08. 2013年10月18日 08:33:19
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一般論であるが、体制に批判的立場だと、急進的な、あるいは極端な言動を取る傾向がある。元レバノン全権大使で、イラク戦争に日本が賛成したことに抗議して大使を辞任した天木直人が、ブログで「デフォルト騒ぎの米国に文句の一つも言えなかった日本 http://www.amakiblog.com/archives/2013/10/17/ 」を書いている。天木は大使辞任後、一貫して日本の政治、特に外交に関して鋭い指摘をしており、勉強になることが多々あるのだが、時々言い過ぎだろうということもある。 天木は、「オバマケアか何か知らないが、自らの内政上の駆け引きで世界経済をここまで混乱させた米国の無責任さを、このまま黙って見過ごしていいはずはない。」と憤慨しているのだが、アメリカの経済はある程度混乱したが、世界経済が混乱したとは寡聞にて知らない。もちろん、万が一デフォルトになると世界経済は混乱するとの警告はあったが、事実として混乱したかと聞かれたら、誰しも、何の躊躇もなく、No.と答えるだろう。株式市場や、為替への影響はあっただろうが、デフォルト回避のニュースを受けて、それは、元に戻るだろう。 天木は「世界経済をここまで混乱させた」という前提に立って、中国政府は「『中国は巨額の米国債を保有しており重大な影響がある。米国は歴史の教訓を十分に理解すべきだ』など言って米国にデフォルト回避の責任があると言った」が、日本政府は「日本は中国につぐ世界で2番目に米国債を保有している国だ。米国債保有だけでなく、あらゆる金融・財政面において米国財政を支援してきたのは圧倒的に日本だ。その日本は結局米国に文句のひとつも言う事なくデフォルト騒動は終ってしまう。」と、日本政府の対応に対して強く批判しているのである。 日本は「あらゆる金融・財政面において米国財政を支援してきた」というのは事実だ。だからと言って、世界経済が混乱もしていないのに「文句」を言えとは言い過ぎだろう。大体、自ら言っているように、これはデフォルト「騒動」で、もし、デフォルトになったら大変だという「騒動」だったのだ。少なくとも日本では、微細な投機家以外には実害はなかったのである。 そして、日本が何も言わなかったと天木は問題にしているが、この「騒動」の最中に開催された日本も参加したG20では、アメリカを名指しして「政府債務の上限引き上げ問題」の早期解決を求める異例の声明を採択したのである。大体、この「騒動」は、本来はオバマケアというアメリカの内政の問題である。だから、外国がとやかく言う筋合いではない。ただし、アメリカドルは基軸通貨という特殊性が「騒動」になったということである。 俺は、日本政府としてはG20での異例の声明に関わったことで、対応としては適切だったと思うのである。ましてや、天木が言うような「文句」を言う必要は一切ない。大体、元外交官が、他国に「文句」という言辞を使うのはいかがなものかなと思う。 デフォルト回避のニュースを受けての日本政府の対応を把握していないので何とも言えないが、天木は「米国のデフォルト回避を見て、よかった、デフォルト回避のため妥協した米国の内政に感謝する、などと真っ先にコメントを発するに違いない。」と決めつけている。 はっきり言っておくが、この「騒動」の最大の問題は、デフォルトの可能性を否定できない財務問題を抱えているアメリカのドルが、基軸通貨であっても良いのだろうか。すなわち、戦後の世界体制が、実は脆弱な基盤の上に乗っているという大問題であり、このままアメリカが国債を発行し続け、債務を積み上げていれば、いつかは債務の返済ができないリミットが訪れ、回避のできないアメリカのデフォルトに世界経済が直面するということである。決して、天木の憤慨している「騒動」ではないということだ。 整理するが、 「世界経済をここまで混乱させた」 → そのような事実はない。 「文句」 → 果たして、外交として「文句」を言うことがあり得るのだろうか。 「デフォルト回避のため妥協した米国の内政に感謝する、などと真っ先にコメントを発するに違いない」 →予断による、決め付けである。 天木は元外交官であり、今も日本外交についての著作を発表しており、いわば、オピニオンリーダーである。俺みたいな無責任な人間ではない。これじゃ飲み屋の与太話しだ。だから、事実に基づかず、最初から日本政府に「文句」をつけるのを目的にした、天木の論調は好きになれないだよな。 |