07. 2013年11月08日 13:43:50
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JBpress>日本再生>農業 [農業] 減反をよそ目にせっせとコメが作られる理由 その農業改革案では甘すぎます(その2) 2013年11月08日(Fri) 有坪 民雄 前回、コメの生産が大規模農家に集約された場合のシミュレーションを行いました。大規模専業農家にコメ生産を集約することが非現実的ならば、農林水産省は耕作放棄地の増加を防ぐためにどのような策を採っているのか。もしくは採ろうとしているのでしょうか。減反の枠外で作られる「新規需要米」 コメに「減反」と呼ばれる生産制限が行われていることはよく知られています。しかし近年、減反枠を超えたコメの生産が恒常的に行われるようになっています。加工米、米粉米、飼料用米などと呼ばれるコメです。これらは一般に「新規需要米」と呼ばれています。 加工米とは、おかきやあられといった米菓や、味噌、酒(通常の酒米とは別扱い)など加工食品に使われます。米粉米は名前の通り米粉用で、これらはいわゆる飯米(はんまい)と呼ばれる、ご飯に使われる普通のコメと同じものです。飼料米には、家畜に米を食べさせる場合と、コメが成熟するまでに刈り取った稲をサイレージ(サイロに詰めて発酵させること)して食べさせる場合があります。こちらの場合は専用品種を使うこともあります。 いずれの米も、ご飯の用途に使うことが禁じられているため、いくら作っても飯米の需要を圧迫することがないとされています。実際には、イオンの納入業者であった三瀧商事(三重県四日市市)など一部の悪質業者がこっそり飯米に転用していると見られ、偽装米を安く売って米の価格を押し下げているのでしょうが、表面的にはそういうことになっています。 これらの新規需要米は減反の枠外にあり、価格が安かったり、買ってくれる業者を自分で探さないと作れないなどの制限があったりしますが、補助金による生産振興もあっておおむね農家から受け入れられています。 耕作放棄地はなぜ誕生するのか もともと米が余って減反をしていたのに、減反の枠外でこうしたコメの生産を振興するのは、農業界にいない人には理解が難しいかもしれません。 減反政策が始まってから、農家は米を作りたくとも好きなようには作らせてもらえませんでした。減反率30%なら、3割の農地は、コメ以外の作物を作らなければならなかったのです。1ヘクタールの農地なら、コメが作られるのは70アール分だけで、30アール分は野菜など別の作物を作っていたわけです。これは、専業も兼業も同じです。 前回説明したように、コメ以外の作物を作るとコメの何倍もの労働時間がかかりますから、農家は他の作物づくりに手を取られました。専業農家は、それでもなんとか回していたところが多かったようですが、いわゆる「三ちゃん農業」(父がサラリーマンに出て、じいちゃん、ばあちゃん、かあちゃんの3人が農業をすること)で回していた兼業農家は、じいちゃんばあちゃんの高齢化によって次第に回せなくなってきます。 そうした場合、窮余の策として主に3つの対策が採られました。一番簡単だったのは、農地を専業農家に貸すことです。日本の多くの大規模農家は、そうした貸し手の供給が旺盛だったため大規模化できました。 しかし、専業農家が「借りてくれ」と言われた農地を全て借りてくれるわけではありません。大規模化すれば、当然効率を追求していかなければなりませんから機械は大型化しますし、大型機械を使うなら、機械を入れやすくオペレーションが容易な土地しか要りません。湿田に大型コンバインがはまりこんで動けなくなったりすることなど絶対に避けたいのです。 また、大規模化するにも限度があります。作物の価格がドンドン上がっているのなら、一家族で回せる限界まできても、人を雇ってもっと大規模になろうとするモチベーションも働くことでしょう。けれども、米の価格は下がっていくわ、野菜の価格は乱高下するわでは、おいそれと投資もできなければ人も雇えません。土地の十分な供給があっても、需要が追いつきません。そのため農地は恒常的に借り手市場になっています。農地を貸そうとしても専業農家が簡単に借りてくれないため、近年では借り賃無料など当たり前。農地を借りてもらうために、貸し手が賃料を出すところまであります。 そんなわけで、借り手が見つからなかった場合、兼業農家は残り2つの手段しかありません。 1つは減反によってコメが作られない農地に、売るつもりもない(売れない)コスモスなどを放任栽培して書類上作ったことにするのです(これは近年批判も多く、やりにくくなってきています)。そして最後の手段は、「調整水田」と言ってコメを作らないが農地に水を入れて田植えができる状態のまま秋までその状態を維持することです。 それでも体が動かなくなってできなくなったら、耕作放棄地が誕生します。 平成23年3月農水省作成の文書「耕作放棄地の現状について」によれば、平成22年段階で耕作放棄地は36.6万ヘクタールで、全農地の1割程度が耕作放棄地となっています。 耕作放棄地をこれ以上増やさない、減らそうとする場合、こうした現場視点の歴史的な事情を勘案しないと実現性に疑問がつくのは当然です。 兼業農家がコメを作るのは、それしか選択肢がないから赤字であっても作り続けるのです。しかし、それも不可能になってきたから耕作放棄地が増えているのです。よって、耕作放棄地をできるだけ出さないようにするには、こうした減反の対象外となるコメ、つまり「新規需要米」の生産を拡大しなければならない・・・農水省がそう言っているわけではありませんが、農水省の政策の裏を読もうとすると、下手な識者の戯言よりも農水省の方がよほど現実を見ているように私には見えます。 耕作放棄地が増えるとどんな害が生じるのか ここで、拙論に対する、想定される反論について答えておきましょう。「耕作放棄地など放っておいたらいいでのはないか? そんなもののために補助金など税金を投入するのが合理的とは思えない」といった反論です。 こうした意見に対して行われる反論は、「農地は何年も作らないと使用不能になる」から維持しなければならないというものが多いようです。 しかし、ここで言う「使用不能」とは、草刈りなどしないで潅木などが生え放題になってしまう農地のことを指すと思われます。実際は耕作放棄地といえどもここまで荒されることはそう多くなく、夏に生えた草を刈って植生が進まないようにしているものです。そうしておけば、水田ならすぐにでも、畑作なら雑草対策に何年かてこずるでしょうが、使用は可能です。 長期間放置され、段々畑の石垣が崩れているとか、樹齢20年の木が生えているなんて場合は別としても、潅木が生えている程度の荒れた農地であっても、それなりの機械があれば10アール程度なら3日あれば使用可能状態に戻せるでしょう。 では耕作放棄地が増えることで生じる本当の害は何か。1つは耕作放棄地が害虫の住処(すみか)となることが挙げられます。耕作放棄地の周囲で防除を徹底しても、住処となっている耕作放棄地に残っていれば防除が効かなくなったら害虫はおいしいエサを求めて周辺農地にはびこります。 もう1つは、農村の崩壊が誰の目にも見えることです。ビル街でも住宅街でも、1割ほどの建物が崩壊している街を想像してみて下さい。耕作放棄地は、農村における崩壊した建物のようなものなのです。 今のデトロイトがそんな感じになっているのかもしれませんが、一部のビルや住宅がそんな状態になっても放置しておけばいいとおっしゃるなら、私としてはそうですかとしか言えません。しかし、美観を損ね、社会的衛生によくないからそうしたビルや住宅地を取り壊さなければならないと言うなら、同じ口で農村の耕作放棄地を放置できる合理的な説明が必要でしょう。 耕作放棄地の増加は防がれていない 閑話休題。ただ、そうは言っても、この政策で耕作放棄地の増大のペースを相当緩やかにしているとは言えるでしょうが、耕作放棄地の増加を防がれているかと言うと、防がれていません。 全国の動向を私がつぶさに見ているわけではありませんが、おそらくは近年どんどん増えている、高齢化による離農者の農地を、残った農家で消化しきれていないのだろうと思われます。 そのため、残った農家は、TPPうんぬん以前に、耕作放棄地をなんとかするために嫌でも大規模化していかざるを得なくなってきています。 大規模農家を育てるために、金融面の支援は以前から行われています。これとは別に、まだ未確定ながら、農水省は別の策も打とうとしています。次回はそれに触れることにしましょう。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/39101
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