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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131112-00000000-fukkou-bus_all
復興ニッポン 11月12日(火)19時1分配信
小泉純一郎元首相の「脱原発」発言が話題になっていることは前回の本コラムで書いた。10月29日には、小泉さんは社民党の吉田忠智党首と会談し意見交換をしている。脱原発で連携を模索する社民党のラブコールに対して、小泉さんは「新党をつくる気は全くない」と語ったそうだ。
■脱原発を唱えればすべてが解決するわけではない
小泉さんはフィンランドで高レベル放射性廃棄物の最終処分施設「オンカロ」を視察し、無害化するまでに10万年以上かかると聞いて、「原発はダメだ」と確信し「脱原発」を言い始めた。
しかし、そこには一つの“誤解”があるように思う。脱原発を唱えればすべてが解決するわけではないということだ。すでに使用済み核燃料が各原発で大量に一時保管されており、これらをいつかは処理しなくてはならない。そのほかにも、やらなければいけないことが数多くある。
たとえば東京電力・福島第一原発の汚染水処理をどう収拾するのか。あるいは同原発の1〜6号機の廃炉問題。1機につき40年はかかると言われており、それをどうするか。福島の除染、原発の再稼働問題……。
「脱原発」であろうと「原発推進」であろうと、いずれの問題も今後解決しなければならないのだ。「脱原発」を唱えれば問題が解決されたような錯覚になるとしたら、それは間違いだ。
■原発の総合戦略が策定できない
原発をめぐる大きな問題は、その施策や事業が複数の省庁に縦割りで分散していることだ。原発推進は経済産業省である。除染は環境省の担当で、復興庁がその実施等を行う。再稼動は原子力規制委員会が受け持ち、高速増殖炉「もんじゅ」は文部科学省、そして原子力事故の損害賠償は厚生労働省が所管する。
では、原発に対する責任は誰が負っているのか。最終責任は安倍晋三首相にあるのだろうが、首相はほかに多くの課題を抱えているため、原発問題だけにかかわっているわけにはいかない。現状では、誰が責任を持つのかはっきりしていないのだ。
各省庁に分散し、責任者が明確でない体制のもとでは、原発の総合戦略は策定しにくい。日本のエネルギー基本計画を策定しようにも、原発をどう位置づけるかがはっきりしない。原発の再稼動もよくわからない。結局、原発の総合戦略を策定できないという悪循環に陥っている。
原発の総合戦略が策定できないことこそが大きな問題である。
■世論迎合する政治家、本音が言えない
政治家は世論迎合と建前の中で矛盾していると言ってもいい。
民主党政権だった昨年、運転から40年経過した原発を原則廃炉とするルールが決められた。これを厳格に適用すれば、新規建設が難しい現状では2049年に原発ゼロとなる。「40年廃炉ルール」を決めているのは世界でも日本だけしかない。本当にこれでやっていけるのか。
また、民主党政権のもとで定められた「年間追加被曝量は1ミリシーベルト」という除染目標がある。当初から1ミリシーベルトという数字には科学的根拠がないと指摘されながらも、この厳しい基準が定められた。しかし、除染の現場から「除染基準の緩和」を求める声が上がっている。
原子力規制委員会の田中俊一委員長は10月23日、「(1ミリシーベルトという数字が)独り歩きしている」として、「年間20ミリシーベルト以下であれば全体のリスクとして受け入れられるというのが世界の一般的な考え方だ」と語った。
この発言は、来日した国際原子力機関(IAEA)の専門家チームが21日、「(1ミリシーベルトを)必ずしも達成する必要はない。環境回復に伴う利益と負担のバランスを考えて最適化する必要がある」と述べたことを受けてのものだ。
ところが、政治家は誰も何も言えない。「20ミリシーベルトでいいのではないか」「廃炉は40年ではなく、60年にしたらどうか」と言おうものなら、メディアや国民からバッシングを受けるからだ。こわくて言えないのだ。
■日本の脱原発を警戒する「アーミテージ・ナイ報告書」
日本原子力産業協会「世界の原子力発電開発の動向」(2013年7月)によれば、世界で運転中の原発は429基あり、建設中76基、計画中97基を加えると合計602基にも上る(2013年1月時点)。30カ国がすでに原発を運転中で、新たに11カ国が建設中もしくは計画中だ。なかでも中国は原発にかなり力を入れており、現在56基の原発が建設中か計画中とされる。
こうした状況を見ると、世界は今後長期間にわたって原発と共存していくことが予想される。その中で、日本は原発をどう捉えるべきか。
昨年8月、米国の元国務副長官リチャード・アーミテージ氏とハーバード大学特別功労教授のジョセフ・ナイ氏が「第3次アーミテージ・ナイ報告書」をまとめ、日本の原発について次のように提言した。
「エネルギー問題における日本の海外依存度の増大の観点等からすれば、原発の慎重なる再稼動こそが日本にとって責任ある正しい選択である」
同報告書は、民間利用において、諸外国から遅れる事態は回避すべきで、日米両国は連携を強め、国内外の原子炉の安全な設計などで指導力を発揮すべき、としている。つまり、「脱原発を行うな」というわけだ。
■安倍内閣は原発の総合戦略を早期に策定すべき
民主党は「2030年代に原発稼動ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」としていた。そして、「2030年代原発ゼロ」の文言を盛り込んだエネルギー・環境戦略を9月19日に閣議決定する予定だった。
だが、閣議決定は見送られ、参考文書にとどめることにした。
その理由はいくつかあるが、一つは「アーミテージ・ナイ報告書」の影響がある。さらには、青森県の六か所村が「原発ゼロにするのなら預かっている使用済み核燃料をすべて元の原発施設に返す」と反発したことが大きい。
迷走した民主党政権に代わって誕生した安倍政権は、原発をどう考えているのか。
安全性が確認された原発の再稼動については、「政府一丸となって対応し、できる限り早く実現していきたい」(5月15日の参院予算委員会)している。その一方で、「できる限り原発依存度を低減させていく」とこれまでに何度か発言している。
■たとえ国民に嫌われても、本音をきちんと示すべき
安倍内閣は、原発を過渡的なエネルギーと考えているのか、それとも今後長く使用し続けるつもりなのか。それがさっぱりわからない。政府の原発に対する姿勢が曖昧なのは、原発に関する総合戦略が策定できていないからだ。それでは国民も判断しようがない。
原発の総合戦略を早期にきちんと策定し、その指令塔をつくるべきである。たとえ国民に嫌われても、本音をきちんと示すべきだ。
安倍内閣にとって最大の難問が原発問題はあり、その対応いかんでは政権の足元が揺さぶられかねない。私はそのように考えている。
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