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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131106-00000000-fukkou-bus_all
復興ニッポン 11月6日(水)16時56分配信
小泉純一郎元首相の「脱原発」発言が話題になっている。小泉さんが公の場で「脱原発」の発言したのは、9月24日、「プレジデント」誌の創刊50周年記念イベントでの講演だった。次のように語った。
■小泉元首相は「直感力の天才」
「原発が動かなくなってからもう2年くらいになる。政治が早く、将来原発ゼロにしようという目標を打ち出せば、多くの国民がどんどん協力すると思いますよ」
この発言が永田町に伝わって話題を呼び、メディアも大きく報じたのだ。原発再稼動を目指す自民党にしてみれば、「困ったな」といったところだろう。
私は、小泉さんという人は「直感力の天才」だと思っている。
2005年、小泉さんが首相のとき、日本道路公団を分割民営化した。かつて「文藝春秋」誌で猪瀬直樹氏が財政投融資をめぐる諸問題について「日本国の研究」を連載していたが、小泉さんはおそらくそれを読んだのだろう。
そして、道路の問題はおもしろいと思ったに違いない。猪瀬さんを呼んで話を聞き、道路公団民営化を打ち出した。
■「前代未聞。その後もないんだ」
それからさかのぼる話だが、2001年、小泉さんは自民党の総裁選に出馬するかどうか迷っていた。私はある人に頼まれて小泉さんに会った。小泉さんは、出馬について「どう思うか」と聞いてきた。「経世会とまともに喧嘩する気があるなら、私は支持してもいい」と答えた。
「でもね、殺されるかもしれないよ」と付け加えると、小泉さんは「殺されてもやる」ときっぱり言った。
経世会をつぶすと言っても、一般の人にはよくわからない。小泉さんは総裁選挙戦の街頭演説で「自民党をぶっ壊す」と言い換えて熱弁をふるい、大衆の圧倒的な支持を得た。こういう感覚がすごいと思う。
直観力の天才だと感じたことはほかにもたくさんある。
たとえば「前代未聞。その後もないんだ」と言って、2002年9月、いきなり首相として北朝鮮を訪問し、拉致被害者5人を帰国させた(2004年に再訪し、新たに5人の拉致被害者が帰国)。
■2005年の「郵政解散」でも直感力が働く
2005年の郵政民営化問題でも、最後は小泉さんの直観力が働いた。
郵政民営化関連法案については当初、自民党内から反対する議員が続出し、賛成派はほとんどがいなかった。自民党の長老議員は、「衆議院には(法案の審議を)かけるな。継続審議にしたほうがいい」と言った。審議したら必ず否決される。否決されたら総辞職だ。長老たちはそう捉えていたのである。
法案は衆議院で辛くも可決されたものの、参議院では否決された。
小泉さんは参議院で採決する前から「参議院で否決されれば直ちに衆議院を解散する」と言っていた。反対派の亀井静香氏らは、衆議院解散のような無茶なことはできないだろうと考えていた。
ところが、小泉さんは衆議院を解散し、自ら「郵政解散」と名づけ、「命をかける」「政治生命を懸ける」と威勢よく言い放ち、大衆の人気を得た。当初、誰もが負けると思っていた総選挙は、小泉自民が圧勝した。このときメディアが使ったのが「小泉劇場」という言葉だ。
このように小泉さんは直感力に優れている。だから今回、この時期に小泉さんが「脱原発」と言ったことに私も関心を持った。
■フィンランド視察で小泉氏が確認したこと
小泉さんは今年8月中旬、フィンランドを訪問し、建設が進む世界初の使用済み核燃料の最終処分場「オンカロ」を視察している。地下400メートルに掘った空間に使用済み核燃料を保管する施設だ。
そこで使用済み核燃料を無害化するために10万年以上の年月がかかると聞き、小泉さんは「原発はダメだ」と確信して「脱原発」に傾いたようだ。この直感力も、ある意味ではすごい。
実はこの視察に日本の原発メーカーの幹部が同行していた。彼らは小泉さんに、もし高速炉で核燃料サイクルが実現できれば、使用済み核燃料は300年で無害化でき、量も10分の1に減らせると話した。だが、小泉さんはそれを理解してくれなかったという。
原発は様々な問題を抱えている。福島第一原発では汚染水の問題があり、廃炉の問題もある。使用済み核燃料の最終処理については、世界の多くの国がまだ最終案を持っていない。
そうしたなかで日本の最大の問題は、原子力を含めエネルギーの総合戦略ができていないことだ。原発だけをとってみても、省庁の縦割り問題がある。原発を推進するのは経済産業省、除染は環境省、高速増殖炉は文部科学省が担当する。方々に分かれていては総合戦略が策定しにくい。
■エネルギー総合戦略の策定を後押しか、だが問題も
日本の原発には汚染水問題、廃炉問題、使用済み核燃料の最終処理問題、そして再稼働の問題もある。どれも対応は遅れている。エネルギーの総合戦略を立てることができないのが現状だ。
今回の小泉「脱原発」発言は、その総合戦略の策定を後押しすることになるのではないか、と私は見る。自民党内には「小泉発言は困ったものだ」という声もあるが、もし脱原発の世論が再び高まれば、将来のエネルギーのあり方を前倒しして考えざるをえないからだ。
しかし、私は小泉発言には二つの問題があると思う。
使用済み核燃料の最終処理に10万年かかると聞いて小泉さんは「ダメだ」と考えたが、すでにある使用済み核燃料については、いずれ最終処理しなくてはならない。米国やイギリス、フランスなどがまだ最終処理していないのは、今後、新しい技術が開発できると期待しながら研究開発を続けているからだ。今急がなくても、新技術の完成を待ってから着手してもよいという考え方である。
もう一つ、原発ゼロは「いつなのか」について、小泉さんは言及していない。私は、原発は過渡的なエネルギーだと考える。100年、200年先も原発を利用すべきだとは思っていない。だが、少なくとも30年、40年は原発と共存しなければならないだろう。「脱原発原理主義」はあるが、「原発推進原理主義」はない。
原発が動かなくてもやっているではないか、と小泉さんは言うが、貿易収支の赤字は今年上半期で約5兆円にも上る。液化天然ガスなどの輸入代金がかさんでいるためだ。この問題をどう考えるのだろうか。
■エールを送る野党は現実の問題を認識しているか
脱原発であろうが、原発推進であろうと、エネルギー総合戦略を策定し、前述した様々な問題に取り組まなければいけないという意味では同じなのだ。やるべきことはやらなければいけない。
小泉「脱原発」発言に対して、野党がエールを送っている。生活の党の小沢一郎代表が「冷静に日本を考える人であれば、たいてい行き着く結論だろう」と評価すれば、共産党の志位和夫委員長も「小泉氏の発言に注目している。原発ゼロの一点でどんな立場の方とも協力を図る」と歓迎する。
野党は小泉さんの味方のように見えるが、彼らは現に横たわる原発の様々な問題を十分に認識しているだろうか。単に「小泉劇場」の再来では、問題は解決しないのだ。
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