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http://mainichi.jp/opinion/news/20131021k0000m070104000c.html
毎日新聞 2013年10月21日 02時30分
安全保障に関わる国家機密の情報漏えいに対する罰則を最長で懲役10年にまで強化する特定秘密保護法案について、政府・与党が最終合意した。今週中にも閣議決定し、今国会に提出する。
修正された最終案では、「国民の知る権利の保障に資する報道・取材の自由」への配慮をうたう。公明党の主張を受け入れたものだ。
だが、広く定義された特定秘密を行政機関の裁量で指定でき、指定が適切かどうかをチェックできないまま、半永久的に国民の目にさらされない恐れが依然残る。
◇国会の監視届かぬ懸念
特定秘密に接触する国会議員へ罰則の網も広くかけている。国会による政府への監視が利かない懸念があり、国会を国権の最高機関とする憲法の規定に照らしても疑問だ。
「知る権利」が条文上書かれていても、実質的に国民の「知る権利」が保障される内容にはなっていない。こうした骨格が変わらない以上、法案には反対だ。
国民の「知る権利」や「報道の自由」に配慮することは、憲法上当然のことだ。厳しい罰則のため、取材に対する萎縮効果が生まれる可能性は極めて強い。
日本と米国の軍事的協力関係が深まり、機密の共有化が進む。サイバー空間での情報戦が国際的に激しくなる中、情報を安全に管理することが信頼関係を保つためには欠かせない。それは責任ある国家の姿勢として当然のことだ。
だが、市民活動を通じ、情報を取得しようとする側も処罰の対象だ。公務員だけでなく、広く国民が刑事罰に問われかねない立法によって担保されるべきかどうかは別問題だ。
特定秘密の対象となる分野は、防衛はじめ外交、スパイ活動、テロ活動と4分野にわたり、別表で規定された項目は極めて広義だ。定義の仕方があいまいなものも含まれる。
防衛秘密については、米同時多発テロ事件後の2001年10月、自衛隊法が改正され、法的な手当てが既にされている。防衛省の職員などが指定された防衛秘密を漏らせば、5年以下の懲役が科せられる。
特定秘密保護法案が成立すれば、外務省が所有する外交文書、あるいは警察情報などが新たに次々と指定される。国民には何が特定秘密か分からない。5年ごとに更新可能だ。30年目に内閣の承認があればさらに延長でき、歯止めにならない。
政府・与党修正で、特定秘密の指定や解除に当たっての統一基準を定めることと、その際に有識者の意見を聞くことを義務づけた。
だが、あくまで統一基準作りに関与するだけで個別の指定の適否が判断できるわけではない。行政機関、特に官僚の判断で都合よく拡大解釈できる余地が残るのだ。
一方、解除後の文書の扱いや保存について、法案の条文では触れられていない。そもそも行政機関で集めた情報は国民の公共財だ。短期的には伏せられても、将来的に国民の「知る権利」に応えて公開すべきものだ。
だが、日本の政府や官僚機構が歴史的に情報公開に後ろ向きだったのはまぎれもない事実だ。
象徴的なのが、沖縄返還に伴う密約問題である。沖縄が1972年に米国から返還されるのに伴って日本政府の金銭負担があった。米国で公開された外交文書によって明らかになった後も、日本政府は文書の存在を認めていない。
◇公開の仕組みこそ必要
防衛省は、防衛秘密の指定期間が過ぎた文書全てを保存せず大量に廃棄している。こうした隠蔽(いんぺい)体質がある以上、行政機関の判断をそのまま信じることは到底できない。
情報公開法や公文書管理法などを見直し、公文書を適切に保管し、国民が情報を入手しやすいシステムをしっかり構築することこそ、まず取り組むべきことだ。
民主党は、政府による公文書の不開示決定の是非を司法がチェックする仕組みを盛り込んだ情報公開法改正案を今国会に提出する方針とされる。しっかり議論してもらいたい。 民主党政権時代の11年、政府の有識者会議は、機密性の高い情報を取り扱う政府機関の情報保全システムについて報告書をまとめた。
その中では、ITの進展に伴う情報漏えい対策について、物理的持ち出しや外部通信など具体的ケースごとにとるべき措置を提言した。外務、防衛両省や警察庁など関係省庁は当時、着実な実行を申し合わせた。高度な機密情報を持つ行政機関が内部統制をまず徹底させることが重要だ。それが機能しているかを常に検証し、改善を重ねていくことが最優先されるべきだ。
議会制民主主義の下で、国民の代表者としての国会議員の役割が制約され得る点について重ねて指摘しておきたい。
国会議員が特定秘密を知った場合、その内容に問題があると考えても、同僚議員や政党、あるいは学者ら専門家に相談や照会することができない可能性が強い。結果として議論は封じられ、議員の役目を果たせない。議員はその深刻さをしっかり認識し、法案の審議に当たってもらいたい。
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