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http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MV58ZF6K50Y001.html
2013/10/24 07:54 JST
10月24日(ブルームバーグ):厚生労働省の村木厚子事務次官(57)は35年ほど前に幹部候補生として旧労働省に入省した際、1つの仕事を与えられた。20人から30人の同僚に毎朝お茶を用意することだ。
村木氏が配属されることが決まった職場では大激論の末、他の女性職員と同様に村木氏にもお茶くみをさせることを決定。官僚としての本来の事務に加え、お茶くみや若手の仕事である部屋の掃除もこなす毎日が始まった。村木氏は当時の上司に「本来やる仕事について私を甘やかさないでください」と要望。その結果、「彼は私に一人前の仕事をするようにトレーニングをちゃんとしてくれた」と若き日々を振り返る。
いまや中央省庁で史上2人目の女性事務次官に登りつめた村木氏。自らも2女の母として仕事と子育てを両立させながら働く女性をめぐる問題に取り組んできたが、後に無罪となった事件で約5カ月間も拘束される苦難の日々も乗り越えてきた。
安倍晋三首相は社会のあらゆる分野で2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上とする目標を掲げている。3万人の職員を抱え、少子化対策から年金、医療など多くの政策課題を抱える厚生労働省の事務方トップとなった村木氏はそのシンボル的存在だ。
ゴールドマン・サックス証券のチーフストラテジスト、キャシー・松井氏は女性就業率が男性並みに上がれば、約800万人の働き手を生み出し、国内総生産を14%押し上げる可能性があるという「Womenomics(ウーマノミクス=女性経済)」を提唱している。
■焦眉の課題
安倍首相は9月の国連総会での演説で、松井氏の考え方に言及し、「女性にとって働きやすい環境をこしらえ、女性の労働機会、活動の場を充実させることは、今や日本にとって、選択の対象となりません。まさしく、焦眉の課題です」と訴えた。
村木氏が09年に後に無罪となった事件で逮捕された際に厚生労働相だった舛添要一前参院議員は電話インタビューで、村木氏を高く評価しているものの、安倍政権による今回の人事については、「冤罪(えんざい)事件があり、彼女は非常に有名になったので、彼女を政治的に利用しているように見える」と指摘する。
9月のインタビューで「偉くなりたいとは思っていなかったが、ずっと仕事をしたいと思っていた」と語った村木氏。地元の高知大学で学生生活を送った1970年代は男女雇用機会均等法(86年施行)もなく、「民間企業が女性をあまりとりたがらなかった」時代。「差別をされない、結婚したり子供が生まれてもやめさせられない職場」という判断から、公務員の道を志すようになったという
旧労働省に入省したのは78年。村木氏によると、中央省庁がその年キャリア組として採用した約800人のうち女性はわずか22人。それでも旧労働省は毎年1人は女性キャリアを採用しており、後に政界に転身した森山真弓元官房長官、民間人閣僚となった赤松良子元文部相らが活躍していた。
■レッテル貼り
村木氏はこれまで特に印象深い仕事として女性や障害者の雇用問題に取り組んだ日々を挙げる。女性も障害者も「こういう仕事は向いていない」などとレッテル貼りをされ、可能性の芽をつまれてきた存在。「いろんなことができないと決めつけられている人たちの中にある可能性を探して、それが発揮できる環境を作る」仕事に取り組んできたと自負する。
知的障害者の職業訓練などを行っている社会福祉法人南高愛隣会(コロニー雲仙、本部・長崎県雲仙市)の田島良昭理事長は課長に就任した後に会った村木氏の印象について「非常に驚いたのは一生懸命に何かを勉強しようと感じですね。ふつう課長になられたら、もうみんな分かっているよという感じの方が多いですね。村木さんは一所懸命に質問された」と振り返る。
「とにかくいっぱい質問された。若い部下とワーワー言いながら、すごく見ていて楽しそう」だっという。
■子育て
村木氏も多くのキャリアウーマンと同様、仕事と子育ての板挟みとなり、壁にぶつかった。30歳代の半ば頃だ。「若い部下が男性の部下がみんな夜遅くまで働いている中でどうしても早く帰らなければいけない日がある。早くといっても夜の10時ぐらいとか、それでも早くというそういう状況だったので。すごく悩んだ時もあった」と振り返る。
それを乗り越えたのは「職場は私の代わりはいるけど、お母さんは1人。ダメだったら辞めよう」と開き直ることができてからという。
母としてもキャリア官僚としても着実に生きてきた村木氏に思わぬ試練が訪れる。09年に文書偽造事件で逮捕・起訴されたのだ。当時は厚生労働省の雇用均等・児童家庭局長。著書「あきらめない」(11年、日経BP社)で、村木氏は逮捕される際、検事に見つからないよう携帯電話から夫に「たいほ」の3文字をメールで送信し、2人の娘のことを託した。
裁判で弁護人となった弘中惇一郎弁護士は村木氏が拘束された際、村木氏の夫、太郎氏に「奥さんがいらっしゃらなくていろいろと家事しなくてはいけなくなって大変でしょ」と声をかけたところ、太郎氏はその点は大丈夫、昔から全部、自分がやっていましたから、と応じたという。
■150冊
約5カ月間に及んだ拘置所生活。「仕事をしなくていい、家事もしなくていい。ご飯は三度、全部出てくるし、洗濯もしてくれる」日々に、村木氏は約150冊の本を読んで時間を過ごしたという。
10年には無罪判決を受け、職場復帰する。弘中弁護士によると、担当検事が証拠隠滅で実刑となり、村木氏は3770万円の損賠賠償を国から勝ち取る。村木氏は裁判費用を除いた全額を寄付したという。
村木氏は自分が歩んだこの30年間で女性官僚を取り巻く状況は劇的に変わったと見ている。入省当時は「うちは女性はいらない。新入生のうちから男を自分のところにください」という課長が多かったが、10年ほど経過すると「とても出来の悪い男性をもらうよりはできのよい女性をください」となり、さらに10年後は「どっちでもいいからとにかく一番出来のいい子をうちにください」と言う課長が多くなったという。
■女性登用
それにも関わらず、女性の登用をめぐる中央省庁の状況は安倍首相の目標とはほど遠い。森雅子男女共同参画担当相が公表した資料によると、本省課室長相当職以上に占める女性の割合を2015年度末に5%程度とした政府目標に対し、現在の各省平均は2.6%にとどまっている。安倍内閣も首相含め19人いる大臣のうち女性は森氏と稲田朋美行政改革担当相の2人。副大臣も25人中4人だ。
村木氏は9月に米ワシントンのブルッキングス研究所で「アベノミクスからウーマノミクスへ:働く女性と日本の経済復興」をテーマに講演し、「女性の活躍を推進することが『成長戦略』の鍵となっている」と指摘。そのうえで、「女性ももっと自信を持って前に出るべきであり、チャンスから逃げないでほしい」と訴えた。
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