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巻頭特別レポート 消費増税はコンクリートと公務員にこうして食い尽くされる ああ、土建政治が 帰ってきた
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37486
2013年11月11日(月)週刊現代 :現代ビジネス
すでに10兆円が公共事業にぶち込まれ、はしゃぐ業界は自民党本部に陳情の列をなす。どこかで見た風景が戻ってきた。血税が次々に食われるおぞましい実態。われわれ国民は、完全になめられている。
■カネに色はないから
東京・霞が関。財務省の4階にある第3特別会議室に、マーケット関係者たちが集結した。10月のとある日のことである。
この日集まったのは、いずれも大手証券会社、銀行などに所属する「国債のプロ」たち。財務省、日銀と民間の専門家たちが、日本経済や財政、国債の現状について話し合う、『国の債務管理の在り方に関する懇談会』が開催されていた。
古川禎久財務副大臣の挨拶から始まり、財務省理財局、主計局が国債や財政の近況を報告した後のこと。メンバーたちの意見交換の段に入ると、「危機」を案じる意見が次々と飛び出した。
「そもそも債券市場は、例えば政府が間違った政策を出したときに、鏡のような存在でノーを突きつけるもの。だが、ここのところの債券市場を見ると今の日本の経済状況や財政問題などを反映していないということがとても気になる」
「本来、財政が悪化すれば金利が上がるというメカニズムが働くべきだが、この機能が脆弱化している」
1000兆円の借金を抱える日本は、先進国最悪レベルの財政問題を抱えている。しかし、昨年来のアベノミクスによる「異次元緩和」でマーケットが異常状態≠ノ入り、日本の財政危機へのアラーム(警告)機能を果たせなくなっている。そうした事態を危惧する声が続出したのだ。
「我が国の財政が危うい」
「国の財政状況はますます厳しいものになっている」
さらに会議では、日本の財政問題が一向に解決しないことへの焦りを滲ませる声が噴出。実質財政破綻したギリシャを引き合いに出して、「(日本も)早くプライマリーバランス(基礎的財政収支)を収束させないと、2015年や2020年では間に合わない可能性もある」などと過激な発言も飛び出したのだ。
いよいよ来年4月から消費税の増税が始まり、財政再建への大きな一歩が始まる。それなのにマーケット関係者が「悲観論」に染まっているのには、確かな理由がある。
「消費増税がコンクリートと公務員に食い尽くされそうだからです。本来であれば増税分はすべて社会保障のために使われるはずですが、カネに色はないとして、増税分で膨らむ『国の財布』が公共事業と公務員の利権拡大にぶち込まれようとしています。実際、霞が関の各省庁はすでに予算の分捕り合戦を始めています」(大手外資系証券幹部)
証拠がある。各省庁がこういう政策をやりたいからいくら必要だという希望枠を列挙し、財務省に提出する「概算要求」がそれ。消費税増税が始まる来年度の概算要求を見ると、空いた口が塞がらない分捕り合戦ぶりがありありと浮かび上がってくるのだ。
「たとえば国土交通省が出した概算要求では、新幹線整備費を4年ぶりに増額、民主党時代に凍結された八ッ場ダムの本体工事費要求を5年ぶりに復活させるなど、公共事業に前のめりなのが明らか。
同じく農林水産省も農業農村整備事業、森林整備事業という公共事業に合計4500億円の予算を要求しているが、これは今年度より770億円も多い金額です」(前出・証券幹部)
それだけではない。
自治体の婚活(結婚支援)事業支援に6000万円、豊かな人間性をはぐくむための食育研究に4000万円、原子力に関する情報発信に1億7800万円……。内閣府の概算要求には、「?」な要求がズラリと並ぶ。
日本の財政状況を考えれば、1円でも無駄を削って、限られた血税を最大限国民のために投入するのが筋。それなのに、各省庁は少しでも「利権」を拡大させようと、不要不急の予算までをこれでもかと忍び込ませているのだ。元内閣官房参与の五十嵐敬喜・法政大学教授が言う。
「予想された最悪の事態が起きているということです。というのも、実は消費税増税法案には『附則』という形でこっそりと、増税分を公共事業などに流用してもいいという条項が入れられているのです。
政治家はそんなことは一言も国民に説明しませんが、消費税が10%になれば10兆円ほどが新しく国庫に入る見込みで、合法的にこれを公共事業などにぶち込める。消費税増税で喜ぶのは族議員と、利権拡大をもくろむ公務員ということです。本来社会保障に使われるものと思っていた国民を裏切る、『国家的詐欺』がいままさに行われようとしているのです」
■「防災」という美名のもとで
概算要求の総額は99兆2000億円。フタを開けてみれば、過去最高の額に膨れ上がった。
国民のためと言われたからわれわれが「痛み」を受け入れることを決意した消費税増税は、政治家と官僚のために使うのが「本当の目的」だったことが明らかになった形だ。
政官が一体となって、公共事業という名のコンクリートに湯水のように税金が投入される。これは、戦後自民党体制下で繰り広げられた「土建政治」が、大復活の狼煙を上げていることに他ならない。
その象徴的な「事件」が起きたのは、先月末のこと。国交省が突然、「2050年の国土のグランドデザイン」について話し合うという有識者懇談会を立ち上げた。
この懇談会は、少子高齢化時代を見据えて、コンパクトシティ構想や、JR東海が開業を目指すリニア中央新幹線を基軸とした国土計画を議論するという建て前だが、本音は違う。
「二階俊博・元経産相が推進する、10年で200兆円を公共事業に投じるといわれる『国土強靭化計画』を後押しするためのものと見ていいでしょう。懇談会の立ち上げの約1ヵ月前には、二階氏が『名古屋-大阪間は国が対応すべき』とリニア新幹線への税金投入#ュ言をしていた。
グランドデザインという言葉を使っているのは、バラマキイメージの強い国土強靭化という言葉を避けているだけ。要はゼネコンを稼がせるための長期計画を練るのが目的で、これからも建設業界にカネを出しまっせ、という国からのメッセージに過ぎません」(全国紙経済部記者)
そして、すでに日本全国では公共事業が次々と動き出している。
たとえば安倍総理のお膝元である山口県。県内約115kmのうち約15km以外は未着工だった「山陰自動車道」に国交省が予算16億円を計上し、年内に一部工事がスタートする。
その山口県と、麻生太郎・財務大臣の地元である福岡県を結ぶ「下関北九州道路」は計画が中断していたが、ここへきて山口県、福岡県がともに事業化に向けた調査を再開。同道路の建設促進協議会も7年ぶりに開催され、会長には麻生大臣の実弟である麻生泰氏が就任した。
「二階氏の地元である和歌山県でも新しい道路の事業化に国交省が予算をつけるなど、大盤振る舞いです。
小泉政権下の道路改革で最小限必要な高速道路は約9300kmとされたのに、いつのまにか国交省はかつての1万4000kmという数字を前提にした計画をホームページに載せている。そして安倍政権になってから、もう作らない、必要ないとされたゾンビ計画≠ェ続々と復活しています。財政事情がこれだけ悪化している中で、こんなバラマキを平気で行っているのは明らかにおかしい」(道路問題に詳しいジャーナリストの横田一氏)
道路だけではない。民主党政権時代に事業凍結を決めたダムが次々と「復活」している。
たとえば北海道で国直轄の4つのダム事業で「事業継続」が決定し、工事再開へ舵が切られた。秋田県でも同じく2つのダムに、国交省が「事業継続」のお墨付きを与えている。しかも、2013年度予算が閣議決定される直前に事業継続が決まったダムが多いことから、「国交省が予算を膨らませるために滑り込ませた」(自治体関係者)ようにも映るのである。
前出・五十嵐氏が言う。
「そもそも、安倍政権は公共事業を行う大義名分として防災・減災を掲げ、『災害時には命を守る道路になる』などと語り、半ば脅迫的≠ノ公共事業を断行しています。被災地でも住民の声を無視したような巨大な防波堤が次々と作られようとしている。災害列島を強調することで公共事業に反対しにくい空気を作った上で、族議員が税金をわがものに使おうとしている。こんなことが許されていいのでしょうか」
もちろん、政治家たちがこうした大盤振る舞いをするのは、見返りに「票」と「カネ」を求めているからに他ならない。
自民党が今年2月に日本建設業連合会(日建連)に送った文書が物語る。その文書は、強い日本経済を取り戻すことが自民党の使命とした上で、継ぎ目なく政策を実行して経済の再生を図ると宣言。その意を汲んでもらった上で、自民党に「御力添えを賜りますようお願い申し上げます」「御協力方につきましては、わが党の政治資金団体であります一般財団法人国民政治協会より別途お願い」と記している。
その国民政治協会が日建連に送った文書はより直接的な内容で、「『強靭な国土』の建設へと全力で立ち向かっております」と書いた上で、末尾に「金四億七千壱百萬円也」と要請金額≠載せている。
■さらなる「大増税」も
ざっくり言えば、「これから10年で200兆円の公共事業をバラマいてやるんだから、カネを出せ」ということ。土建政治の根幹をなす「献金システム」が復活している何よりの証拠だ。
「昔は業者が談合してカネを浮かせ、それを政治家にキックバック、彼らは派閥資金にするというシステムがあったが、さすがにそれはできない。1億~2億でも裏金を作るのは大変だから、いまは表でパーティー券の購入という形で処理しています」(政界と業界の調整役を務めるブローカー)
自民党本部や国交省に、地方自治体、業界団体の陳情団が列をなす姿が復活したのも、安倍政権が誕生してからのこと。そして衆参両選挙での大勝利≠フ見返りに、政権は大量のバラマキを次々と実行に移していく。かくして「日本の中枢」である永田町・霞が関は、猛スピードで土建化への逆回転の道を突き進んでいるのだ。
安倍総理は忘れてしまったのだろうか。バブル崩壊後の長期不況を抜け出そうと、時の政権が毎年10兆円規模のカネを公共事業につぎ込み続けてきたにもかかわらず、景気回復は一向にかなわなかったことを。公共事業への過剰投資で国の借金は膨れ上がり財政危機を悪化させただけでなく、デフレ経済の泥沼にズブリとはまっていったことを。
いま日本経済に必要なのは、大胆な規制緩和であり、政官業が癒着する土建化はこれに逆行する。しかし、安倍総理は「やる、やる」と言っていた規制緩和にはまったくやる気がないようで、むしろ官僚たちの骨抜き≠見て見ぬふりで許容してしまっている。
実際、「安倍総理自らが『アベノミクスの成長戦略の要』になると言っていた産業競争力強化法案は、フタを開けてみれば経済産業省を焼け太りさせる政策にしかなっていない」(経済ジャーナリストの町田徹氏)。
さらに安倍総理はトルコへ外遊に出かけ、同法案を審議する国会を欠席。トルコではゼネコン大手の大成建設が同地で建設した海底トンネルを視察している。目線≠ェどちらを向いているかがよくわかる。
「霞が関のやりたい放題になっている象徴が、天下りの復活です。10月に日本政策金融公庫で細川興一副総裁が総裁に昇格する人事が発表されましたが、細川氏は元財務事務次官。今年6月には商工中金でも、トップに元経産事務次官の杉山秀二氏が昇格している。
実はあまり騒がれていませんが、来年4月からは時限立法でカットされていた公務員給与も元に戻る。国民に痛みを強いる消費増税をしながら公務員は身を削らず、着々と利権を回復させているのです」(経済ジャーナリストの磯山友幸氏)
公共事業のバラマキを謳歌する政治家、「失地回復」に余念がない公務員。そうしてコンクリートと公務員に食い尽くされるカネは、われわれが汗水流して働いた給料から支払う血税であることは言うまでもない。
こんなことを続けていたら、いくらカネがあっても足りない。ただでさえ、日本の財政問題は緊急事態≠ネのである。総理はある日、こう宣言するに違いない。
「消費税を15%に上げる決断をした。日本のために、日本の将来のために、国民は痛みに耐えて欲しい」
土建政治のツケは、すべて国民に回される。だから、増税がこれでもかと繰り返されることになる。土建政治が幕を開け、われわれ国民は終わりのない「増税地獄」のスタートラインに立たされたのである。
「週刊現代」2013年11月16日号より
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