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2013年10月28日
『週刊金曜日』が10月18日号=964号で
「日本を売る秘密交渉TPP」
と題する特集を掲載した。
米国のオバマ大統領は、インドネシアで開かれたAPEC首脳会議の場を活用して、TPP大筋合意の妥結を実現しようとしたが、会議そのものへの出席をドタキャンして、この目論見を実現できなかった。
米国では与党民主党が下院で少数与党に陥っている。
このため、大統領提案がなかなか議会を通過しない。
公的医療保険制度を拡充する、いわゆるオバマケアの提案に対して、共和党の茶会派=ティーパーティーグループが強硬に抵抗しており、このためにさまざまな政治決定が遅れてしまっている。
予算は成立せず政府機関が一部閉鎖された。
債務上限引上げ法案の成立が難航し、米国国債デフォルトのリスクさえ顕在化している。
オバマ大統領は3年の任期を残して、早くもレームダック化し始めている。
このオバマ大統領がTPPの早期妥結を促しているが、米国の威信はすでに低下し、TPP妥結の道筋はまだ見えていない。
そもそも、オバマ大統領が主導するTPP交渉だと言われるが、そのオバマ大統領にTPPに署名する権限は現時点で存在しない。
TPPに署名する権限を持たない米国大統領とTPP交渉して、その妥結を急いで日本が得るものが何かあるのか。
安倍首相は年内妥結に向けて日本が積極的役割を果たすと息巻いているが、日本が交渉妥結を急ぐのは、一体誰のためなのか。
米国の合衆国憲法1条8の3は、通商権限が議会にあることを規定している。
大統領がTPPに署名するには、議会が大統領に通商権限を一時貸し出すTPA(貿易促進権限)法を可決しなければならない。
ところが、現段階で、この法案は審議入りすら実現していない。
この法律は2007年に失効し、新しい立法措置が必要となっているのである。
米国議会は、共和党と大統領府とが対立し、TPA法以前に、予算問題、債務上限問題で暗礁に乗り上げている。
オバマ大統領はこのためにAPEC首脳会議への出席すら断念したのである。
米国の事情はTPPどころでなく、そのためのTPA法整備も遅れているのが現状なのだ。
安倍首相は、日本はいまやTPP交渉で重要な役割を担っていると発言するが、TPPに対する日本のあるべき姿勢を完全にはき違えている。
日本は現在、TPP交渉に参加している。
しかし、TPPそのものに参加するかどうかは、まだ白紙の状態である。
自民党は総選挙の際に、TPPに参加するための前提条件を公約として主権者に提示している。
ここで提示した条件が整わなければ、TPPには参加しないことを宣言したものである。
実際、総選挙の際に自民党は、
「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。日本を耕す自民党」
という文字を大きく明記したポスターを貼り巡らせて選挙活動を展開した。
その自民党が、本年3月15日に、TPP交渉参加を決めたこと自体、ペテンというほかない。
佐久総合病院の色平哲郎氏はTPPを
「Tとんでもない、Pペテンの、Pプロジェクト」
と表現するが、とってもペテンなプロジェクトであることは間違いない。
安倍首相は、「聖域なき関税撤廃を前提とする限りTPP交渉には参加しない」と言ってきたと繰り返す。
「聖域なき関税撤廃」は前提条件ではないことを確認できたから、TPP交渉に参加するのだと居直った。
このような言葉の綾をかいくぐるような手口を「ペテン」と呼ぶのである。
百歩譲ってTPP交渉への参加を認めるとしても、容認されるのはTPP交渉への参加であって、TPPそのものへの参加ではないことをはっきりさせておく必要がある。
交渉に参加しても実害はないが、TPPそのものに参加すれば、恐ろしい実害が次から次へと出てくるのだから、TPPに参加するかどうかの判断に際して要請される慎重さは、TPP交渉に参加するかどうかの段階での慎重さとは比較にならないことを銘記しなければならない。
繰り返し記述して強調するが、現段階で日本はTPP交渉に参加しているが、TPPそのものに参加するかどうかは、まったく白紙の状態である。このことを明確にしておくことが絶対に必要である。
したがって、「いまや日本はTPP交渉で重要な役割を期待されている」などの表現は、不適切極まりないものなのだ。
TPPに参加するかどうかについて白紙である日本が、TPP交渉で主導的な役割を果たすなどというのは、議席も持たない一般人が議会を仕切ろうとするようなものなのである。
結論から言う。
日本のTPP参加はあり得ない。
その理由は、TPPが、自民党が明示した公約に反するものだからである。
自民党は日本がTPPに参加できる条件を具体的に6項目明示した。
この6項目をクリアできなければTPPには参加しないことを確約したものである。
これは選挙の際の公約だから、必ず守らねばならない。
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