示しながら、ウルトラC難度の戦略的外交防衛国家を目指している可能性も捨てきれないが、単なる安倍の個人的妄想である。つまり、米国に隷属するフリをしながら、独自軍事力を高め、いつの日か親離れした暁には、押しも押されぬ軍事国家であり、尚且つ経済大国であると云う幻想を抱いている妄想を、オバマは見越しているのだろう。それゆえ、現時点では、パシリがパシリらしい態度の範囲なので、黙認する。しかし、何処かの時点で安倍晋三を切り捨てようと思っているに違いない。故に、オバマは安倍の顔を見るのも嫌なのだが、国益になる範囲では、好きにさせておく選択をしているのだろう。安倍の方は、いずれオバマ政権は終わる。そうすれば米国戦争屋の時代が来るに違いない、と思い込んでいるかもしれない。SFや戦記小説に夢中になるオタク少年なのである。
世界のあちらこちらから、日本の異様な右傾化に眉を潜めているのがわかる。焚きつけているのはアーミテージくらいのものだろう。ニューヨークタイムズ紙は社説で、「特定秘密保護法案」について、以下のように語っている。概ね同紙のような考えが、世界の主流を歩いている事実を、日本人はもう少し自覚するべきなのだが、世界なんてレベルで、物事を考える人間はごく僅か、1%程度の国民の共有意識では、到底バカが主体の非近代的、非民主的に警鐘を鳴らすのは、無駄骨だ。以下にニューヨーク・タイムズの本文及び対訳と米国の凋落と再生に言及するコラムを紹介しておく。
≪ ニューヨーク・タイムズ社説: 自由主義とは言えない日本の秘密法案(和訳)
Japan's Illiberal Secrecy Law: New York Times editorial (October 29)
――日本の国会で審議されている「特定秘密保護法案」を「ニューヨーク・タイムズ」論説委員会が批判した10月29日付の社説の和訳を紹介する。 報道人としての当然の懸念と警告であると思う。 http://www.nytimes.com/2013/10/30/opinion/international/japans-illiberal-secrecy-law.html?_r=1& (翻訳は正確を期すために投稿後微修正することがあります。)――
『 社説
Japan's Illiberal Secrecy Law
自由主義とは言えない日本の秘密法案
By THE EDITORIAL BOARD 論説委員会 Published: October 29, 2013
The Japanese government is poised to enact a secrecy law that will undermine the people’s right to know. The law will give all government ministries the right to classify information related to defense, diplomacy, counterintelligence and counterterrorism as a state secret. But there is no guideline as to what constitutes a secret. This lack of definition means the government could well designate any inconvenient information secret.
日本政府は人々の知る権利を弱める秘密法案を成立させようとしている。この法律は、全ての政府の省庁に対し、防衛、外交、スパイ防止、テロ防止に関連する情報を秘密指定する権利を与える。しかし何をもって秘密とするかのガイドラインがない。この定義の不在は、政府が不都合な情報を何でも秘密指定してしまえるという意味を持つ。
Under the proposed law, government officials found to have revealed secrets could be jailed up to 10 years. Such a provision would give officials even greater incentive to label documents secret rather than risk their release.
法案では、政府関係者が秘密を漏えいしたとみなされた場合に最高10年の懲役となる。このような措置は政府関係者に対し、情報を公開するリスクを取るよりも情報を秘密と分類するさらなる動機を与えることとなる。
Until now, only the Defense Ministry had the authority to classify information as a “defense secret.” Its record is abysmal. Of the 55,000 documents the ministry classified secret between 2006 and 2011, 34,000 were destroyed at the end of a particular secrecy period, depending on the document. And only one was declassified for public release.
これまでは、防衛省のみが情報を「防衛機密」として秘密指定することができた。しかしその実績はひどいものだ。防衛省が2006年と 2011年の間に秘密指定した5万5千件の文書のうち、文書によっては秘密指定の期間終了時に破棄され、それが3万4千件に上ったのだ。そのうち公開されたのはたったの1件であった。
The new law would allow the secrecy period to be extended indefinitely. And it further limits government accountability by making no clear provision for sharing secrets with elected representatives in the national Diet.
新法が通れば、秘密指定の期間は無期限に延長できるようになる。そして、国会における、選挙で選ばれた国民の代表者たちと秘密を共有する明確な規定がないことにより政府の説明責任をさらに限定している。
The law will make an already opaque government more so by threatening to jail journalists, up to five years, for doing their job in an “invalid” and “wrongful” manner. Japan’s newspapers fear that there will be markedly less communication between journalists and government officials. Opinion polls show that the public is very skeptical of the law and its reach. The government of Prime Minister Shinzo Abe, however, is eager to pass it as soon as possible.
法案は、「不正」や「不当」な方法で取材をした報道関係者に最高5年の懲役という脅しをかけることによって、すでに不透明な政府を更に不透明なものにしている。日本の新聞社は、報道関係者と政府関係者間のコミュニケーションが著しく減ると心配している。世論調査によると、公衆はこの法案とそれが及ぼす影響に対して大きな懸念を抱いている。それにもかかわらず安倍晋三首相の政府はこの法案を一刻も早く通そうとしている。
Mr. Abe needs it to establish an American-style national security council. Washington has made clear that more intelligence cannot be shared with Japan until it has tighter information control. Of the six departments in Mr. Abe’s proposed security council, one department places China together with North Korea, while other departments focus on allies and other nations. This move reflects the confrontational stance the Abe government has been taking toward China and another sign of a hawkish foreign policy that may well harm civil liberties and create even more mistrust of the Japanese government in East Asia.
安倍氏がこの法案を必要としているのは米国方式の国家安全保障会議を設立するためである。ワシントンは、日本が情報統制をもっと厳しくするまでは今以上の機密情報を日本と共有することはできないと表明している。安倍氏が提案している国家安全保障会議は、6部門のうちの1つを中国と北朝鮮にあて、他の部門は同盟・友好国やその他の地域としている。この動きは、安倍政権が中国に対して取っているに対立的な姿勢を反映しており、市民の人権を害し、東アジアに今以上の日本政府への不信感を生み出すタカ派的外交政策の兆候であるとも言える。』(翻訳:乗松聡子 @PeacePhilosophy)
≫(Peace Philosophy Centreさんのサイトより、URLは以下を参照)
http://peacephilosophy.blogspot.jp/2013/11/japans-illiberal-secrecy-law-new-york.html
≪ アメリカの再生 アメリカの復元力という伝統
この間のブログで「アメリカの凋落」と書き、何人かの友人からお叱りをいただいた。
いうまでもないが、これはアメリカの『覇権主義の凋落』という文脈であるので、誤解を解く意味で、まとまりもないが、今、思うところを書いておきたい。
日米の政治風土の大きな違いをまざまざと今、われわれは見せつけられている。 アメリカで起きていることは、日本で言えば、自民党衆議院議員の295人の内230人が、安倍政権が進めるTPP交渉に待ったをかけたというに等しい。 そんなことは日本では起こり得ないことを悲しいことに私たち日本国民は知っている。
日本では、民主主義の死滅をもたらす秘密保護法が、おそらく少なからぬ自民党議員が疑問を持ちつつ(アメリカ留学経験のある弁護士でもある森雅子氏が担当大 臣を任されて、とんちんかんな答弁を繰り返しているのは、ご本人がこの法律に納得していないからとお見受けする)、アリバイ的な微細な修正を施しただけ で、通過させられようとしている。 個々の議員の主体性は存在しないに等しい。
議院内閣制と大統領制という統治機構上の相違が、まず浮かぶ。 しかし、それはおそらく、表層のことに過ぎない。 問題は、党が決めたことには従うという、家畜化された政党制だろう。 「自由民主」と称しながら、『自由』でも『民主』でもない。 高支持率の党首に服従する無力な議員の群に過ぎない。
かつての自民党には、多様性と懐の深さが存在した。 民主党政権の3年を経て、そうした政治文化は、死滅してしまった。 復活した自民党は、まるで全体主義政党だ。
もう少しレンジを広く取ろう。 この国では、私たちは、自分の手で明日を選び取ることができるのだ、という当たり前のことが、決して当たり前と思われていない。 仮に、国民主権の原則が、単なる正当化原理(権力者の言い訳)以上のものだとするならば、少なくとも、次のようなことを国民に要求するだろう。
主権者として自覚し、主権者として主張し、主権者として行動する。 これには、自分の手で明日を選び取ることができるという信念が必要だろう。 むろん、その結果に対して、主権者として責任を引き受ける覚悟も必要だ。 この根本が、日本の政治文化には根付いていない。
アメリカにおける『覇権主義の凋落』と、対比しておきたい。 アメリカの覇権によって利益を得てきた集団は、「1%」の富裕層であり、最低限のモラルすら投げ捨て、国民を家畜扱いする、グローバル資本だ。 米国議会の与党から上がった声は、グローバル資本に駆動されて暴走を続ける政府に対して民意が突きつけた拒絶に他ならない。
アメリカのグローバル資本の一番の被害者は、アメリカ国民なのだ。 アメリカ国民は、家畜化されなかった。 未来は自分たちで変えることができるとの信念を捨てなかったのだ。 今、アメリカで起きつつあることは、アメリカ民主主義の復活への序章なのだろう。
アメリカの覇権は後退するであろう。
一国が決めたルールで、全世界を支配しようなどと言うことが、そもそも正しい行いではないのだから、混乱は続くにしても、健全な世界を取り戻す一歩になるだろう。 そして、アメリカの国民は、より解放された国民になるだろう。
アメリカの復元力、という言い古された言葉がある。 アメリカでは、ほとんど絶望的と見える闘いに、挑み続け諦めない国民がいるということだ。 下院議員から上がった、“NO”の声は彼らにとっては、アメリカの凋落ではなく、民衆の復活を告げるのろしだ。 TPPは確かに、直ちに取りやめにはならず、議会もしばらく揉め続けるだろう。
しかし、メディアがいうような「年内妥結」をめぐってではない。 最低限でも、交渉内容を公開するか否かが焦点だ。 僕には、この形勢では、万一としか思われないが、アメリカ国民は、それでも、場合によっては、一時的敗北を余儀なくされる可能性もあるかもしれない。 しかし、彼らは決して、あきらめはしない。 だから、復活への第一歩を画した彼らに、心から、エールを送りたい。
日本でも同じはずだと、敢えて言う。
私たちは明日を選び取ることができる。 そして、国民主権原則によれば、私たちは明日を選び取ったとみなされる。 その責任を負うべきなのは、私たちだ。 この件に関して、もう一つ挙げるのであれば、この国のマスコミのおバカぶりである。 雑記事ながら、下院民主党のこの動きに触れるマスコミは存在したようだ。
しかし、その論調は、毎日新聞などが『年内妥結に影』とおバカな評価を告げるばかりだ。 仮にも自民党衆議院議員の4分の3が安倍首相の進めるTPP交渉の中止を求めて書簡を送ったとしたら、TPP交渉はどうなるだろうか。 『年内妥結に影』という程度ですまされる問題だろうか。 まして、アメリカでは貿易協定交渉の権限は正式に議会に帰属している。
わずかに産経新聞が『早期妥結へ暗雲』『議会二分』と、かなり正確な見出しを付けている。但し、それも『早期妥結』に対する『暗雲』であり、本質を見るものではない(「年内妥結」との決まり文句でなく、「早期」とするのがミソ。いったい、どのくらいを早期と考えるのだろうか)。 問題は、国民の生活に大きな影響を及ぼす事柄を国会の頭越しに、極限的な密室交渉で決めてよいかという民主主義の問題だ。
朝日新聞に至っては、17日付で日米関税交渉を採りあげて、「環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で、米国が日本にすべての輸入品の関税をなくすよう求めていることが分かった。日本が例外扱いを求めているコメなどの農産品「重要5項目」も、20年以上の猶予期間をつくるなどして撤廃するよう要求。
米国の想定外の強硬姿勢に日本政府は反発を強めており、年内妥結は不透明さを増している。」とリードを打つおバカぶりである。 根本の米議会が揺れているのに、関税交渉で「年内妥結のために戦略の再検討が必要」との趣旨で結ばれるこの記事は、完全に倒錯している。
何と朝日新聞(名古屋)は、これを一面トップ記事として扱っている。 米国議会で起きている一大事を伏せて、アメリカの強硬な関税交渉の姿勢を一面トップで報じる。 譲歩しなければ大変なことになると、言わんばかりである。 バランスの欠如は明らかであろう。
政府公報の面目躍如である。 朝日は、自民党議員の4分の3が、秘密交渉にNOを突きつけたとしても、アメリカの要求を採りあげて、年内妥結のために、再検討が必要だとするのであろうか。
尊敬していると思われるニューヨークタイムズ紙の分析は、天と地の差である。
下院議員は、オバマ政権には交渉権限はない、交渉を止めよ、と主張しているのだ。
交渉権限のないUSTRとの交渉の継続は、TPP自体に対して賛否いずれのスタンスを取ろうが、百害あって一利なしである。 まして、この期に及んでなお関税交渉で譲歩しようなどは、交渉相手を利する以外の何物でもない。
日本政府=日本国の代理人(≠USTR代理人)という前提で考えるとすれば、アメリカ大統領の交渉権限問題に決着がつくまで、他の交渉当事国とともに足並みを揃えて交渉を中断するのが真っ当である。
追記 朝日新聞のこの体たらくについて、考えてみている。 記者ではなく、デスクを支配している何かがあるのだろう。 阪神支局事件のためだろうか。 それなら、「タブーの正体」に記された川端幹人氏のあとがきをよんでほしい。 個人ではなく、組織に属しているのだから、勇気は10分の1も要らないはずだ。 いや、スポンサー収入のせいだろうか。 それなら、平均年収が弁護士の2倍以上という給料に拘らず、ジャーナリズムに徹するだけですむ話である。
理解してあげようとしても、やっぱり無理である。
≫(街の弁護士日記さんのブログより) *筆者が勝手に改行している
http://moriyama-law.cocolog-nifty.com/
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