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2013年11月17日
11月15日、「樫の会」第100回例会があり、財政改革について討論会が行われた。
討論者は、東大教授の吉川洋氏、慶応大学の土居丈朗氏と私の3名であった。
「樫の会」の正式名称は「一般社団法人樫の会」で、概要について同会のウェブサイトには次のように記述されている。
「今日の日本経済のかかえる難局を理解し、またその解決策を考えるために、実社会の各方面でご苦労を重ねていらっしゃる方々と、大学で研究に携わる学者とが、頻繁に膝を交えて意見交換を行う場の必要を痛感しておりました。
そこで諸先輩のご意見を承りながら、この目的を少しでも実現するために、平成9年11月、定期的な勉強・懇親の会合をスタートさせました。これが樫の会のはじまりでございます。」
私も「樫の会」の会員で、過去に2、3度、例会での講師を務めさせていただいた。
11月15日は、第100回例会ということで、財政問題について、3名の討論者による討論が行われたわけである。
吉川氏と土居氏は政府関係の委員などを務めており、消費税増税推進の論者として登場した。私は消費税増税に反対の立場の主張を提示した。
過去のNHK討論出演などのケースと同様、少数意見を代表し、少数で多数の意見と対論するという構図になった。
私は従前どおり、五つの論点をあげて消費税増税に反対する意見を提示した。
五つの論点は以下の通り。
1.消費税増税の前にやるべきことがある
「シロアリ退治」も「わが身を切る改革」も行われていない
2.持続可能な社会保障制度確立の道筋が示されていない
社会保障支出の削減だけが先行して決定されている
3.日本財政が危機的状況にあるとの財務省の説明が適正でない
財務省は対外的には日本財政が危機でないと説明してきた
4.景気回復初期の行き過ぎた緊縮財政が日本経済の再悪化を招く
2014年度の財政デフレインパクトは15兆円と過去最大
5.消費税制度に根源的かつ重大な欠陥が存在する
価格転嫁できない零細事業者は消費税の負担者にさせられる
このうち、マクロ経済=国民経済との関連では、2014年度、4の論点が最重要になる。
この点を重点的に、著書としてまとめて上梓するのが、
『日本経済撃墜−恐怖の政策逆噴射−』(ビジネス社)
である。
2014年度の日本経済が政策逆噴射によって撃墜されるリスクについて、詳細な説明を行っている。
詳細は同書をご高覧賜りたいが、2014年度は増税による国民負担増加と13兆円の補正予算剥落効果により、22兆円相当のデフレインパクトが発生することが懸念される。
安倍政権は6兆円規模の経済対策を策定するとしているが、この規模の施策ではデフレインパクトを緩和できない。
GDP比3%を超える、日本版「財政の絶壁」問題が生じるのである。
この点が特に重視されなければならない。
吉川氏と土居氏は財務省の主張と調和する見解を述べられたが、私の主張を踏まえて、いくつかの疑問点を提示された。
討論会で論議の対象になった主要な論点を五つ提示しておく。
1.日本財政の現状についての評価
日本財政は本当に危機に直面しているのか
2.1997年度財政に対する評価
97−98年の日本経済悪化と消費税増税の関連性
3.2000−2002年度財政の評価
2000−2003年の日本経済悪化の原因
4.野田佳彦元首相の増税推進政策の評価
公約違反をどう評価するか
5.財政支出の無駄排除について
支出の無駄排除は十分であるか
吉川氏は、1〜4の論点について、日本財政は危機に直面しており、過去2度の日本経済悪化は財政政策の対応によるものではない、あるいは、財政政策の対応の誤りによるものではないとの主張を示し、野田佳彦氏の増税推進姿勢を高く評価した。
土居氏は、行革推進会議の委員として汗をかいているが、汗をかくほど成果をあげるのは難しいと発言した。
討論を通じて、私は消費税大増税を実施するための前提条件はまったく整っていないという判断をさらに深めた。
私は1997年度増税に際しても、日本経済の回復基調を破壊しないことに最大の配慮をする必要があることを訴えたが、この主張が退けられて大増税が強行実施された。
その結果として、日本経済の大崩落が起きた。
このことが、再び繰り返されることを懸念する。
吉川氏などは、97年度以降の日本経済崩落について、消費税増税等の財政政策対応の責任を否定するが、これは、財務省の主張そのものである。
財務省は、政策責任を回避し、消費税増税政策を推進するために、財政政策対応の誤りを否定する論を独自に創作しているが、まったく説得力のないものである。
五つの論点についての具体的解説を以下に提示するが、真に必要な財政論議が深められないまま、大増税に突き進むことは極めて憂慮すべき事態である。
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