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日経新聞と慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所がアーミテージ氏を招いて開催した「白熱討論 アジア新世代〜問われる日米の絆」に関する記事の転載である。
集団的自衛権云々の前に米軍の日本駐留を許容しないという重大な路線の違いはあるが、シリア・アサド政権懲罰攻撃問題を除き、とりわけ表題にした事項について、アーミテージ氏の考え方に賛同する。
対露外交では、日本の少なからぬ人が“冷戦思考”を引きずっているが、アーミテージ氏が説明した「ロシアは資源が多いが人口は少ない。一方、中国は資源が少ないが、人口は多い。ロシアはこの状況に恐れを抱いている」という見方や「米国は日本が極東に投資し、ロシアが日本にエネルギーを供給することを望んでいる」という方向性に同意する。
アーミテージ氏の考えを聞けば、安倍首相の様々な言動のワケが見えてくる。
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アジア安定 日米の責務
集団的自衛権に道を
日本経済新聞社と慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所は「白熱討論 アジア新世代〜問われる日米の絆」を10月30日、慶応大三田キャンパス(東京・港)で開いた。政治・経済分野での存在感が高まる一方で、紛争の火種を抱えるアジア地域の安定に日米がどう関与できるかを巡り、学生らとリチャード・アーミテージ元米国務副長官が活発に意見を交わした。討論後、学生から「若い世代の行動力が問われている」との意見が聞かれた。
「中国を国際秩序に組み込むための具体策とはなにか」(男子大学生)
アーミテージ氏は日本が環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉への参加を決めたことを引き合いに、「中国も突然、TPPに関心を示すようになった」と指摘した。「同じルールを受け入れるなら中国もTPPに参加できる。(秩序に組み込む)ひとつの方法だろう」と述べた。
一方で中国の台頭には警戒感も示した。「歴史上、大国が出てくると政治的、経済的な緊張を生む。中国は責任あるプレーヤーとしての責任を示す必要がある」
日本政府による沖縄県・尖閣諸島の国有化には理解を示した。来場者に事前に実施したアンケートでは「国有化を支持する」との回答が一般で81.5%、学生で62.0%だった。政府が何も手を打たなければ、中国が実効支配に乗り出してくることを警戒するとの声が目立った。
「日本が集団的自衛権の行使に踏み切らなかったとしても、日米の友好、同盟関係は続くのか」(女子大学生)
アーミテージ氏は「現状のままでも同盟は百パーセント続く」と強調したうえで、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍拡といった課題を列挙した。「集団的自衛権の行使を禁じることは、日米同盟の阻害要因となる。これを取り除くことができれば、東アジアの平和と安定により貢献できる」と憲法解釈の変更が望ましいとの考えを強調した。
沖縄に集中する在日米軍基地を巡っては、周辺の都市化が進んだ普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古への早期移設を改めて求めた。そのうえで「基地の共同利用などで本土に一部の基地を移せないか。個人的にはイエスだ」と語った。
「ロシアは冷戦時代の敵国。米国の本音は(日ロの接近を望むことと)違うのではないか」(男子高校生)
「北方領土問題の解決と日ロ平和条約の締結を期待する」との立場をとるアーミテージ氏に対し、「米国は日ロ関係の改善を本音では望んでいないのでは」と質問者が迫った。
ただ、壇上から返ってきたのは「ロシアは資源が多いが人口は少ない。一方、中国は資源が少ないが、人口は多い。ロシアはこの状況に恐れを抱いている」との冷静な分析内容だった。欧州を向いていたロシアが中国を警戒してアジアに関心を寄せているとの見方を示したうえで、日ロの関係改善に期待を寄せた。
「米国は日本が極東に投資し、ロシアが日本にエネルギーを供給することを望んでいる」とも指摘した。日ロの関係強化はアジア地域の軍事バランスの安定にとどまらず、日本のエネルギー安全保障の観点からも望ましいとの考えを示した。
「韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が9月末、訪韓したヘーゲル米国防長官に安倍政権への不満を表明したことをどうとらえているか」(一般男性)
米国のケリー国務長官とヘーゲル国防長官は10月3日にそろって千鳥ケ淵戦没者墓苑(東京・千代田)を訪れた。アーミテージ氏は「個人的見解」と断ったうえで「両者は日本向けに、政府要人の靖国神社参拝は危険とのメッセージを発した」との見解を示した。「(千鳥ケ淵には)兵士たちの遺骨が納められていることに意味がある」とも語った。
一方で「過去の戦争で米軍が民間人に及ぼしてきた被害についてどう思うか」(男子大学生)との問い掛けには「戦争で無実の人々が傷つくのは事実。米国が十分に成熟していて、常に過ちを認めて謝罪することを期待している」と答えた。
「シリア問題で、オバマ米大統領の指導力や実行力に不信感を持った」(女子大学生)
米大統領の威信低下を危惧する意見には「オバマ氏自身がシリアが越えてはならない(化学兵器の使用という)一線を引いた」と指摘。「シリア側がその一線を越えたのに攻撃しなかったことは大統領の威信にかかわる」と嘆いた。
リチャード・アーミテージ氏 1967年、米海軍兵学校を卒業。国防戦略の専門家で、レーガン政権の国防次官補やブッシュ前政権の国務副長官などを歴任。現在は政策コンサルティング会社の代表を務める。米国の知日派の重鎮で共和党系ながらオバマ政権の対日政策にも影響力がある。68歳。
[日経新聞11月6日朝刊P.31]
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ジョセフ・ナイ・ハーバード大学特別功労教授 ビデオメッセージ 地域安定、経済に利益
東アジアの将来は「安定の三角形」、すなわち日米、米中、日中関係の良好な関係にかかっている。3カ国の関係の安定によって、投資家や貿易関係者が活躍するチャンスを得られる。東アジア域内のすべての国々、さらには世界経済にも利益をもたらす。
(金融、株式などの)市場には安定した安全保障の環境が必要だ。東アジアではこの50〜60年、安全保障の枠組みは日米の安全保障体制に依存してきた。
これは侵略の可能性や戦争が起こる危険をなくし、人々に将来に対する安心感と安定感をもたらすものだ。東アジア経済の繁栄を今後も維持するには、日米間の緊密な関係は欠かせない。
また日米両国は中国を「責任ある利害関係者」として国際システムに受け入れることを考えていく必要がある。東アジアの将来は明るいと考えているが、これまでの良好な日米関係を損なわないように、じゅうぶん注意を払っていくことがその前提となる。
[日経新聞11月6日朝刊P.31]
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カート・キャンベル・前米国務次官補 ビデオメッセージ 靖国参拝、近隣国配慮を
日本国内には周辺地域の安保により大きな役割を負わなければならないというムードがあるようだ。集団的自衛権によってその役割を果たすことは(東アジアの)安全保障の環境変化への対応として自然なもので理にかなう。日本は中韓や東南アジアに対して理解を求めていくべきだ。
東アジアには複雑な歴史問題が残っている。従軍慰安婦や領土紛争の問題などだ。米国は仲裁者ではなく、静かにアイデアを提供する立場をとっている。
日韓関係が悪化していくのは痛恨の極みで、米国の戦略的な利益にもならない。過去の違いにこだわるよりも、未来志向であるべきだ。
靖国神社の参拝を巡る議論は、日本の国内だけでなくアジア全体で強い感情を引き起こす。アジア各国では懸念があるのも事実だ。参拝は日本人自身が決めることだが、個人的には非常に慎重に事を進めることを勧めたい。
[日経新聞11月6日朝刊P.31]
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キーワード
■日本の集団的自衛権の行使 同盟国が武力攻撃を受けたとき、自国が攻撃を受けていなくても一緒に反撃する権利を「集団的自衛権」という。現在の政府の憲法解釈では、憲法9条で自衛隊による武力行使は「自衛のための必要最小限の範囲」とされ、集団的自衛権は行使できない。
一方、安倍晋三首相は日本も地域の安全保障に貢献する責任があるとする「積極的平和主義」を掲げる。集団的自衛権の行使の解禁をめざし、憲法解釈の変更に向けた検討を進めている。公海上で米国艦船が攻撃された場合などを例に挙げる。
首相は台頭する中国とのパワーバランスを念頭に、米国との連携強化をめざす。「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が年内にも結論を出す見込みだ。
■中国の海洋進出 中国が軍事力を背景に、東シナ海や南シナ海に進出し、領有権を主張する動き。沖縄県・尖閣諸島の近海に艦船を派遣して日本に圧力をかけている。スプラトリー(南沙)諸島やパラセル(西沙)諸島などにも艦艇を派遣しており、ベトナムやフィリピンなどとの摩擦も深まっている。
米国など先進国の国力が相対的に低下するなか、中国が世界第2位の経済大国になったことで大国としての自覚を強めていることも背景にあるとされる。日本政府は「力による現状変更の試み」と批判。東南アジア諸国連合(ASEAN)各国は国際法にもとづく解決を要求し、このほど南シナ海における「行動規範」を作ることで中国側と合意した。
[日経新聞11月6日朝刊P.31]
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来場した学生の声
アーミテージ氏との討論では、集団的自衛権の行使や沖縄県・尖閣諸島の国有化などを巡り、活発な議論が交わされた。参加した学生に意見を聞いた。
東工大大学院の伝田純也さん(24)は首相の靖国神社への参拝について「隣国との摩擦を引き起こしてまで参拝することが国益にかなうのかと考えるようになった」と語る。これまで隣国への配慮は不要と考えてきたが、討論を聞いて考えが変わってきたという。
早稲田大4年の吉永信吾さん(22)は従軍慰安婦問題に関するアーミテージ氏の発言が心に残った。「『(被害者の数の問題ではなく)被害者が1人でも私なら謝罪する』という発言が特に印象に残った」と納得した様子だった。
歴史問題の解決策を質問した慶応大3年の川上亜梨沙さん(21)は「国際社会における日本の役割が大きいことがわかった」と従来の認識を改めた。「親身に答えてくれたことが印象的だった」と感想を語った。
参加した学生からは討論を通して、国際政治や国際問題に対する関心が深まったという感想も多く聞かれた。
慶応大3年の三橋舞さん(21)は「アーミテージ氏が沖縄の普天間基地の問題で、日本のために真剣に考えていることが伝わった」と述べた。そのうえで「世論をつくっていくのは私たちなのに、今まであまりに無関心であり過ぎたと思う」との感想を残した。
国際基督教大1年の中堂薗咲良さん(18)も「国際政治に興味を持つ学生が集まり、多くの質問が出た。とても刺激になった」と明るい表情で話した。吉永さんは「若者が自らアイデアを示し、日中、日韓関係を導く必要がある」と強調した。
[日経新聞11月6日朝刊P.31]
- 日本外相、安倍内閣は「侵略」を認め、村山談話を継承 あっしら 2013/11/08 17:46:45
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