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日本とドイツはアメリカの敵
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★「田中良紹氏の視点ー(2013/10/29)」★ :本音言いまっせー
ドイツの週刊誌シュピーゲルは、アメリカによるメルケル首相の電話盗聴は2002年から10年以上も行われていたと報道した。メルケル氏は野党の党首だった時代から盗聴されていたことになる。イラク戦争に反対したシュレーダー首相も02年から盗聴の対象となっており、盗聴のきっかけはイラク戦争に反対した国の切り崩しにあったとみられる。
当時はフランスのシラク大統領もイラク戦争に強く反対していたから、フランスも盗聴の対象にされたはずである。そしてアメリカはイラクが大量破壊兵器を保有しているという嘘を国際社会に流し、それを根拠に一方的に戦争に踏み切った。アメリカ議会をウォッチしていたフーテンは、当時ラムズフェルド国防長官がドイツとフランスを「古いヨーロッパ」と激しく非難したのを記憶している。
アメリカから非難されたシュレーダー首相は2005年の総選挙でメルケル氏率いる保守政党に敗れ、またシラク大統領も2007年に新自由主義者サルコジに政権を譲ることになった。「古いヨーロッパ」とアメリカが非難したドイツとフランスは共に親米政権に代わった。フーテンは背後にアメリカのソフト・パワーの存在を感じた。
各各国の世論形成にアメリカの関与を感ずる事がしばしばある。アメリカを代弁する学者、評論家、ジャーナリストらが世論に働きかけ、結果的にその国の政治がアメリカに操られる。始末が悪いのは代弁者が自らを代弁者と思っていない事である。普遍的な正義を主張しているつもりでいるが、まんまとアメリカに操られている。
そうした情報戦を制するには世界に張り巡らせた情報網が必要となる。冷戦時代には東西対立と言う図式の中で敵は明確であった。しかし冷戦が終わると敵が見えない。ソ連が崩壊してアメリカが真っ先に手を付けたのは核拡散防止と諜報活動の見直しであった。ソ連をターゲットにしてきたCIAをどうするか、アメリカ議会はその議論を2年以上続け、結論は諜報機関を冷戦時代以上に拡充強化する事になった。
元CIAのスノーデン氏の亡命によって通信傍受などシギントと呼ばれる諜報活動の実態が暴露されつつあるが、冷戦終結後のアメリカの議論ではヒューミントと呼ばれる人的諜報活動にこれまで以上に力を入れるべきだと結論付けられた。つまりメディアや民間組織の人間と接触して情報収集を行う一方、操作情報を流して国民を扇動するのである。それをアメリカは冷戦時代以上に行っている筈である。盗聴だけに目を奪われてはならない。
アメリカ議会で冷戦後の諜報活動の見直しが議論されていた頃、もう一つの重要な動きがあった。それは東西対立という二極構造からアメリカが世界を一極支配する構造への転換である。チェイニー国防長官とウォルフォウィッツ国防次官の下で作成された「国防計画指針」にそれが現れている。
これについては以前にも書いた事があるが改めて内容を繰り返す。「国防計画指針」はペンタゴンの機密文書であったが、国民に内容を知らせるべきだと考える者がニューヨーク・タイムズ紙とワシントン・ポスト紙にリークして明るみに出た。そこにあるのはネオコンの世界戦略である。
まず「アメリカに対抗できる能力を持つ国が出現する事を許さない」と書かれてある。そしてアメリカは優越した軍事力を持ち、他の国が「正当な利益」を追求する事を許容するが、何が「正当」かはアメリカが定義するとしている。またアメリカは潜在的な競争国がグローバルな役割や地域的な役割を果たす事を阻止するメカニズムを構築し、同盟国日本がより大きな地域的役割を担う事はアジアを不安定化させるとして、アメリカがアジアで優越した軍事力を維持し続けると書かれている。
アメリカの潜在的な競争国とされたのはロシア、中国、日本、ドイツである。民主党のバイデン上院議員は「最も親密な同盟国である日本とドイツの横っ面を張り倒すような内容だ」と批判したと言うが(伊藤貫著『自滅するアメリカ帝国』)、民主党のクリントン政権はソフト・パワー戦略を提唱する国際政治学者ジョセフ・ナイの進言を入れて、アジアに10万のアメリカ軍を維持する事を橋本政権に認めさせ、日米安保条約を「再定義」した。
公式には「最も重要な二国間関係」とリップサービスするが、本音では「潜在的敵性国」と日本とドイツを見ているアメリカが、日本とドイツを諜報活動の対象にするのは当然である。それがメルケル首相の電話盗聴に現れた。きっかけはシュレーダー首相がイラク戦争に反対した事だが、それが親米派メルケル氏の電話盗聴につながり、メルケル氏が首相になるとドイツがEUの中心国としてドルに対抗するユーロ圏を主導する立場になったことから盗聴は続けられた。
日本と同じ敗戦国でありながら冷戦後のドイツはヨーロッパを主導する国家になった。一方の日本は経済摩擦でバッシングされていた頃はアメリカの盗聴の対象であったが、冷戦が終わってからは「何でも言いなり」の従順な属国となった。盗聴などしなくとも進んで手の内を見せるような国である。存在感をまるで喪失していった。
そして今ではアメリカの情報に頼るため「特定秘密保護法」を成立させようとしている。この国にはどんな嘘を流しても信ずるはずだとアメリカは考えているだろう。自らの情報収集能力を高める事もせずに「情報の共有が重要」などと言う国は国家の体をなしているとは言えない。
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