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2013年10月22日
若杉冽著『原発ホワイトアウト』(講談社)
を全国民が読むべきだ。
現役キャリア官僚のリアル告発ノベルである。
小説のスタイルを取っているが、重要なコンテンツは、ほぼノンフィクションである。
私たちの目の前で繰り広げられている原発再稼働に向けての茶番。
内部を知り尽くした現役官僚でなければ表現できないディテールがふんだんに盛り込まれている。
「特定秘密保護法案」が国会に上程され、与党多数の状況下で成立させられる。
「国民の知る権利の保障に資する報道または取材の自由に十分配慮する」
ことが明記され、また、報道関係者の取材行為について、
「専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反または不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とする」
との規定が加えられた。
これをもって、「知る権利」を守ったと説明されるが、とんでもない話だ。
「配慮」に強い意味はない。
「法令違反」は客観基準だが、「不当な方法」は主観的な判断である。
つまり、知る権利を保障する条文になっていないのだ。
「配慮する」ことは「尊重する」ことと違う。
「尊重」は結果を縛るものだが、「配慮」は結果を縛るものではない。
「不当な方法」には明確な定義がない。
報道を規制するために、「不当な方法」のエリアを自由自在に変えることができてしまう。
原発の話に戻る。
原発は電源を失うとメルトダウンする。
原子炉がメルトダウンすると、五重の防護壁は何の意味も持たない。
核燃料の熱が原子炉を溶かしてしまうからだ。
著者は語る。
日本の原発には、国民に知らされていない致命的な欠陥がある。
原発の電源を支える送電線が破壊されれば、原発が電源を失うリスクは、多分に存在するのである。
巻頭に記される言葉。
「悲劇は繰り返す、一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」(カール・マルクス)
福島の悲劇がいまなお深刻に持続するなかで、原発を再稼働させようというのは、狂気の沙汰である。
しかし、現実は確実にこの方向に進んでいる。
そのストーリーのディテールのほぼすべてが鮮烈に記述されている。
著書のなかで紹介される内部告発者は、国家公務員法違反およびその教唆で逮捕、起訴されてしまう。
しかし、本書の著者は、本書を通じて内部告発している。
いずれ実名で登場してくるだろう。
そのときは、霞が関を離れるときになるだろう。
霞が関から永田町に自発的な転勤を行う可能性があると思う。
新潟県の泉田知事が危うい。
東電の柏崎・刈羽原発を再稼働するには、泉田知事を処理しなければならない。
このプロジェクトが着々と進められている。
国民には原発を再稼働しないと電力料金が大幅に上がるとの刷り込みが行われている。
この刷り込みを担当するのがテレビのワイドショーのコメンテーターである。
今日のコメンテーターの意見が、明日の私の意見になる。
コメンテーターは、局が用意した台本にあるセリフを語るだけだ。
落選議員の収入確保の世話。
選挙後の政治家発言内容のレクチャー。
検察への指揮権発動。
市民デモを潰す公安警察の陰湿な手口。
再稼働の工程表。
これらのすべてがリアルに詳細に示される。
迫真のリアルドキュメントノベルだ。
原発再稼働に使われるキャッチコピーはすでに出来上がっている。
「世界最高水準の規制基準に適合した安全なものは動かす」
である。
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