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2013年10月15日
昨年暮れの総選挙で、自民党が公約したTPP(環太平洋経済連携協定)の下記判断基準が6項目掲げられていたことをご記憶の方もいると思う。
@政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。
A自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
B国民皆保険制度を守る。
C食の安全安心の基準を守る。
D国の主権を損なうような I S D条項※は合意しない。
E政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。
正確に言えば、この6項目を覚えている人々は実は少なくて、大方の国民は@の聖域なき関税撤廃だけが印象に残っている。
これは安倍首相を中心とした政府関係者、マスコミ、官僚らによって@だけが不自然に強調され、後の5項目は一貫して今日にいたるまで無視され続けているからである。
政権が自公政権に移ってから、すでに11カ月近く経過しているので、当時の政党公約は重要ではないと思っているなら大間違いである。
なぜかと言えば、政府が故意に無視しているこの5項目こそ、TPP最大の主眼である『非関税障壁』なのである。
関税障壁、非関税障壁と並べれば、両者がいかにも関税に関わる領域のように思ってしまうが、「非関税障壁」という言葉自体が、人類の生存主権を“商品化”する悪質な矮小化、悪質なカテゴライズとなっている。
日本人、または人類の本当の敵が日米構造協議(1989年)以来、構造障壁(Structural Impediments)と称しているものこそ、人間がまっとうに生きる要件のすべてを指している。
つまり、安倍首相をはじめとする売国・壊国勢力が、ワシントン・コンセンサスの指導の下に推し進めている政策全てが、日本人がまともに生きて行くための制度や規制を片っ端から破壊するものであることは間違いない。
人類の害悪である多国籍企業が、TPPで各国に求めるものこそが非関税障壁の撤廃であり、その目的はわれわれの命や健康、生活、安全、文化等に直接かかわる領域に入り込んで、そこから利潤を恒久的に吸い取っていくシステムを構築することにある。
人間が普通に生きるための社会制度や様々な規制が、企業、とくに外国資本の営利活動にとって阻害要因であるから、撤廃しろという恐ろしい話である。
なぜ恐ろしいのかと言えば、われわれを守っている社会制度や規制が多国籍企業の思惑通りに撤廃された場合、生活や福祉に関するセーフティネットが全て外され、企業活動が人間の生存権の上位に君臨するからだ。
問題はあまりにも多岐に及ぶが、例えば自由診療、混合診療の問題一つピックアップしても、TPPの考え方が恐ろしい内実を秘めていることに気づく。
混合診療が解禁されても国民皆保険制度は残るとTPPの推進者たちは言うが、制度そのものが残っても、国民に平等な受診と治療を可能にしている制度の実質的な便益性は崩壊する。
なぜかと言えば、医療機関に弱肉強食の市場原理至上主義が導入された場合、医療機能や医療資本は全てが金の集まるところへ傾斜することになるからだ。
これは冷徹な資本のメカニズムである。
つまり、国民にとって、医療を受けられる機会は直接、金銭の多寡によって大きく左右されることになる。
この状況は国民皆保険制度の形骸化をもたらし、一般の国民は今まで普通に受診できた病気を目の玉が飛び出すような値段でしか受けられなくなる。
そこで、実質自由診療となった日本には、ハゲタカのような米国の民間保険会社が参入してくるが、彼らは高額の保険料を吸い取るばかりで、日本人に受診や入院の保障を満足にするとは思えない。
これはアメリカの医療状況を見ればよく分かる。
映画で見るなら、マイケル・ムーア監督の『シッコ』やデンゼル・ワシントンが主演した『ジョンQ -最後の決断』などが一目瞭然である。
アメリカは2010年に民主党オバマ大統領が公約した医療保険改革法が成立しているが、下院の共和党がこれに反対した。
今、共和党は保険改革法の実施を一年延ばせなどと言って議会を紛糾させ、政府機能がかなりシャットダウンしているようだ。
愛国者法に縛られ、日本では助かる病気でも、金銭的に医者にかかれなくて死ぬ運命を背負わされているアメリカの一般市民は可哀そうである。
だが、この悲惨なアメリカの医療状況は、このまま行けば日本にも実現されてしまうのだ。
盲腸(虫垂炎)の手術で270万円、長期入院で天文学的な出費になるという悪夢が到来する。
山本太郎氏の演説を借用するが、今、米国では高額医療費のせいで破産する人口が年間90万人であり、そのうちの75%は民間保険の加入者だそうだ。
この意味は、病気の厳しい区分けがあり、適用されない診療が多くあるからだ。
これを現今日本のように全角的にカバーするには、可能性のある病気や怪我を想定して、複数の保険に加入しておくしかない。
そんなことは富裕者層にしかできないのだ。
したがって、混合診療の解禁は日本人を死に導くパスポートとなる。
金銭至上主義という言い方が一時よく使われたが、人間の生存可能性が金銭の多寡で決まる世界がすぐに来る。
混合診療はTPP地獄のほんの一端だが、秘密裏に交渉が進められているTPPは、何が起きているのか全く分からない状況で、“年内妥結”だけが異様に浮かび上がっていることは常軌を逸している。
TPPが秘密裏にことを進める最大の理由は、円滑な交渉などとは一切関係なく、狙う対象が人間の生存領域に関わるからだ。それが「非関税領域」なのである。
小泉政権以来、外国資本の参入は経済を賦活させ、そのためには旧弊な制度や規制を緩和することが絶対的な“善”であるかのような刷り込みが毎日行われている。
しかし、制度や規制はもともと国民や中小零細企業を強大な存在から守るために作られているのだ。
自分は、その安全弁を壊しまくることが、なぜ良いことなのか?という基本的な疑問を持っている。
規制緩和、規制撤廃ほど危険なものはない。
有識者たちがしたり顔で言っている規制改革は外国資本の便益だけのためであるから“改革”に騙されてはならない。
国家戦略特区の動きは、空間的に限定されたものではなく、バーチャル特区は、新自由主義構想の具現化へ急速に向かう敷衍性を示している。
これを危険視する識者によれば、TPPのパイロット版として急激に実現化に向かっているこの構想は、一括実現法案を通じて一気に全国展開される可能性が高いという。
しかも後戻り不可のラチェットフレームが嵌められるという。
危険なTPPは、国家戦略特区という名目ですでに現在急激に進められている。
これが国家戦略解体でなくて何と呼べばいいのだろうか。
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