http://www.asyura2.com/13/senkyo156/msg/402.html
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▲ 11月5日、初の国会質問後、「手紙手渡し問題」で会見を開いた山本議員
【緊急掲載】山本太郎議員バッシングの裏で、報じられない安倍政権の暴走(IWJウィークリー25号 岩上安身の「ニュースのトリセツ」より)
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/111935
11/16 19:27 IWJ Independent Web Journal
10月31日、秋の園遊会で天皇陛下に手紙を手渡した山本太郎参議院議員の行動が、大きな波紋を呼んでいます。この行動が「速報」で報じられると、政界、マスコミ、ネット、ありとあらゆる媒体で、猛烈な批判が巻き起こりました。11月8日には、参院議院運営委員会の理事会で、厳重注意と任期中の皇室行事への出席禁止処分が決まりました。
しかしこの「お沙汰」が下ってからも、「騒動」は収まる気配を見せていません。ネット上ではこの処分に対し、「曖昧だ」などと批判的な声が噴出しました。また、10日に山本議員が静岡福祉大学で予定していた講演会が、「警備上の理由」から中止になり、それを読売新聞が大きく報じるなど、メディアの「注目」は今後も続きそうな気配です。
・山本太郎氏と原発考える講演会中止…会場使えず(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20131108-OYT1T01341.htm
しかし、批判の中には、その妥当性が疑われるものが少なくありません。園遊会のマナーを知らない、品位を欠く「ルール違反」だった、という点については、山本議員も折にふれて認め、「陛下に対して失礼だった」と反省の弁を述べています。
しかし、「憲法違反」「売名行為」「天皇の政治利用」「不敬罪」「請願法違反」「議員辞職にあたる行為」などという批判は、果たして妥当なものなのでしょうか? 山本議員の肩をもつつもりではありませんが、与党政治家の口から勢いよく飛び出すこの手の批判を報じる時に、マスコミは検証が不十分であるように思います。
下村博文文部科学大臣は11月1日の定例会見で、「議員辞職に当たる行為だと思う。まさに政治利用そのものであり、看過することがあってはならない」と山本議員を強く批判しました。自民党の石破茂幹事長も11月2日に行われた講演で「報道で取り上げられることで、自身の存在感を大きくしようと思ったのではないか。それは天皇、皇室の政治利用だ」と述べ、山本議員に対する議員辞職勧告決議案の提出が必要だとの認識を示しました。
果たして、山本議員の行動は「天皇の政治利用」であり、そしてそれは「議員辞職に値する行為」なのでしょうか?
■山本議員への批判がブーメランとなって返ってくる安倍政権
これまで、時の政権が天皇の「公的行為」を政治的に利用しようとした事例は数多く存在します。
直近で言えば今年4月、安倍政権主催の「主権回復の日」式典に、政府の強い求めで天皇・皇后両陛下が出席しました。退出の際に、会場から「天皇陛下万歳」の声があがり、壇上の安倍晋三総理や麻生太郎副総理も万歳を三唱する一幕があったのです。これは、事前に決められていた式次第には含まれていなかったものであり、菅義偉官房長官は4月30日の記者会見で、「自然発生したもので、政府として論評するべきではない」などと釈明しました。
また今年9月の国際オリンピック委員会(IOC)総会には、下村博文文部科学相から宮内庁側に対して強い働きかけを行い、皇族の高円宮妃殿下が出席し、スピーチしました。当初、宮内庁と文科省は「高円宮妃殿下の現地でのご活動はIOC委員との懇談などに限る」として決着していたが、下村文科相が高円宮妃殿下の出席を渋る風岡典之宮内庁長官に直談判し、押し切ったのです。
※久子さまIOC総会ご出席の舞台裏 官邸の意向、渋る宮内庁押し切る(msn産経、9月29日)
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130929/imp13092900390000-n2.htm
これらも「天皇や皇族の政治利用ではないか」との批判が起きましたが、国会では現在に至るまで、具体的な「処分」は検討されていません。前述の通り、下村文科相は今回の一件で「山本議員は議員辞職すべきだ」と最も厳しい批判を口にしていましたが、IOC総会の件では自身も「皇族の政治利用ではないか」との批判を浴びたことを忘れているようです。
今回の山本氏の行為が「天皇の政治利用にあたる」として処分の対象になるとすれば、下村文科相の宮内庁に対する「直談判」も問題にされなくては、公正ではありません。下村文科相の発言は、ブーメランとなってご本人の元に戻ってきたわけです。
■的はずれな批判
山本議員の行動が「憲法違反」という批判もありましたが、これは正しいのでしょうか。
11月1日、自民党の脇雅史参院幹事長は党役員連絡会で、「憲法違反は明確だ」と、山本議員を強く批判しました。
憲法をひもといてみましょう。
日本国憲法第16条は、国民が政治意思を国政の場において実現させるべく、広く国や地方自治体といった国家機関に対して要望を述べる権利「請願権」を、すべての国民に対して保障しています。その「請願権」の運用を定めた「請願法」では、天皇に対する「請願」も制度として認めているのです。そればかりか、 「かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない」とまで憲法第16条には明記されています。
今回の山本議員の行動は、日本国憲法第16条が保障する「請願権」を、手紙を渡すというかたちで行使したもの、ということになります。請願を行う権利を憲法で認めている以上、それを「憲法違反」であると非難し、議員辞職のような重い処分を求めるのは、いかにも無理があります。その処分自体が「請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない」とする憲法に違反となる可能性すらあります。脇参院幹事長の「憲法違反は明確である」という発言は、「明確な間違いである」といわなくてはなりません。
そうなると、問題は、批判が成立するとすれば、「請願法」が定めた手続きを踏んだか否か、という点に絞られることになります。
請願法第3条には「天皇に対する請願書は、内閣にこれを提出しなければならない」という規定があり、直接手紙を手渡すという行為は、この規定に反するという指摘があります。
この点はたしかに「ルール違反」としてとがめられる部分ではあります。11月5日に、私の緊急単独インタビューに答えた山本議員も、「園遊会での『マナー』について知らなかった。また、これだけの騒ぎになれば陛下の耳にも入るだろうし、陛下のご宸襟(しんきん)を悩ませてしまったことについては、本当に反省している」と、自身も繰り返し述べています。
ただ、「請願法」そのものをよく読むと、違反した場合の罰則の規定が存在していないのに気づきます。常識的に判断すれば、注意程度ですませるべき話のはずです。実際、大騒ぎしたあげく「厳重注意」どまりになりましたが、たった一人の新人議員の「勇み足」に対し、閣僚や与党のトップ、マスコミがそろってむきになってバッシングを繰り広げている図は、「異様」なものであったといえるでしょう。
■手紙の「中身」には一切触れようとしないマスメディア
「異様」なのはこれだけではありません。マスコミは山本議員の「行動」の是非を取り上げる一方、その手紙の内容、彼が陛下に伝えたかった内容については、十分に報じようとはしませんでした。
私は11月2日、京都の街宣に向かう山本議員に直接電話しました。
「書いたことは、被曝により子どもたちの健康被害が拡がっていること、現場の作業員たちがいかに非人道的な過酷な環境下で作業しているかということ、そして特定秘密保護法が制定されたら、こうした現状も隠されてしまう怖れがあることなどです」
・【IWJブログ】山本太郎参議院議員に直撃取材! 「陛下に現状をお伝えしたい一心だった」〜手紙の内容には被曝の現状と特定秘密保護法への懸念も
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/109705
彼は被曝や原発作業員の窮状についてだけではなく、秘密保護法の危険性についても手紙で訴えていたのです。この点は、ほとんどマスコミでは報じられていません。
山本議員は11月5日に、国会議員として初の国会での質問に臨みました。この機会に、陛下への手紙に記した問題を質問したのですが、山本議員の動向を、その一挙手一投足まで張り付いて報じているマスコミが、なぜかこの国会での質問に関してはほとんど報じようとしませんでした。
質問を報じたのは時事通信と産経新聞ですが、どちらも、山本議員が質問した原発作業員の問題や、秘密保護法の問題は一切報じていません。産経新聞は「山本参院議員が初質問=『手紙』には触れず」などと見出しを打ちましたが、内容についてはやり取りのほんの一部しか取り上げていません。時事通信は、福島県民健康調査の「18歳以下の県民の甲状腺がん発生率上昇」についてのやり取りのみを掲載し、環境省の担当者の答弁に対し「山本氏は『なるほど』と応じるなど、突っ込んだ質疑にはならなかった」などと、明らかに恣意的で悪意のこもった書き方で報じています。
・山本参院議員が初質問=「手紙」には触れず(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201311/2013110500773
なぜマスコミは、山本議員の質問をまともに報じようとしなかったのか。以下、マスコミが報じなかったやり取りの一部を掲載します。
■【質疑のやり取り抜粋】
山本議員「東電原発事故の収束作業員の労働環境について。最悪な労働環境のなか、命を削りながら作業している。労働環境が劣悪なだけでなく、賃金についても搾取されている。健康管理、放射線管理がずさんな実状があるのではないか。労働安全衛生法の電離放射線障害防止規則が、事故収束現場で厳格に守られていると断言できるか」
半田安全衛生部長「被曝線量管理、健康管理に万全を期していく。被曝線量の低減、迅速な測定評価、日常的な健康チェックなど、東電や元請け事業者に指導している。被曝線量の低減対策などの適切な実施を確認している。発電所に対する立ち入り調査などで、不適切なものがあれば厳しく指導していく」
山本議員「電離則では作業員には6ヶ月に1度、特別健康診断をすることになっている。しかし、この健康診断は在職中のみ。職を離れた人についても、緊急作業従事者に実施されている甲状腺検査など、生涯に渡って健康管理に責任を持つべきでは」
半田「福一で緊急作業に従事された方に関しては、被曝線量限度を年間250mSvまで引き上げた。その方々については指針に基づきがん検診をしており、離職後も国が責任を持ってやっている。被曝限度を超えていない人に関しては、法令にもとづいてこれまで通りの対応が適当」
山本議員「搾取の問題では、下請けの構造が問題。元請けに8万円で発注したものが、末端の作業員の方は数千円しかもらっていないと聞いている。今後の事故収束に必要な作業員を確保するためにも、経産省が責任を持って適切な労働条件を確保するべきではないか」
糟谷汚染水特別対策官「具体的な賃金レベルに国が口を出すことは控えるが、作業員の方々がしっかり説明を受けて納得して働くことが大事。廃炉措置の中長期ロードマップの中で、作業安全管理、健康管理などの進捗を確認している。東電では作業内容や賃金の支払いについて書面での明示を徹底し、確認作業に取り組んでいる。国も自ら検証していく」
山本議員「賃金の問題も、労働者が納得したからということではなく、国が責任をもって進めていただきたい。最後に、特定秘密保護法について、原発情報が特定秘密になるのか、ならないのか」
森まさこ秘密保護法担当大臣「原発事故に関する情報は特定秘密にならない。他方、警察による原発の警備の実施状況などに関する情報などは、テロリズム防止のための措置として特定秘密になるものもある」
【掲載終了】
原発作業員の置かれた危険な環境、元請けの搾取の実態などは、東電も国も把握しながら、対策を講じず、この2年8ヶ月間、ずっと放置し続けてきた問題です。原発の再稼働や海外への輸出など、原発推進を掲げる安倍政権にとってこれらは、国の責任を問われる、厄介な問題なのです。
さらに重要なのは、最後の質問、秘密保護法の問題です。当初政府は「原発は特定秘密の対象とならない」と国民に説明していましたが、それが虚偽の説明だったことが明らかになりました。森まさこ大臣の答弁は、「特定秘密にならない」と言いながら「特定秘密になるものもある」と、意味不明なものとなっています。まさに、ジョージ・オーウェルが「1984」で指摘した、未来にディストピアにおける二重思考、ニュースピークそのものです。
しかし、「平和のために永遠に戦争し続ける」という超大国「オセアニア」さながらの、現在の米国にひたすら追従する安倍政権はこの法案成立を是が非でも成立させたいと躍起になっています。この法案の危険性、矛盾、国民への嘘、裏切りを追及することは、日米安保体制という「戦後レジーム」にとって「タブー」なのです。「戦後レジーム」からの脱却を掲げる安倍総理が、「戦後レジーム」の維持・深化に血道を上げている図は、実にオーウェル的であるといわざるをえません。
「タブー」なのはマスコミだけではありません。宮内庁の山本信一郎次長は11月5日の定例記者会見で、手紙は同庁の事務方が預かり、天皇陛下には渡っていないことを明らかにしました。
宮内庁報道部は、IWJの電話取材に対し、「当方もこれ以上のことは分からない。事務方のもとに手紙があることは次長が記者会見で話されたようだが、事務所のどこにあるかも、こちらでは分からない」と答えました。また、今後陛下にお渡しする予定があるのかとの質問にも、「今後の予定もこちらでは把握できていない」と述べました。結局、手紙は、陛下に届く事なく、闇に葬り去られようとしています。
私の緊急単独インタビューで山本議員は、陛下へ手紙を手渡そうと考えた動機について「国は『命』に関わる、今すぐにでも動かなければならないことは動きが遅い。一方『国家戦略特区』のような、『金』に関わる、誰かの利益になるようなことはトントン拍子に決まっていくことに焦りがあった」と語りました。
・2013/11/05 山本太郎議員 猛烈なバッシングに「萎縮はしない、これからも訴え続ける」〜岩上安身独占インタビューで決意新たに胸中を明かす
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/110043
山本議員の焦りは、決して大げさなものではありません。秋の臨時国会では、国民の生活、日本の未来にダイレクトに影響を及ぼす、重大な法案が年内の成立に向けて次々審議入りしており、それに連動して政府・自民党は様々な政策を進めているのです。
本来は、マスコミはこれらの問題を追うべきであり、国民と一緒になってこの安倍政権の暴走を注視し、その法案の審議をチェックし、問題点を指弾するべきです。ところが、マスコミは連日、山本議員の「手紙の手渡し行為」のみにスポットを当て、過剰に騒動を繰り広げ、結果として、その陰で危険な法案の審議から国民の注意をそらせる役割を果たしました。
山本議員は、私が電話をした11月2日の時点ではすでに、「自分が利用されてしまっている」ことに気づいていました。
「マスコミが現状から目をそらすための格好のネタを自ら提供してしまったこと。これは僕の失敗だったと思います」
山本議員がその危険性を訴えようとした行動がはからずも、「スピンコントロール」(情報操作)のための素材として利用されてしまったのです。
■「山本太郎問題」の裏で進む恐るべき事態
では、この騒動の裏で、どのような重要法案が審議入りし、国民がその危険性に気づかないうちに可決されようとしているか、ざっと挙げてみると、以下のようになります。
・10月25日 「特定秘密保護法案」閣議決定
・10月29日 「産業競争力強化法案」審議入り
・11月1日 原発だけでなくTPPも秘密保護法の対象になることが判明
・11月5日 企業優先の規制緩和を進める「国家戦略特区」閣議決定
・11月5日 TPPに関連して日本政府は、コメの関税率778%を500%代に引き下げる方針。コメを「聖域」として死守する公約、もろくも崩れる。
・11月7日 「特定秘密保護法」衆院本会議で審議入り
・11月7日 「日本版NSC法案」衆院本会議で可決。8日参院で審議入り
・11月8日 「国家戦略特区」衆院で審議入り
これだけの重要法案・政策が、この数日間に加速度的に進んでいるわけです。しかし日本の命運を今後、数十年にわたって左右しかねないこの重大な国会を、驚くべきことにNHKは中継しようとしていません。本日(11日)も国会では午後から「秘密保護法」をめぐる法案審議が行われましたが、NHKは午後の時間をまるまる使って「大相撲九州場所」を中継しています。
審議の模様を知るには、「衆議院インターネット審議中継」などを観るしかないのです。
山本議員の騒動、そして大相撲の裏で、今、何が起きようとしているのでしょうか。
■「秘密保護法は原発もTPPも対象とならない」という政府の真っ赤な嘘
山本議員が陛下への手紙で訴えた「秘密保護法」の問題は、日に日にその危険性が明らかになっています。
岡田広内閣府副大臣は11月1日の国会質疑で、TPPが「安全保障に関わる」ことから秘密保護法で国民に開示されない「特定秘密」の対象になる可能性に言及しました。岡田副大臣は30日の特別委員会では「TPPは特定秘密にはならない」と明言していましたが、数日で発言をひっくり返したのです。
政府は国民に対し「原発もTPPも特定秘密の対象とならない」 と説明していましたが、原発に続きTPPの情報も秘密となることが判明。二転三転する政府の回答のなかで、国民への説明は真っ赤な嘘だったことが明らかになりました。
■「命」より「金」の政策に「待った」を
山本議員は私のインタビューで、こうした安倍政権の姿勢について、「『貧乏人は死ね』ということ。国は、このトントン拍子で決めていくスピードを、なぜ原発や被曝の問題に注げないのか」と危機感を募らせました。
山本議員は、「こうしたバッシングの嵐にあって、今後、萎縮しますか?」との問いに対し、「声高に間違っていることは『間違っている』と言う。街角に立って現状を知ってもらい、市民の方から議員に圧力をかけてもらう。また質問主意書など、今後も自分にできることは何でもやる」と、決意を新たに力強く語りました。
山本議員を批判する人も、擁護する人も、改めて一度立ち止まり、加速度的に進む安倍政権の暴走に「待った」をかけて、問題の本質に立ち返って議論すべきではないでしょうか。(岩上安身)
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