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2013/10/25 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
「日本を取り戻す」は、安倍首相が再登板の際に掲げた“基本路線”だ。どんな未来をイメージした言葉なのかは分からない。「美しい国」もそうだった。彼の発言からは目指す国家像が見えないのだ。集団的自衛権をめぐる動きを見ていると、単に戦前回帰を夢想しているだけなのかとも思えてくる。
ただ、少なくとも、成長戦略の柱とされる「国家戦略特区」が日本にプラスにならないことは確かだ。むしろグチャグチャにして壊す恐れが強いだろう。日本はこれまで全国一律でいろんな権利を認めてきた。エコヒイキはなしだ。機会は公平に与えられる。その中で地域の特性に合った産品が生まれ、日本らしさが形成されていった。
特区では、そんなやり方が否定される。日本で承認されていない薬も使えるようになるし、海外の免許しかない医師も医療行為ができるようになるそうだ。暮らしの基礎となる安心や安全のルールはがらりと変わる。長年の経験や知恵で積み重ねてきた日本ならではの基準は、意味をなさなくなるのだ。そこはもう日本とは呼べないだろう。
容積率の緩和は日本らしい市街地の風景を失わせる。公立学校の運営を民間に委託する公設民営学校が可能になれば、すべての国民が同等の教育を受けられるという教育基本法の根っこはズタズタだ。それによってどれだけの教育的効果が見込めるのか不明だし、日本の人材教育の基盤は崩壊してしまう。インターナショナルスクールのための規制緩和ともいわれているが、日本の歴史も国語教育もない学校を認めることが、どうして「日本を取り戻す」路線にかなうのか。
特区の主眼は、「世界一ビジネスしやすい場所の提供」にあるそうだ。特区と称して外国の企業や労働者に特権を与え、呼び込もうとしている。だが、こんなものを設けなくても海外資本や人材はどんどん入ってきている。グローバル時代だ。しかも日本はインフラが整備された先進国である。「特区がなければ進出しない」なんて発想の企業が数多く存在するとも思えない。やはり安倍首相の言葉は理解不能である。
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